リアクション
七夕祭りが始まってから時間が経過し、予定通り花火が打ち上げられ、キャンプファイヤーが開催された。赤々と勢いよく炎は天に触れるのかというぐらい燃え上がり、見る者達を興奮させたり和ませたりしていた。
キャンプファイヤー開催中。
「この素敵な星空の下、私達“シニフィアン・メイデン”の未発表の新曲を披露するよ」
「是非、耳を傾けて下さいませ」
食べたり飲んだりしてたっぷりと鋭気を養ったさゆみとアデリーヌがコスプレアイドルデュオ“シニフィアン・メイデン”として姿を現した。
途端、キャンプファイヤーに群がる参加者から拍手が湧いた。
その中には
「待ってました!!」
「頑張れー」
散々悪戯し回り説教されても懲りない双子の姿や
「頑張れ……ん、美味しい」
セレンフィリティはアイスがのっかったかき氷を頬張りながら応援。
「……セレン」
セレアナはセレンフィリティの様子に呆れながらもアイドル達を拍手で応援した。
「キャンプファイヤーに歌かこれは賑やかだな」
貴仁も手を叩き、賑やかな空気に参加していた。
「……こう賑やかだと何か起きるかもしれませんね」
「警戒した方がよいな」
エクレイルとカルスは地と天からキャンプファイヤーで行われるイベントを密かに見守っていた。不祥の事態が起きた際、すぐに対応出来るようにと。
ともかく拍手に包まれさゆみ達は美しい星空と花火をバックに歌い始めた。
「♪♪(少しでもこの祭りを盛り上げる事が出来れば……)」
「♪♪(素敵な思い出作りのお手伝いが出来れば……)」
さゆみとアデリーヌは皆の心に少しでも届き、幸せな思い出作りの手伝いが出来ればと歌う。
その最中、
「もっと盛り上げるか」
「だな」
騒ぎ好きの双子が何かを思い立つ。
「余計な事はせず、大人しく……」
保護者としてロズが注意するが
「大丈夫だって、お前に言われて改良した物を使うだけだって」
「そうそう、折角の舞台、もっと盛り上げないと」
双子の勢いにかき消されてしまう。彼らの手にはボール型の魔法薬がいくつもあった。
「……確かにそれなら大丈夫だが」
見覚えのある魔法薬にロズは使用許可を出した。何せ自分が散々だめ出しをした物だったので。
「よし、入れるぞ(ロズは気付いてねぇな。こっそりと混ぜている事)」
「入れろ、入れろ(これだけ人多いのを放っておく手は無いだろ)」
双子はロズに気付かれぬよう投げる際に他の魔法薬を混ぜて燃え盛る炎に投げ込んだ。
「♪♪(アディ、あの二人何かやってる)」
「♪♪(ですわね。でも心配入りませんわ)」
さゆみとアデリーヌは双子の所業を見逃さなかったが、自治活動に動く者や双子を知る者がいるため慌てる様子は無かった。
魔法薬を投入された炎は青や緑とカラフルに色を変え、見る者を楽しませる。
しかし、それだけでなくキャンプファイヤーから燃え盛る巨大な人型や現れ、大量の小さな人型が飛び出し暴れ回り、燃え盛る身体が何かに触れると火事を起こさせる。
「ちょっ、何かおかしいぞ。あんなに暴れるはずは」
「だから、ヒスミがあれを入れ過ぎたせいで」
予想外に呼びだした炎のゴーレムが暴れる様子に慌てる双子。
「……目を盗んで余計な物を入れたのか。何とかしなければ……」
ロズは双子に呆れつつも解決に動こうとするが、すでに他の者達が動いていた。
「ちょっと、何よあれ!!」
「……何か既視感があるのは気のせいかしら」
セレンフィリティとセレアナは現れたゴーレムにいつぞやの海での出来事を思い起こし、双子の所業に呆れていた。
「……本当にあの二人は」
偶々参加していた陽一は手慣れた様子で『氷術』で小さな燃え盛るゴーレム達を凍らせていた。
「……騒ぎが広がらないようにしなければ」
エクレイルは携帯する武器で『爆炎波』を放ち、巨大な燃え盛るゴーレムを爆発で消滅させ、
「……あれを消滅させる解除薬はあるか」
カルスは地に降りて直接双子に解決策は持っていないかを問いただす。
「確か……」
「これだ」
