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リアクション
「お誘いありがとう。平行世界の自分たちが見られるなんて面白そうだね」
双子に誘いを受けた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が挨拶をしてから席に着き、双子と一緒に映像を楽しんだ。
■■■
ヴァイシャリーの町。
「あれ、二人共どうしたの?」
「何か用事?」
放課後を満喫するため町を歩いていた高原 瀬蓮(たかはら・せれん)と美羽は見知った双子がこちらに来るのを知り、足を止めた。
「前、二人に迷惑かけちゃったお詫び」
「そういうこと。だから、お手製のオルゴールをどうぞ」
ロズフェルの双子の姉妹、ヒスナとキスナはそれぞれ何かを取り出した。
「……オルゴール」
「また危ないものでも入っていたりするんじゃないの?」
双子の手にある小さなオルゴールを不安そうに見つめる美羽と問いただす瀬蓮。
美羽と瀬蓮の性格や能力が逆転して温和な美羽と元気な瀬蓮となっていた。
「入って無いよ。ただ素敵な音楽を入れてるだけ。少し開けてみてよ」
「そうそう、二つとも音色が少し違うだけだから試してみてよ」
双子は警戒を解こうと必死。
あまりにも必死な様子に可哀想になった瀬蓮は
「それじゃ、瀬蓮が先に開けてみるから。美羽ちゃんはその後で開けてね」
自分と向かい合わせのキスナのオルゴールをチョイスし、親友には安全のため警告も忘れない。
「……ありがとう、瀬蓮ちゃん」
美羽は瀬蓮の言葉通りオルゴールを持っているだけにとどめた。
「…………何かすごく……眠く……なって」
オルゴールを開けた途端、優しい魔法系の音色が流れ瀬蓮は眠りに落ちてしまった。
「瀬蓮ちゃん!!」
美羽は慌てて眠り倒れる瀬蓮を支えた。
それと同時に
「それは音を聞いたらどこでも眠っちゃう音楽だよ」
「効果は開けた人にだけ効果がある優れもの」
双子の説明が入った。
ひとまず付近の公園のベンチに寝かせる事に。
「……すぐに起きる?」
美羽は隣で眠り込んでいる瀬蓮を心配の顔で見つめる。
「私が作った物も開けてみてよ。何も危なくないから。ね?」
「すぐに起きるから心配無いよ」
ヒスナはオルゴールを開けるように促し、キスナは美羽を安心させようとする。
「……う、うん」
美羽は仕方無く、オルゴールを開けた。
すると
「とても元気になる音楽だね」
様々な楽器の軽快なテンポの魔法系音楽に美羽は思わず、軽くハミングする。
「これでお詫びは完了だね」
「だね」
任務終了に満足げな双子。
これで終わるかと思いきや
「……あれ、何かおかしいよ?」
美羽が眉を寄せ、小首を傾げた。軽快なテンポが崩れ、大嵐のような激しい音に変わっていた。
「あちゃ〜」
「わたしが止めたのにあれもこれも音の種類を入れるから箱が耐えられなくなったんだよ」
案の定、ヒスナのやり過ぎで起きた事らしい。止めたと言うがキスナは姉の主張に悪乗りして厳しく止めなかったのは言うまでもない。
「……これどうなるの?」
美羽が双子に聞いている間も箱がカタカタとし始め、音色はどんどん乱れていく。
突然、眠らされていた瀬蓮の目がカッと開くなり
「美羽ちゃん、危ない!」
危機を察知し、短い制服のスカートを翻し、オルゴールを思い切り宙に蹴り飛ばした。
「瀬蓮ちゃん?」
突然の出来事に呆然とする美羽。
蹴り上げられた箱は宙で妙な音を出しながら爆発し、跡形もなく消えた。
「……」
オルゴールの最後を見届けた美羽は言葉を失ったまま。
「大丈夫? 美羽ちゃん」
「……大丈夫。ありがとう」
無事を確認しようと顔を覗き込む瀬蓮に美羽は我に返り笑顔で答えた。
美羽の無事確認後、
「それより、二人共、こんな危ないもの人に渡したらダメでしょ!」
怒りの顔で瀬蓮は双子の前に仁王立ち。
「……調節すればさっきのも問題無いよ」
「綺麗だったし」
双子はごにょごにょと通じる訳がない弁解をする。
「そういう問題じゃないの。美羽ちゃんが怪我する所だったんだよ?」
瀬蓮はきっと目を三角にして言うべき事を言っていない二人に迫る。
「ごめんね」
双子はぺこりと美羽に謝った。
「いいよ。少し怖かったけど楽しかったから」
温和な美羽はにこにこと許してしまう。
「もう、美羽ちゃんは優しいだから」
優しい親友に気が削がれた瀬蓮は溜息をつき、美羽の隣に座った。
さすがにこのままでは駄目だと思ったのか
「それじゃ、何か御馳走してあげる」
「お詫びのお詫びで」
双子は新たなお詫びを申し出た。
新たなお詫びの内容を聞いた途端、
「それじゃ、ケーキヴァイキングにゴー! ね?」
瀬蓮は片手を元気に上げた後、美羽に声をかけてから駆けだした。
「……う、うん」
美羽は慌てて元気な瀬蓮の後ろを追った。
さらにその後ろを双子が続いた。
■■■
鑑賞後。
「……私と瀬蓮ちゃんの性格が入れ替わったらあんな感じなんだ。何か新鮮」
美羽は大満足の様子だった。
それとは反対に
「あの展開ってここ最近馴染みがあるんだけど」
「あの後、絶対に財布、空になったな」
双子は不満だらけ。ここ最近、かき氷にアイスと奢らされてばっかりなのだ。
「そうかも。だってあっちの私も瀬蓮ちゃんも甘い物好きそうだったから」
美羽はにこにこと双子がめげるような事を口にする。
「うわぁ、何か可哀想になってくる」
「こっちもずっと包囲されたままだし」
双子は向こうの自分を憐れに思い肩を落としてしまう。着席している席には強力な監視者に包囲されているので余計にがっくり。
「ほらほら、元気出してよ。あんな感じが二人の持ち味でしょ。盛り上げ役って感じで素敵だと思うよ。危ないのは絶対ダメだけど」
美羽は団子を二人に渡しながら明るい声で励ます。注意も忘れずに付け加えて。
「……励まし、どーも」
「……これ、美味しい」
溜息をつきながら美羽に貰った団子を頬張った。
そんな双子を美羽は微笑ましげに眺めていた。
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