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夏の雅に薔薇を添えて

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夏の雅に薔薇を添えて

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第7章 空に花の咲く頃に2





九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)長曽禰広明(ながそね・ひろあき)


ニルヴァーナとシャンバラに所属する2人が、薔薇の学舎の雅にて。


「なんとか花火に間に合って良かったです」
「大丈夫だったのか? 教員の仕事、色々と忙しいんだろ?」
「忙しくないとは言えないですけど…私からお誘いしたんですし」
「オレのことなんて気にしなくていいんだぞ? オレはお前が……」


そこに打ちあがる花火に、しばし見とれる。


「こいつはすげぇーな」
「はい」


そっと時が流れ、花火が終わる。


「あの、広明さん!」
「なんだ?」
「こ、これを……」
「革のパスケースか。 鍵が付いてんな、何のカギだ?」
「今月は忙しく、広明さんに中々会えませんでしたが…お誕生日をお祝いしたいと思いまして。
 鍵はその、鍵はですね………私の家の鍵なんです。 仲間達と住んでいるので、いつ行っても騒がしい家なんですが
 どうぞご飯でも食べに来てくださいね。 私はいつでも大歓迎です」
「そうか……ありがとうな」


九条からのプレゼントを優しく見つめる広明。


「その浴衣、似合ってるな」
「へっ? あっ、そ、そうですか! ……そう言ってもらえると嬉しいです。 広明さんも素敵ですよ、浴衣姿」
「じゃあよ、コイツは今日呼んでくれたこと、その姿を見せてくれたこと、プレゼントをくれたこと……全部のお礼だ」





               ◇ ◇ ◇





「広明さん、たくさん人がいますね」
「そうだなー」
「迷いますね、いやーどうしようかなーはぐれちゃいかもですねー」
「だなー」
「……こういう場合、手を繋ぐのが良いと思います」
「あと少し言うのが遅かったら、全部俺のセリフになってたよ」
「ふふ、これからもよろしくお願いしますね、広明さん」











九条はそっと唇に手を当てる。
まだそこには、温かみが残っているような気がして……
思わずほころび赤く染まる顔を、九条にはどうにもすることができなかった。