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リアクション
プロローグ
「それじゃ、穂波ちゃん。アーデルハイトさんの案内お願いしますね」
ニルミナスの村。契約者の拠点である『ウエルカムホーム』の宿。その一室でミナホ・リリィ(みなほ・りりぃ)は藤崎 穂波(ふじさき・ほなみ)にそう頼む。
「はい。ミナホお姉さんも音楽学校作りのほうがんばってください」
「……私も時間を見つけて案内のほうにも顔を出そうと思ってます。それまでは契約者の方にお願いしていますから」
「ミナホお姉さんは忙しいんですから。無理しなくても大丈夫ですよ」
「そう……ですか」
二人のやり取り。穂波のほうが落ち着いた雰囲気で受け答えしているのに対し、ミナホのほうは寂しそう……極端に言えば泣きそうな様子だ。
「(……ね、瑛菜おねーちゃん。辛そうなのはリリィちゃんだけど……本当に辛いのはどっちかな)」
そんな二人のやり取りを部屋の隅で見ているアテナ・リネア(あてな・りねあ)はパートナーにそう聞く。
「(どっちも辛いのは辛いだろうさ)」
理由も分からず距離を置かれているミナホにしても、親代わり『だった』ミナホと相対しないといけない穂波にしても。
「(ただ言えるのは……今の二人を見て一番辛い人はもういないってことだね)」
記憶を失う前のミナホか……二人の家族だった人か。けれど彼らは前回の事件のときにいなくなってしまった。
「……ま、結局あたしらにやれることは限られてる。それを精一杯やるだけだよ」
そう言って熾月 瑛菜(しづき・えいな)はアテナとともにミナホの部屋を出て行く。自分にできることを果たす為に。
「それじゃアテナ。ミナホが願った音楽学校。それを形にしていこうか」
「うん」
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