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平行世界からの贈り物

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平行世界からの贈り物
平行世界からの贈り物 平行世界からの贈り物

リアクション

 上映会の誘いを受けたリア・レオニス(りあ・れおにす)は会場入りするなり、関係者であるエリザベートや双子にロイヤルガードらしく折り目正しく頭を下げて挨拶をした後、席に着いた。
 着くなり自分の映像が映し出され、
「いや、これは……」
 リアは瞬時に硬直してしまった。何せ衆目に晒すにはあまりにも恥ずかしくて。

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 国家神の力を次代の女王に渡した後、アイシャは闘病生活となるもリアの看病で乗り切り静養の期間を経て元気になった。その期間の間、二人の関係は互い無くしては生きられないほど深くなりついに大切で最高の日を迎える事となった。

 快晴。シャンバラ宮殿、廊下。

「……女王の粋な計らいでここで式を上げる事が出来るなんて……しかも三日続いた雨も特別な今日を祝ってか快晴だ」
 正装したリアは広い廊下を眺めるも視線は扉が閉まった一室に注がれていた。
「……こんな日が来るなんて思わなかった。愛する事が出来れば、この気持ちを知ってくれるだけで十分と思っていた。どんな時でも支える事が出来れば愛を返してくれなくても……」
 リアはこれまでの事を振り返りながら感慨に耽っていた。この時が来るまで様々な事があったのだ。それでもリアのアイシャへの想いは外の晴れ渡る青空の如く曇りがなかった。
 その時、突然閉じていた扉が開き
「リア、お待たせしました。支度に少し手間取ってしまい……」
 派手さはないが上品なウェディングドレスをまとったアイシャが現れた。
「……アイシャ」
 花の精か幻想の住人かと見紛うほどの美しいアイシャの姿にリアは言葉が詰まり、呼吸する事さえ忘れてただただアイシャを見つめるばかり。
 リアの反応が無い事に不安に思ったアイシャは
「……リア、やはり変でしょうか。着物の方が良かったですか?」
 少しだけ顔色を沈め、恐る恐るリアに訊ねた。
「いや、違うんだ。あまりにもアイシャが綺麗で、嬉しくて……不安にさせてごめんよ」
 アイシャの不安そうな声音に我に返ったリアは急いで口を開いた。
「……ありがとうございます。リアも素敵です」
 リアの言葉にアイシャは顔を赤らめた。
「ありがとう。それじゃ、行こうか。俺達で作る新しい未来のために」
 リアは手を差し出し
「はい」
 アイシャは満面の笑みでその手を握り、二人は会場に向かった。
 本日はリアとアイシャの結婚式なのだ。

 会場。

 多くの拍手と祝いの言葉に包まれながら幸せな花婿と花嫁は入場した。
 恒例の指輪交換を滞りなく済ませ、それぞれの薬指に指輪が輝くと残るは誓いの口づけ。
「……アイシャ、今までもこれからもずっと命が尽きるまで愛するよ」
「私もです。あなたの愛に応える事が出来てとても幸せです」
 リアとアイシャは互いに言葉で愛を交わした後、唇を重ねた。
 この日からリアとアイシャの新しい関係が始まった。

 健やかなる時も病める時も富める時も貧しい時も変わらず互いを愛する日々が始まる。

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 鑑賞後。
「……別の世界だけど元気なアイシャを見る事が出来て本当に良かった。でもあれがこちらの世界の未来にもなったらいいけど」
 リアはアイシャの元気な姿に胸を撫で下ろすもすぐに祝福された結婚式の様子を浮かべ、本音を洩らした。

「……平行世界の映像……どんな映像なのか楽しみだなぁ」
 誘いを受けたミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は現実とのギャップを期待しながら興味津々で流れる映像に目を向けた。

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 百合園女学院、廊下。

「……次の授業は」
 ミーナは次の授業のため教室移動をしていた。
 その時、
「ミーナ殿!!」
 背後から知った声がミーナの歩みを止めた。
「……この声は」
 ミーナが振り返るよりも先に背中に重みを感じた。
「せ、先輩!?」
 真田 佐保(さなだ・さほ)がミーナに抱き付いて来たのだ。突然の出来事に驚くミーナ。
「先輩! どうしてここにいるんですか? 今日は仕事で遠出する日じゃないですか!」
 佐保の予定を知るミーナはひたすら驚くばかり。
「だから会いに来たでござるよ。遠いし長期の仕事で当分大好きなミーナ殿に会えなくなるから会いに来たでござる」
 佐保はミーナをハグしたまま悲しそうな声で来た理由を語るのだった。実は現実と違うのはここだ。現実ではミーナが佐保を慕いちょこちょこと後ろを付いて行っているのだ。
「……せ、先輩、大好きなミーナに会いに来たって……みんなの前で……」
 ミーナは佐保の言葉に顔を真っ赤にして言葉を詰まらせてしまう。ここは廊下で今も行き交う生徒が何人もいる。ただし、いつもの光景であるため他の生徒達は気にする様子が無かったり。
「本当に寂しいでござるよ」
 佐保は大きな溜息を何度も吐き出す。
「……それより先輩、こんな所で油を売っていて大丈夫なんですか? 準備は出来ているんですか? 会いに来てくれるのは嬉しいですけど仕事は大切ですよ?」
 ミーナはいつまでも真っ赤にはなってはおらず、がみがみと佐保に問いただし始めた。
「……会いに来たのは迷惑でござったか?」
 佐保はミーナから離れ、肩を落とし、しょんぼりとうつむく。がみがみ言われた事がかなりショックだったようだ。
「会いに来てくれたのは嬉しいですよ。でも仕事は頑張らないといけないです」
 ミーナはがみがみ顔をゆるめ、笑顔で言った。佐保の顔が見られたのは素直に嬉しいから。
「……分かったでござる」
 慕うミーナの言葉に佐保は少しだけ元気になって顔を上げた。
「先輩、頑張って下さいね」
 ミーナは笑顔で佐保の頭を撫でて励ました。佐保をもっと元気にしたかったから。
「元気が出たでござるよ。それじゃ行って来るでござる!」
 頭を撫でて貰い元気満タンになった佐保はあっという間に行ってしまった。
「行ってらっしゃい!」
 ミーナは佐保の姿が見えなくなるまで手を振って見送っていた。

