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海で楽しむ遊びと仕事

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第四章 楽しい遊び


 浜辺。

「海の植生を調査しつつ素材採取をするんじゃなかったのか。完全に遊ぶ気満々だな」
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は楽しく砂浜にビーチパラソルを立てて場所取りをする水着姿のルカルカ・ルー(るかるか・るー)に呆れていた。本来は素材採取に来たのだが。
「否定はしない……あっ、エリーだ! おーい」
 ルカルカはダリルの真似をして偉ぶるが目の端に歩くエリザベートを発見するなり、手をぶんぶん振って呼びかけるのだった。
「……だんだん手に負えなくなるな、このタンポポ頭は」
 ダリルは小さくルカルカに溜息をついていた。
「二人とも来てたですか」
 ルカルカに呼ばれてエリザベートがやって来た。
「来てた来てた、だって一緒に遊びたいから。何する? かき氷食べる? 泳ぐ? やりたい事があったら何でも付き合うよ! ほら、飴もあるよ♪」
 ルカルカはエリザベートが息抜き出るようにと必死。遊び盛りなのに幼いながらも校長として頑張るエリザベートが妹のように可愛くて助けたいと思っているのだ。
「ありがとうですぅ。たっぷり遊ぶですよ〜」
 飴を貰ったエリザベートは口に放り込み、ころころと転がし味を楽しむ。
「じゃ、ビーチバレーをしよう!」
「はいですぅ」
 エリザベートはルカルカに誘われ、砂浜で楽しくビーチバレーを楽しんだ。
「呑気なものだな」
 ダリルはパラソルの下で保護者よろしく二人の様子を見学している。
 ビーチバレーが終わったと思ったら砂浜の貝殻を耳に当てたり泳いだりと目一杯楽しんでいる。ダリルは遊ぶつもりはないのかすっかり荷物番である。

 海や浜を楽しんだ後、
「よーし、次は水中探検をしよう! そのための道具も持って来てるんだから……どうかした?」
 ルカルカは次の遊び場所はもう決定済み。エリザベートがちらりとパラソルの下にいるダリルに視線を向けている事に気付いた。
「つまんないですぅ。二人だけで遊ぶの飽きたですぅ」
 エリザベートは可愛らしく唇と尖らせ不満を口にする。
「ダリル、ずっと荷物番ばかりだから誘ってみようか」
 ルカルカは、エリザベートの子供らしい表情にクスリと笑みをこぼした後、一緒にダリルの所へ。

「せっかく海に来たんだからダリルも遊ぼうよ!」
「俺も遊べと? それは遠慮したいが……」
 エリザベートを連れたルカルカの全力の誘いにダリルは嫌そうに遠慮を示す。
 すると
「……つまんないですぅ」
 断られたエリザベートは拗ねたように海の向かって歩いて行く。
「ほら、ダリル。行くよー」
 ルカルカは激しくダリルを手招きをしてからエリザベートを追いかけた。
「……たく、仕方が無いな」
 ダリルは保護者として二人について行った。こういう展開になるだろうと予測していたダリルは下に水着を着て準備を整えていた。

 水中冒険の準備中。
「よし、これで水中でも呼吸が出来るよ! 目は開けられる?」
 ルカルカは二人分持参したウォーターブリージングリングをエリザベートの指にはめてやりながらお姉ちゃんのように世話を焼く。
「大丈夫ですぅ。それより早く行くですよ〜」
 はめて貰い終わるとエリザベートはおよぐタイヤキに乗り準備万端。
「うん。いざ、水中探検へゴー!」
「ゴーですぅ」
 喜び勇んで仲良く並んで水中探検に出発するルカルカとエリザベート。
「……警戒でもしておくか。魚竜がいる海だからな」
 ウォーターブリージングリングをはめてからダリルはゆっくりと二人の後ろをついて行った。

 海中。

「うわぁ、綺麗だね。ほら、お魚さんとお散歩だよ♪」
「全部青色ですぅ」
 青い世界の中、ルカルカはおよぐタイヤキで移動するエリザベートの横に並び魚に囲まれながら泳いだ。ルカルカとエリザベートは周囲の警戒をダリルに任せ、何も気にせず海中を楽しんだ。

 たっぷりと楽しんだ後、ルカルカ達は陸に上がった。
 それと同時に
「あっ、ほらもう少ししたらお城が出来るよ」
「本当ですぅ。かき氷を選びに行くですよ〜」
 ルカルカとエリザベートはもう少しで城が出来上がるつつある事を確認してからかき氷を買うべく【避暑の家 蒼水】に行った。
 【避暑の家 蒼水】から戻ったルカルカ達とエリザベートの手にはたくさんのかき氷があった。
「いちご味にバニラアイスがのっかってるですよ〜」
「ルカはかき氷のシロクマ盛り! 後はお城を造ってくれた人へのお礼のかき氷」
 エリザベートとルカルカは楽しそうに自分が選んだかき氷について楽しく喋りながら砂の城に向かった。ただし手にあるのは城作製者に渡すかき氷である。
 自分達が選んだかき氷は
「……双子の方も終わりに向かってるな」
 ダリルが持っていた。ついでにゴーレムに最期が近い事も確認していた。

 砂の城の現場。

「何とか完成ね」
「少しサイズは小さいけど問題は無さそうね」
「イイ感じに出来たわね」
 詩穂とセレアナとセレンフィリティは出来上がった砂の城に満足していた。
 作製者の人数でほどよいサイズに変更されたものの外部や内部に細かな装飾が刻まれ、屋上から海を見渡せるようにもなっている。
 作製者達が感慨に耽っていた時、
「みんなお疲れー! 冷たくて美味しいかき氷を持って来たよ!」
 ルカルカの明るい労いの声が降りかかる。
「うわぁ、美味しそう! ありがとう!」
「グッドタイミングね」
 詩穂とセレンフィリティは適当なかき氷を選び喜んで受け取った。
「少し手は加えてはあるけど設計図通りに作ったわ。どうかしら?」
 セレアナは最後に残った物を選んだ後、エリザベートに出来具合を訊ねた。
「素敵ですぅ。お礼を言うですよ〜」
 エリザベートは城を見上げながら満足そうな声を上げた。
 早速、最上階である城の屋上でかき氷を食す事に。
 ダリルはかき氷を渡し終わるなり、説教を喰らっている双子の様子を見に行った。

「うわぁ、海が見渡せるよ!」
 詩穂は絶景に感動し、かき氷を頬張った。
「造ったかいはあったわね」
 セレアナは無事に完成した事に胸を撫で下ろした。
「本当に疲れたわ」
 セレンフィリティは時々溜息を吐きながらかき氷を食べた。
「すごいねぇ、かき氷がおいしく感じるよ」
「ですぅ」
 ルカルカとエリザベートは並んで景色を楽しみながらかき氷を食べていた。
 この後、五人は城を出てバーベキューに参加し、お腹を満たした。
 食べ終わるとエリザベートは城を駆け回ったり海を楽しんだりと忙しく動き回り、最後は校長職で昨日も忙しかった事もあってかウトウトし始める始末。
 そこで
「エリザベート、学校まで俺達が送ろう」
 そう言ってダリルは屈み、エリザベートに背中を向けた。
「ん〜、はいですぅ〜」
 エリザベートは目をこすりながらぼやっと答えながらもそもそとダリルの背中に乗っかるなり眠ってしまった。
「気持ち良さそうに眠ってるよ」
 ルカルカはエリザベートの寝顔にほっこり和んでいた。
 そして、高速飛空艇「ホーク」にルカルカ達は乗り込み、無事にエリザベートをイルミンスール魔法学校まで送り届けた。