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リアクション
二階・八握(やつか)の間
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)! 八紘零の野望は我らオリュンポスが打ち砕いてやろう!」
部屋の四隅に構える能面をかぶった少年たち――匿名四天王に向けて、ハデスは宣戦布告する。
「ククク、契約者諸君! 二階はこのドクターハデスに任せて先に行け!」
ハデスが自信たっぷりに言い放つので、他の契約者はこの場を彼に委ねることに決めた。今は一秒でも時間が惜しい。ハデス一行を残し、他の契約者は次の階を目指す。
「さあ、どれだけの腕を持ったハッカーか知らんが、天才科学者である俺に勝てるかな?」
彼の自信は、あながちハッタリとは言えない。
白衣のポケットから『ノマド・タブレット』を取り出すと、特技の【情報通信】を駆使して素早く操作。コンピュータに関わるあらゆるスキルも総動員し、タブレットPCの形をしたハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)を作り上げる。
その間、彼は部下であるペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)と怪人 デスストーカー(かいじん・ですすとーかー)に防衛を命じた。
「俺が制御室を乗っ取るまでの間、この部屋にあるトラップから俺を守りぬくのだ!」
「了解しました、ハデス先生っ! トラップの攻撃はお任せ下さいっ! 機晶変身っ!」
【パワードスーツ】を装着したペルセポネ。それを見た匿名四天王たちは慌てて罠を起動、部屋の壁から無数の槍が発射された。
ペルセポネは【アブソリュートゼロ】で周囲の大気を凍らせる。カランッ、カランッ。氷壁に阻まれた槍は、乾いた音を立てながら力なく落下した。
その隙にデスストーカーが四天王の一人を殴り倒す。決して戦闘に秀でているわけではないデスストーカーだが、運動不足が祟った小太りの少年を気絶させるには、彼のパンチで充分だった。
四天王の一人、能面Aがその場に倒れこむ。
「Aがやられたか」
「クックック。しょせん奴など我らが覆面四天王の面汚しよ!」
「……まあ、あいつがいちばん強いんだがな」
残された能面B・C・D。戦闘技術など皆無に等しい彼らも、デスストーカーがあっけなく殴り倒していった。
あとは、ハデスが制御室を乗っ取るだけに思えたが――。
警告:システムに外部からの侵入を検知
パワードスーツの制御を担当するアシストAIが、ハッキングの警告を発したのである。
仮にも八紘零が拾ってきたハッカーだ。匿名四天王は、ただではやられない。
警告:全システム、掌握されました
「そ、そんなっ、パワードスーツが勝手にっ…?!」
ペルセポネの意思とは関係なく、パワードスーツが操作されていく。『ビームブレード』を構えた彼女はハデスの背後に回りこんだ。
そして、両手に握りしめた大剣をハデスの背中へ突き刺す。
「なん……だと……? パワードスーツのAIをハッキングしたというのか……!?」
大剣を貫かれたハデス。【プロフィラクセス】によりかろうじて致命傷はさけたものの、彼は意識を失いその場に崩れ落ちた。
「ペルセポネ様っ! そんな、パワードスーツ乗っ取られるなんて……」
デスストーカーに再び緊張が走った。匿名四天王を倒した勝利の余韻はとうに吹き飛び、暴走するペルセポネを引きつった表情で見つめている。
「だ、だめっ、制御がっ! に、逃げて! デスストーカーくんっ!」
パワードスーツのスピーカーから聞こえる、ペルセポネの悲痛な声。対するデスストーカーは、迷うこと無く彼女へ立ち向かっていった。
「かつて、僕はペルセポネ様に命を救われた! 今度は、僕がペルセポネ様を助ける番だっ!」
全力で暴走パワードスーツを取り押さえようとする。だが、匿名四天王のようにはいかない。ペルセポネとの実力差は大きく、デスストーカーはどんどん手傷を負っていく。
「くっ……。僕にもっと力があれば……。ペルセポネ様を守れる力が!」
――その時だ。
デスストーカーの身体が、金色に輝いた。滾るものを感じとった彼は、すぐさまハデスの発明品に【ユニオンリング】で合体を命じる。
「了解シマシタ、合体シマス」
二つの体が融合していく。彼らは、一つになった。
発明品から伸びた多数の触手状のケーブルが生え、デスストーカーからメガデスストーカーへと変貌を遂げたのだ。
「ペルセポネ様、今助けます!」
「ぱわーどすーつノAIニあくせすシマス」
メガデスストーカーは、ケーブルでペルセポネを拘束。がんじがらめになった彼女のシステムに侵入、【情報撹乱】をおこなった。
警告:パワードスーツに異常を検知。パージします
ハッキングされた装甲ごとパージする作戦だ。パワードスーツは徐々に切り離され、ペルセポネのみずみずしく匂やかな柔肌があらわになる。
メガデスストーカーのドキドキが激しくなった。
「な、なんだ……この脈拍の変化は? 僕は心臓を病んでしまったのか?」
おそらく彼が患ったのは、恋の病だろう。――単に、むっつりなだけかもしれないが。
露出されていくペルセポネ。大剣が刺さったハデスを尻目に、その白い肌から目が離せない思春期まっさかりのメガデスストーカーだった。
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