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 鑑賞後。
「佐保先輩はあっちの世界でもかわいいの! そんな先輩がミーナを好きって……好きって……」
 あまりにも嬉しい映像のためミーナは感激で顔を赤くし、ばたりとテーブルに突っ伏してしまった。

「平行世界の私はどんな感じなのかなぁ」
 杜守 柚(ともり・ゆず)は興味津々で流される映像に目を向けた。

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 蒼空学園、体育館。本日、バスケの試合で使用中。

 バスケの試合終了後。
「……またあんなに囲まれてる。海くんも優しくして……彼女は私なのに」
 柚はたくさんの女の子達に囲まれる海を遠巻きに見ていた。恋人の柚は毎回この光景を見る度に嫌な気分になって海に少しだけ素直になれなくなる。

「あぁ、柚来てくれたんだ」
 群がる女の子を優しくあしらった海が嬉しそうに柚の所にやって来た。現実と違い女の子の扱いが上手だ。
「本当は用事があったんだけど、海くん、私が応援しないと勝てないでしょ。だから来たの」
 海に話しかけられて嬉しいのに柚はツンとする。しかし、本心は真っ赤な頬を見れば明白。こちらの柚は現実と違いツンデレ。
「いつもありがとう。すぐに着替えて来るから少し待っててくれ」
 柚の事をよく知る海は気を害する事もなく嬉しそうな顔のまま部室に急いだ。
「……分かった……もう、海くんは」
 素っ気なく海を見送った後、柚は自分のこんな性格を理解してくれる恋人に溜息をつきながらも笑みをこぼしていた。
 この後、柚は部室の前に向かった。

 部室の前。

「……帰りにどこかに寄って一緒に何か食べたりとかしたいなぁ。最近オープンしたカフェとか。でも海くん、明日も試合だし、だめかなぁ」
 海を待ちながら柚は放課後の予定をあれこれ考えるが、海の都合を思い出し少ししょんぼり。本当は寂しがり屋で出来るだけ長く海と同じ時間を過ごしたいのだ。

 しばらくして海が出て来た。
「柚、行こうか」
「あっ、うん」
 海は、待たせた柚に声をかけ一緒に学校を出た。

 下校の道々。
「そう言えば、この辺りに新しいカフェがオープンしたとか」
 海は隣を歩く柚に最近開店した流行のカフェの事を話し始めた。
「……ファンの女の子に聞いたの?」
 柚は興味を持ってはいたが、素直にそれを口に出来ず、意地悪な言葉を発する。
「いや、雑誌で見てさ、どんなものか見てみたいなって。悪いけど付き合ってくれないか」
 といつものさわやかな笑顔。明らかに前から柚が行きたがっている事を知りながらも柚の性格を考慮し、黙っている事は明らか。
「……明日、試合なんだから真っ直ぐ帰った方がいいと思うけど。それに私それほど行きたいとも思ってないし」
 柚は海の事や性格のため素直に自分の気持ちを言えず、プイと顔を逸らす。
「少しぐらいいいだろ、一人じゃ入りづらいし、付き合ってくれないか」
 海は顔を少し歪め、両手を顔の前で合わせて必死にお願い。
「……そこまで言うのなら付き合うけど、少しだけだよ。明日も試合なんだから」
 横目で海の様子を一瞥した柚は仕方無いという感じで海の誘いを受けた。本当は嬉しくて堪らない。それはわずかにゆるんでいる表情からも読み取れる。
 柚の答えを聞くなり
「さすが、柚。そうと決まれば、急ぐか」
 海は柚の手を握って走り始めた。
「ちょっと、海くん!!」
 恋人の手の感触に真っ赤になる柚。突然の事で戸惑うも嬉しくて振り払うことはせずに幸せそうにカフェに向かった。

 ■■■

 鑑賞後。
「私、ツンデレなんだ。海くんも少し違って格好良かったけど、やっぱりこっちの海くんが一番素敵。それより、現実でもあちらに負けないぐらい幸せになれるように頑張らなくちゃ」
 と柚は幸せになると固く決意。こちらでは長く片思いをしてようやく恋人となったので決意は固い。
 上映会終了後、映像配布のサービスを受け、初々しい恋人だけで楽しむために映像のコピーを持ち帰った。