双子はごそごそと懐を探り、解除薬を取り出すと
「貸せ。私が空から散布する」
カルスが奪い取る形で解除薬を取るなり空へ
「すまない」
ロズは空へ行くカルスを見送った。
カルスが解除薬を散布した事で何とか巨大ゴーレムは消えキャンプファイヤーは元に戻った。
「……これでもう大丈夫ですね」
騒ぎが解決した事に安堵するエクレイルに
「手を貸してくれて助かった」
代表としてロズが礼を言うと
「いや、仕事だから気にするな」
カルスはぶっきらぼうに言った。
「全くあんた達は懲りないわね」
「大人しく歌に耳を傾けたらどう」
セレンフィリティとセレアナが双子の前に行き、いつもの呆れを発揮する。
「俺達は盛り上げようとしただけだ」
「そうだそうだ」
散々痛い目を見ているというのに双子は全く懲りていない。
そこに一番の被害者である
「♪♪(邪魔をする双子にはお仕置きが必要ね。しばらく夜一人でトイレに行けなくなるように……)」
さゆみが『エクスプレス・ザ・ワールド』で双子に軽くホラー、しばらく夜に一人でトイレに行けなくなるような恐ろしい光景を見せてお仕置きをする。
途端
「!!!」
双子の顔色は真っ白になった。
さゆみ達のライブは双子がガタガタ震える中、無事に終わった。
「二人共、大丈夫かい? これでも食べて落ち着いたらいい」
陽一は毎度の事に笑いながらチョコスライムの体の一部を千切り取って『氷術』で凍らせてかき氷にした物を差し出した。
「……あぁ」
「……うん」
怯えが抜けぬ様子で双子はチョコスライムを受け取り、しゃりしゃりと食べ始めた。
「すっかりやられたね。まぁ、こっぴどく怒られてしゅんとしてもすぐに元気になる二人だから大丈夫だろうけど。今日もあちこちで騒ぎを起こしたんだろ?」
陽一はロズにもチョコスライムかき氷を差し出しながら話し掛けた。祭りを楽しむ最中、あちこちで騒ぎは見たり聞いたりしたので。
「……ありがとう……その度に言っているようにしゅんとしていたが、すぐに元に戻ってやらかす」
礼を言って受け取り、頬張りながらロズは祭りでの出来事を簡単に話した。
「本当に大変だな。あの二人にとって祭りは大好物のようだから」
陽一はカラカラと笑うばかり。容易く想像出来るから。
「何より君が元気そうで良かった」
陽一はロズが双子に振り回されながらも元気でやってる事に安堵した。自分の存在やこれからに苦悩するロズを励ました者として。
「……ありがとう」
ロズは口元を緩め、気に掛ける陽一に礼を言った。
それからロズは双子と共にどこかに行った。
「なかなか面白かったですね」
貴仁は思いの外賑やかだったライブを堪能し満足だった。
そこに
「良かったら、チョコでもどうだい?」
双子達と別れたばかりの陽一がチョコスライムかき氷を配りに来た。
「あ、貰います」
貴仁は躊躇わず貰い美味しそうに頬張った。
陽一は貴仁の他にもいろんな人に配り、チョコスライムは手の平サイズになるまで頑張った。
美しい星空の下、七夕祭りは何かと騒ぎが起きれど予定通り行われ、夜明けには笹流しが行われ、笹飾りや参加者達の書いた願いが光の粒子に姿を変え空へと還っていく幻想的な風景が広がっていた。当然双子とロズの願いも無事に空へと昇っていった。
ちなみにしばらく夜になると見せられた恐ろしい光景を思い出し、双子は眠られなかったという。それも本当にしばらくの間だけで時間を経てまた元気に復活したとう。
参加者の皆様ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
七夕定番の短冊や笹飾りを作製して頂いたり美味しい屋台で祭りを盛り上げて頂いたり星空鑑賞など賑やかに祭りを楽しんで頂きありがとうございました。もちろん、通常運転で騒いでいる双子とロズの相手をして頂きました皆様ありがとうございました。
そして、短冊に書かれた皆様の願い事が叶いますように。
最後にわずかでも楽しんで頂ければ幸いです。