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学生たちの休日13+

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    ★    ★    ★

「ここは……。開放されたのですか?」
 しばらくして、コウジン・メレが目を覚ましました。
「お帰り」
 着ぐるみを半分脱いだ姿の散楽の翁が、コウジン・メレに言いました。その姿が、あまりにアンバランスですので、思わずコウジン・メレが吹き出してしまいます。
「いい笑顔だ」
 それを見て、散楽の翁がニッコリと笑いました。
 あっけないほどにコウジン・メレの救出が成功しましたので、お祝いの鍋パーティーの再開です。
 元の姿を取り戻したコウジン・メレは、雪のように白い髪を一つに束ね、白衣に緋袴という巫女服に着替えました。
「これで、安心して銀砂を手に入れることができる」
 大神御嶽たちに、散楽の翁がいいました。
 メイちゃんたちの身体は、鷽の巣にあったイレイザー・スポーンたちの残骸が変質した銀砂を元にしているのです。元はといえば、アストラルミストも同じ成分から開発されています。
 ストゥ伯爵の家令がオベリスクの防衛装置によって倒された後のアストラルミストを吸収して、不完全ながら現し身を現出させられるようになったメイちゃんたちは、その後、イルミンスールの森がアクアマリンによってアストラルミストに満たされたときに実体化を強固な物にしたのでした。
 鷽の巣にある銀砂を材料とすれば、散楽の翁であれば、ケンちゃんの修復も可能とのことでした。
「だが、肝心の鷽の巣が行方不明では。至急探す必要がありますね。それと、魔法石の封印の方ですが、いったん魔法石を光に近い状態にする必要があります。その後、封印を破壊することができるでしょう」
 イレイザー・スポーンが倒されましたので、やっと散楽の翁が口を開きました。鷽の巣のことを知られれば、イレイザー・スポーンは体組成の元となる大量の銀砂を手に入れることになります。通常のイレイザー・スポーンにとって銀砂は何の意味ももちませんが、回廊とナラカを通過して変質を起こしたイレイザー・スポーンにとっては貴重な物です。ヘタに吸収されますと、かつて茨ドームに封印されていたの巨大イコンのシトゥラリと呼ばれたヴィマーナ母艦のようになり、再びイルミンスールへの侵攻を開始するところでした。
「うさ?」
 お鍋の具を運んでいたミニうさティーの一匹が、茂みにヘビの姿を見かけて、驚いて立ち止まりました。源鉄心が真空波で切り落としたイレイザー・スポーンのヘビの頭の一つのようです。けれども、ミニうさティーが仲間を呼び寄せようとしたときには、そのヘビの頭はもうどこにも見あたりませんでした。

    ★    ★    ★

「さあ、今日はバレンタインだから、みんなにチョコを配っちゃうよー」
 一件落着と、小鳥遊美羽がローゼンクライネと共に、義理チョコをくつろいでいる人たちに配っていきました。
「さてと、あれはどうなっているかなあ」
 コハク・ソーロッドは、森の中に仕掛けておいたリンちゃんホイホイの様子を見にいきました。うまくして、イレイザー・スポーンがかからないかと思って仕掛けておいた物です。けれども、もう必要ないでしょうから、片づけに行かなければなりません。うっかり、無関係な人がかかっていると大変です。まさか、またリン・ダージ(りん・だーじ)がかかっているということはないでしょうけれど……。
「あれ、何かかかってる?」
 なんだか、巨大笊がごそごそとしているのを見て、コハク・ソーロッドが慎重に笊を空けました。
「ぷっふぁ! なんでこんなところに、またあの罠があったのよ!」
 口の周りにチョコレートをつけたリン・ダージが、思いっきり文句を言いました。なんだか、一緒にノーン・クリスタリアとエリシア・ボックと御神楽舞花までもが罠にかかってもがいています。
「だから、拾い食いはあれほどいけないと……」
「だって美味しそうだったんだよー」
「ふう、それにしても、なんとか助かったようですね」
 ギャアギャア騒ぎつつも、仕掛けられていたチョコレートは、みんなで美味しくいただいたようです。
「これは、なんと言えばいいか……。まあ、口直しに、私の手作りチョコレートをどうぞ」
 そう言うと、小鳥遊美羽がおわびも兼ねて、みんなにチョコレートを配りました。リン・ダージには、特製の大型チョコです。
「コハクにはこっちね」
 綺麗にラッピングされた小さなつつみを、小鳥遊美羽がコハク・ソーロッドに渡しました。こちらは、もちろん特製の本命チョコです。
「仕方ないわね。今日のところはこれで許してあげるわ」
 さっそくチョコにかじりつきながら、リン・ダージが言いました。
「あれ? リンったら、こんな所で何してるんだ?」
「あっ、リーダー! いい所へ」
 運悪く通りかかったココ・カンパーニュに、リン・ダージが駆け寄っていきました。思わず、なんでこんなところにと、マフラーで繋がった風森巽が額を押さえます。
「まあ、ラブラブですこと。おあついですわ。まるで鍋で煮たいほどに」
 それを見て、エリシア・ボックが冷やかします。
「鍋なら、むこうで鍋パーティーをやっていますよ。よければどうぞ」
 うっかりと、コハク・ソーロッドが鍋パーティーのことを話してしまいます。
「あっ、食べたい。行こう、リーダー」
「いいねえ、よおし食べるぞ!」
 リン・ダージに誘われて、ココ・カンパーニュも走りだします。
「あっ、ココさん、せっかくの二人っきりが、ちょっと待って……ぐえ」
 そのまま、繋がったマフラーで風森巽は引きずられていきました。

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 遅くなりました。バレンタイン前の予定が、遅れてしまって申し訳ありません。
 ちょっと、あちこち身体にがたがきて、今回まったく無理ができませんでした。年ですかねえ。
 お話の方は、ちょっとあっさり目になっていますが、一応基本の分量です。まあ、普段が、いかに文章量を増して書いているのかということになるわけですが。
 とりあえず、ラブラブごちそうさまでしたと言うことで〆たいと思います。