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園児と七夕

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園児と七夕

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第三章 雨降って地固まる

 時間は経ち、幼稚園にも夜が迫ってきていた。
 園児たちは天の川を見ようと外に出るが、その表情は悲しそうに曇った。
 空には重たい雲がかかっていたのだ。
 こうなっては、星が見えないのは子供にも分かる。全員がガッカリした様子を見せていると、
「ワーッハッハ!」
 空から笑い声が轟き、上を見上げれば変熊 仮面(へんくま・かめん)高機動型シパーヒーに乗ってやってきた。
「やぁ、みんな。またせたな!」
腰に手を当てハッチから出てくるは全裸に薔薇学マントという出で立ちは一部の先生から悲鳴を上げさせた。
その声をまるで歓声でも受けるように全身で
「みんなに良いことを教えてあげよう。えー、まず織姫と彦星は空京では会えません」
 キッパリと、夢も希望も無いことを言い放った。
「だから、今日は真実を教えてあげよう。……カモン織姫ッ!」
 そう言って現れたのは巨熊 イオマンテ(きょぐま・いおまんて)だった。
 イコンと居並ぶその巨躯はまるで怪獣映画のようでした。
「はい、みんなー! 今日は織姫と彦星が会う日だけど。その日に二人はなにをすると思うかな? 今日はそれを教えてあげよう。ところでみんなは――おしべとめしべって知ってるかな〜?」
 不吉な言葉を口にしながら訊ねつつ、イオマンテは四つん這いになり、変熊もコックピットに戻ると、シパーヒーを操り、イオマンテの腰を両手で掴み、
「子供たちの夢を壊さないでーッ!」
 そこで二人の間に割って入る機体があった。
 ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)が乗るミニュイ・プリマヴェールだった。
 黒くて大きな羽を広げ、威嚇するように一人と一頭を見つめる。
 その姿に子供たちはヒーローが現れたような歓声を上げる。
「変態さんも熊さんも、変なこと言って子供たちを悲しませないで! そんなことする人は、あたしがやっつけちゃうから!」
「真実を教えようとしただけなのに、なぜ悪者扱いされなければならない! ソレは納得できないぞ!」
「まあ、全裸で人前に出た時点で悪人確定じゃけどな」
 被害者面をする変熊にイオマンテが冷静につっこむ。
「……まあ、とにかくこちらには真実を伝える使命がある! 済まないがご退場願おう」
 変熊が言うとイオマンテも構えると、
「少女相手に二対一とは感心しないな!」
 再び空から声が聞こえて、ネージュは上を見上げる。
 空にいるのはコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)だ。
「竜心機ドラゴランダー!」
「ガオオオオン!」
 ドラゴランダーは天を裂きそうな鳴き声を上げて、龍帝機キングドラグーンに変形した。
「黄龍合体!」
 その掛け声で、キングドラグーンはハーティオンと合体し、一つの巨大ロボットが姿を現した。
グレート・ドラゴハーティオン! 七夕の光に導かれ、子供たちの夢と共にここに見参!」
 名乗りを上げると、子供たちの歓声がより一層激しくなった。
「これで、数の上でも互角だ。さあ、一緒に彼らを追い払おう!」
「ありがとう! それじゃあ、いっくよー!」
 ネージュは叫び、ウィッチクラフトライフルを構えてシパーヒーを狙い撃つ。
 変熊は真っ直ぐに飛んでくる弾丸を見て、笑みを浮かべる。
「ふっ、そんな直線上の攻撃が当たるわけ……」
「それはどうかな?」
 ドラゴハーティオンは超電磁ネットを空高く放ち、イオマンテとシパーヒーの捕獲を狙う。
 これも一機と一頭は通常なら避けられる。
 が、プリマヴェールの射撃が彼らの退路を完全に遮断していた。
「ば、馬鹿な……!」
 電磁ネットは二つの巨体を飲み込み、動きを完全に封じてしまう。さながら網に掛かった魚のようだった。
 ドラゴハーティオンとネージュは頷き合うと、ゆっくりと巨体に近づいていく。
「おまえら、なにをしようる気じゃ!」
 イオマンテが吠えるがそれには二人とも答えず、黙って電磁ネットの端っこを掴んだ。
「みんなー! 今からあの雲をどかしてあげるからねー!」
「これは織姫と彦星からのプレゼントだ!」
 そう言いながら、二人は電磁ネットを掴みつつ、まるでハンマー投げでもするように高速で回転を始める。
 巨体二つが遠心力をつけて振り回され、豪風が吹き荒れる。
「いっくよー! ……せーのッ!」
 ネージュの掛け声とともにプリマヴェールとドラゴハーティオンの手から電磁ネットが離れ、二つの巨体は弾丸のように空へと上っていき、やがて雲を突き破ると、衝撃で雲が一気に四散した。
 そこから現れたのは満点の星空だった。
 子供たちは歓声を上げる。
 一方で、空を飛んでいたイオマンテとシパーヒーは電磁ネットが破れて空に放り出されていた。
「く……機体の制御ができない。緊急脱出だ!」
 変熊は叫びながら緊急脱出でコックピットから飛び出す。
 が、これが最大の間違いと気づくのは飛び出した先に――イオマンテの巨大な尻があることに気づいた時だった。
 もちろん、飛び出した身体を制御することはできない。
「い、イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 満点の星空に絹を裂くような男の悲鳴が聞こえ、それは獣のお尻に挿入されることで消え、
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
 続いて獣のような咆哮が地上まで轟く。
 やがて、地上からは声が遠くなっていき、二つの影はそのまま見えなくなると、後に残ったのは、綺麗な星空とそれを晴らしてくれたヒーローだけだった。
 それを地上から見ていたラブ・リトル(らぶ・りとる)も感嘆の声を漏らす。
「……ま、あのポンコツもたまにはやるじゃん♪ さっきからガキ共があたしをオモチャにして不愉快だけど、今日は特別に許してあげるわ」
 ラブはふんと鼻を鳴らしながら、小さく息を吸い込んで幸せの歌を歌い始める。
 空の星々と相まって子供たちの心には幸福な気持ちが歌となって流れ込む。
 星はどこまで光りを放ち、子供たちは空にいる織姫と彦星の幸せを願いながら鋼のヒーローの元へと駆け寄った。
「いいなー! 僕も乗ってみたい!」
 その声にネージュが答えた。
「順番を守ってくれるならいいよ。ここからだと、もっと綺麗に見えるから」
 ネージュは言いながらプリマヴェールの手を地上に差し出した。
 地上では幸せの歌が流れ続け、子供たちが眠りにつくまで七夕は続いた。



 ──了──


担当マスターより

▼担当マスター

西里田篤史

▼マスターコメント

 どうも、西里田篤史です。

 今回は二番煎じどころの騒ぎじゃない七夕シナリオでしたがいかがでしたでしょうか。
 このシナリオを切っ掛けに七夕の由来とか意味を調べることがあったのですが、一説によると?イチャイチャしてないで働け!?的な意味が含まれているとか。
 昔話って結構身も蓋もないことを言い出しますよね。そこが面白いわけですけど。

 閑話休題。


 次回は夏なのでエロいシナリオを書きます(?)。
 興味のある方はぜひ参加してください。
 今回のシナリオにご参加いただいた方、本当にありがとうございました。
 それでは、失礼致します。