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とある魔法使いと巨大な敵

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とある魔法使いと巨大な敵

リアクション

 2

 美羽とコハクは、巨大アッシュが出現したと目撃証言のあった森に来ていた。
「ここら辺なんだけど……」
 Sインテグラルナイトに乗って巨大アッシュが出て来たと思われる穴を探していた。
「あった!」
 巨大な掘削機で穴を開けました。と言っても誰もが信じそうなぐらいの大穴が地面に開いていた。
 美羽はSインテグラルナイトから降りてぽっかりと空いた大穴を覗きこむ。
 大穴の内部は闇が広がっていて、ライトで照らしても奥までは光が届かないぐらいの深さだと言う事が解っただけだった。
「黒幕はやはりここには居ないか」
 美羽はため息をつくと、後ろを振り返り街の方へと歩いている巨大アッシュを睨んだ。

「エリザベートと接触を図りたかったのだが、余計な事をしてしまった……」
 巨大アッシュの中に居た男性の声は自分が投げた樹に当たって倒れたエリザベートを見て少しだけ焦っていた。
「……しかし、逆に考えればエリザベートを倒せるチャンスが生まれたと言う事ッ!」
 男は、目を血走らせながら人が歩くよりも少し遅い速度でイルミンスールの街へと歩けと巨大アッシュに命令を下した。
「さぁ、下々の者達よ。迫りくる恐怖に脅え逃げまどうがいい……」
 まるで巨大アッシュがロボットのようにイルミンスールの街を破壊していく様子がイメージされるとくくく……と、男は不気味に笑った。
 と、そこへ誰かが巨大アッシュの首ら辺を叩いているような感触に気がつくと男は立ち上がり感触のした外へとすり抜け出る。
「ちょっと、黒幕さん! 私の話だけでも聴いてよ」
 どうやって登ったのかは判らないが、巨大アッシュの肩と首元の窪みを利用して強風を避けながら必死に中に居るであろう人物に向かって振動を与えている美羽の後ろ姿が目に映った。
(……娘。どうやってこれを登った?)
「っ……! だ……誰?」
 突然のテレパシーにびっくりしたのか、美羽は叩くのをやめると辺りを見渡した。
「誰も居ない――」
(目の前に居るのだが、お前の目には映っていないようだな)
 男は冷ややかな目で美羽を見つめる。
「見えないけど、声は聞こえる。……ど、どう言う事よ」
「美羽、黒幕は思念体。つまりは幽霊だよ」
 Sインテグラルに乗って、美羽と男の会話を聞いていたコハクが美羽に答える。
(ほう、そこの何だかわからない乗り物に乗ってる者は私の姿が見えると言うのかね?)
 男は視線を美羽からSインテグラルへと変えて、コハクへと解いた。
「僕だって解らないよ。けど、なんとなくだ」
(なんとなく。か。この姿は便利なようで不便だな)
 ほんの少しだけ悲しそうな声を出した男に向けて美羽は首を振る。
「そんな悲槍は置いといて、黒幕さん! なんでアッシュに目を付けたの? 確かにアッシュは最初、自分が目立つ存在になることを望んでいたけど……今はアッシュ騒動のせいで悪目立ちしていることをちょっと後悔しているようだから、できることなら彼を、また元の存在感が薄いモブキャラに戻してあげてほしいの!」
「美羽……ぶっちゃけたね」
 美羽のあまりの長台詞にコハクが突っ込みを入れた。
(ふふふ………あははは。娘よ言いたい事はそれだけか? そんな奇麗事を言っても言い損だとなぜ気がつかない?)
「私は理由を知りたいの!」
(お前らに理由を言ったとて、私の思いなど少しも伝わりはしない……昔も、今もだ)
「何でよ! もしかしたら私が――」
 美羽が喋っている途中で、男の気配が消えたのを感じ取ると、美羽はその場にうずくまって泣きはじめた。
「美羽、説得しようとしてもあの人があんな調子じゃ説得も無理だよ。一度ロレンツォ達と合流しようよ」
 コハクが美羽を慰めながら、Sインテグラルで回収しようとした時だった。
  巨大アッシュは、肩に美羽が立っていても気にもせずに近くの樹を両手で引き抜くと、振りかぶって街の方へとぶん投げた。
 それと同時に、足元が何かに引っかけたような落下感が巨大アッシュを襲った。
「えっ?」
 肩からずり落ちて地面へと落ちる美羽の身体を助けようとSインテグラルナイトは速度を上げるが、美羽の地面への落下スピードの方が早かった。