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リアクション
仲居として動きつつ情報収集のチャンスを窺っていた北都達は、風呂上がりのエリザベートが寛ぎコーナーにいるのを発見した。彼女の付き添い二人は土産物色や飲み物調達でいない。
「今日、探求会と会合していると聞いたぞ。魔術師と撮影者は何か関係があるのか? 教えてくれねぇか? もうオレ達は既に関わってる。知らないより知ってた方がきっと対処し易いと思うんだ」
少しでもエリザベートが話しやすければと白銀は狼姿で声をかけた。
「それは……」
エリザベートはどうしたものかと考え込んだ。何せ渋らせる事項も含んでいるので。
「アイスでも食べながら」
アイス片手に北都が登場。
「ありがとうですぅ」
アイスを受け取ったエリザベートは嬉しそうに食べ始めた。
そして、
「美味しいですぅ」
エリザベートはアイスに和む。
「それであの撮影者は一体何者なんだ? 平行世界の魔術師か。平行世界ならこちらの魔術師と考え方が違っててもおかしくはないよな」
白銀はエリザベートに自分の推測をぶつけた。
「半分当たりですぅ……あの二人は同じなんですよ〜」
北都の思惑にはまったエリザベートはゆっくりと話し始めた。魔術師と撮影者の正体について。
「元々一人で人工生命体、ホムクルンスで別の平行世界の住人で特殊な平行世界に浸食され、名付けられる前に自分の世界を脱出した。その時に大量の魔力と人格の一部が離れてそれがあの魔術師になったと」
北都は聞き出した事柄を確認するように繰り返した。行動が証拠隠滅と誇示に分かれているのも説明出来た。
「そうですぅ。生まれてすぐで調整がされず定着してなくて不具合が起きたですよ〜」
エリザベートはさらに補足する。
「んで、こっちの世界に来たのか。同一人物ならオレが感じた事は正しかったんだな。なら、どうして魔術師の奴は事件を起こしたんだ?」
白銀はさらに訊ねた。白銀は魔術師に直に接触した事から上映会の際、二人が似ていると感じていたのだ。
「それは……」
エリザベートは事件を起こす理由を話した。
「大量の魔力と悪意だけの存在である魔術師が撮影者を呼ぶために起こしていたんだね。それでも多くの人を巻き込むのは許されないよ。いくら元に戻りたいとはいえ」
と北都。身の上については同情出来るかもしれないが、所業を許すほどではない。
「だな。でも効果はあったんだろ。撮影者が動いたという事は」
白銀は先を促す。
「その通りですぅ。たくさんある平行世界を探し歩いていた撮影者が気付いたですよ〜。だから同化現象を使うですぅ」
エリザベートはアイスを食べながら白銀に答えた。
「その事も詳しく聞きたいけど。それよりもホムクルンスなら生み出した人がいるはずだよねぇ。誰なんだい?」
北都は同化現象ではなく生みの親についてツッコミを入れた。なぜなら話して当然のはずがここまで話題に出ず意図的に逸らされていると感じたからだ。
「いますよ。おじいさんですぅ。浸食の時に亡くなったですよ。自分が行った実験に巻き込んで死なせた家族を甦らせようとして、撮影者の姿は亡くなった時の家族の姿ですぅ。撮影道具も生みの親が亡くなった家族と一緒に作ったですよ〜」
エリザベートは生みの親の身の上をさらりと話すも肝心な事は出て来ていない。
「それで生みの親は何者なんだ? 名前とかこちらの世界に存在する誰かの別の姿とか」
北都はわざと避けられていると知りながらも追求はやめない。
「……大ババ様と相談して内緒にしてるですぅ」
エリザベートは困った顔で話さない。
「内緒か。それほどまずい奴なのか? 少しでもいいから教えてくれねぇか?」
何とか口を割らそうと訴えるような目でエリザベートを見つめる白銀。
「……悪い人じゃないですよ〜。ただ知らなくてもいい事ですぅ」
アイスと白銀の訴える目にエリザベートは言葉を選びつつ口を開いた。
「最後の質問だけどそれは僕らにとってという事かな? それとも」
これ以上は聞き出せないと察した北都は最後の探りを入れた。
「それともですよ〜。生みの親の話はここまでですぅ」
エリザベートはそう言うなりアイスの最後の一切れを食べた。
「……手紙には旅団の手記については書いてあったのか? あちらにあるという事は同化で手に入るのか? それとも撮影者に頼むとか」
白銀はもう一つの気掛かりをぶつけた。
「手紙には無かったですよ。二つの案のどちらかはいけると思うですよ」
先程の話題とは打って変わって返事は明快そのものだった。
丁度、その時
「エリザベートよ、部屋に戻るのじゃ」
土産物色をしていたアーデルハイトの呼び声がかかった。隣には飲み物を買い終えたもう一人の付添もいた。
「はいですぅ。もう行くですぅ」
エリザベートは空になった皿を北都に渡してアーデルハイト達の元に駆け、部屋に戻って行った。
残った北都達は。
「……面倒な事になりそうだな、北都」
白銀はウンザリ気味に北都に言った。魔術師と言い手記と言いまさにその通り。
「……生みの親、何となくだけど分かったよ」
得た情報を整理していた北都は思いがけない事を口走った。
「分かったとは?」
「話の様子では口止めの有無は書かれていなかったのをあえて口止めにした感じだね。そして、誰かにとって知らなくてもいい事実を僕らに知らせないのはその人物と近いから」
促す白銀に北都は自分の推測を披露した。それが生徒達に教えなかった理由だろうと。
「つまりはオレ達の知り合いでありエリザベート達の知り合いでもあるという事だな」
白銀は北都の推測を平たくしまとめた。
「そういう事だね。しかし、特殊な平行世界というのが気になるね」
北都は明快にうなずくも嫌な予感を感じるのだった。
この後、北都達は無事に会合で話された内容を知るが自分達が得た製作者についての情報が内緒止まりであった事を知った。情報は会合終了後にこっそり皆に教え広めたという。
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