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正体不明の魔術師と同化現象

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第二章 パラミタ防衛・平行世界のエリザベート達と共闘


 イルミンスールの街。

「……すごい事になってるね」
「あぁ、遺跡に行った奴らが無事に解決してくれるといいが」
 遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)は喋りながら通りを歩いていた。
 その時、曲がり角から
「……すっかり様変わりしているな」
「そうね。解決すれば何もかも本当に戻るのかしら」
 同じように喋りながら歩く男女が現れ、歌菜達の前を横切る。町中ではよくある一場面。
 しかし、
「……羽純くん、さっきのあれ、平行世界の私達じゃ」
「あぁ、間違い無い」
 歌菜と羽純にとっては違っていた。
 歌菜は急いで駆け出し、男女が行った先に向かった。
 何とか男女の背中を捉えるなり
「そこの二人、待って! 平行世界の私達でしょ?」
 声大きく呼び止めた。
「ん……って、もしかして」
 振り向いた美青年は歌菜の顔を見るなり驚き、理解した。
 そこに
「歌菜」
 歌菜を追って羽純が登場。
「あら、二人揃ってという事みたいね」
 美女は現れた青年を見て軽く笑みを浮かべた。
 歌菜が呼び止めたのは平行世界の自分達だったのだ。男前の男性アイドルの歌菜と歌菜を支える美女の羽純という平行世界の自分達。
「二人共、こっちに来てたんだね」
「あぁ、大変な事になっていると聞いて」
 二人の歌菜は出会いを楽しむ。
「だったら、一緒に戦いましょ! 四人で力を合わせれば、きっと上手く行きますっ」
 助けに来たと見た歌菜は共闘に誘った。協力者が自分なら何者よりも頼りになるから。
「まぁ、自分同士だからそれは確かだろうな」
 男歌菜は面白そうに口元を歪め、誘いを受けた。

 その様子を眺めるのは
「……すっかり話が進んでるな」
「そうね」
 歌菜に振り回される事に慣れた二人の羽純だった。
 とにもかくにも四人は魔物狩りに参加した。
 その舞台は奮戦する子供校長がいる場所であった。

「パラミタ全土に影響が及んでいるのか。避難した人が無事であればいいが……全ての場所は守れないな。他の人がいたとしても……とにかく、手当たり次第魔物を斬って少しでも町への負担を減らすか」
 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は一通り、惨憺たる光景を目に映した後、漆黒の翼で空へ飛び立ち、パラミタ内海の方に向かった。

 パラミタ内海。

「……これは酷いな。ここの魔物を撃退すれば陸で戦う皆の負担を減らし街防衛にも繋がるはずだ」
 大小様々の海洋系魔物が暴れ回っていた。陽一はすぐさま攻撃に転じる。
「どうにかして数を」
 巨大光剣ソード・オブ・リコを海に突き込み叩き衝けたりととにかく斬りまくって掃討する。あれこれ考えるよりも剣を振り回し、少しでも数を減らすために。
 海の次は
「……空か。群れを成して厄介だな……ん?」
 空の魔物が群れを成して大量にこちらに向かって来る。しかも魔物はそれだけはなかった。
「……海にもまだいたのか。さっきの攻撃で倒しきれなかったのか湧いて出たのか(一人で両方は骨が折れるな)」
 どうしたものかとしばし頭を悩ます陽一。
 そんな陽一の背後から
「海は俺が行くから空は頼む」
 聞き覚えのある声がした。
「……あぁ、分かった」
 陽一は反射的に返事をしてから振り向き、漆黒の翼から海へ飛び込む声の人物の正体を確認した。
 救援に来たのは
「まさか自分に自分の救援をされるとは」
 平行世界の陽一だった。さすが自分、良いタイミングで現れる。
 陽一はすぐさま、空の魔物を巨大光剣で一掃した。

 一方、海。

「……(さっさと片付けるか)」
 平行世界陽一は水中に関わらず自由に動き巨大な魔物と戦闘を繰り広げていた。ナノ強化装置で水中での活動を可能にしエリート水兵服の水泳技術と荒馬のブーツによる脚の水を蹴る力を強化していたため戦闘での行動力に不安はなかった。
「……(これならどうだ)」
 『覚醒ラヴェイジャー』で攻撃力を高めた剣撃を喰らわせて魔物を討ち果たした。戦闘を終えるなり陸へ。それを確認した陽一は同じく陸へと向かった。

 浜。

「助かったよ。まさか自分に助けられるとは思わなかった」
「役に立ったのなら良かった。しかし、陸を守る皆のために海の魔物を倒しに来たらまさかこちらの自分に会うとは思わなかった」
 二人の陽一は改めて顔合わせをするのだった。
「……外見だけでなく考え方までも一緒か」
 平行世界の自分が海に来た理由を知るなり陽一は思わず笑いをこぼした。まさか外見だけではなく考え方まで一緒だとは。
「あぁ、そうらしい。しかし、同じなのは考え方だけじゃない戦闘の癖も一緒だった」
 陽一の様子から自分と同じ目的である事を悟るだけでなく発見した時の事を思い出して笑いをこぼした。つまり何もかも同じな二人という事らしい。
 こうして少しだけ和んだ後、
「これからどうする?」
 平行世界陽一は真剣な面持ちでこれからの事を訊ね出した。
「次は街に行く。重要拠点のイルミンスールに」
「丁度、俺もそう考えていた」
 陽一はすでに決めていたらしく答えが早く平行世界陽一は同じ考えに口元を歪めた。
 そして、
「それじゃ、行こうか。この異変が終わるまで頼むよ」
「あぁ、根性出して行こう」
 陽一と平行世界陽一はそれぞれの漆黒の翼でイルミンスールの街に向かった。
 イルミンスールの街に着いた陽一達は魔物を斬り伏せながら進み、途中で避難遅れの人を発見すると保護をして安全な場所まで送り届けたりもした。その後、平行世界の子供校長と微笑みの魔女に出会い手助けをするのだった。