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食い気? 色気? の夏祭り

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食い気? 色気? の夏祭り
食い気? 色気? の夏祭り 食い気? 色気? の夏祭り

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 秘めた気持ちはたった1人の人へ

 始まったばかりの祭りは、出店通りや遊び場が多く点在する広場もどこも混雑していた。その中でのんびりと歩く1人の少女が中華まんやフランクフルトの店を覗いては立ち去る。
「ふう……彼女が居ればきっとこのお祭りも楽しかったはずだ」
 フェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)は、共に訪れるはずだったシェリエ・ディオニウス(しぇりえ・でぃおにうす)を想いながら人混みを避けつつ出店を見て回っていた。そんな彼女を物影から見守るように覗く人影――
「ちょっと心配で来てみたが、やっぱり寂しそうだな……だからといって俺が一緒に行くのも……」
 フェイを夏祭りに送り出したものの、心配した匿名 某(とくな・なにがし)だったが結局目が離せずにそのままフェイを見守っていた。

「……祭りには一緒に行けないが、確か夜更けには用事が終わると言っていた……それなら、土産を買って持っていけば一緒に食べられるか」
 シェリエと一緒に食べるのでなければ意味がない。食べさせ合いっこが出来ないではないか――と、手に持って食べられるものであり、後からでも温められるものと厳選してフェイは買い込み始めた。
「……急に食べ物買い出したが、あんなに食べられるのか?」
 祭りの定番食べ物を買い始めたフェイの様子を見ながら、少々心配してしてしまう某であった。

 シェリエと一緒に食べる――その一念でフェイはゲットした食べ物を見ながら自然とほくほく顔を見せていた。
「中華まんは、2つに割って半分こにする……フランクフルトは一口ずつ代わりばんこに食べて……ホットドックも同じように食べられるな。フライドポテトは、これこそ食べさせ合いっこが出来る」
 フェイはその光景をありありと想像したのか、某には見せない幸せそうな顔をして出店通りを歩いた。

 そんな中でフェイの目に付いたのは射的だった。
「……シェリエが欲しい物をって思っていたんだった。あの中で、彼女なら何を上げたら喜ぶだろう……」
 ぬいぐるみ、ゲーム、良く解らない小物セットのような子供向けから珍しい武器や防具、グッズといった冒険者向けのものまであるようだった。その中でフェイはどうしてもシェリエにプレゼントしたいものを見つけた。
「結った髪は至高……シェリエにこそ、あの髪飾りは相応しい」
 シェリエの青い髪にとても映えるだろう――白いレース地にスズランのアクセントをつけた上品な髪飾りであった。フェイは早速1回分の代金を払って射的台の前に立って髪飾りへ狙いを定め、【エイミング】を使って狙撃能力をギリギリまで上げた。
「……誰にも渡さない、私がもらう……!」
 パーン! と渇いた発砲音の後、髪飾りの番号札を射落としたフェイは満足気な顔を見せて獲物(景品)を受け取るのでした。


 ◇   ◇   ◇


 途中で買い食いしながら祭りを見ていたフェイの耳に、花火会場への案内アナウンスが響いた。
「花火……これも、シェリエが一緒なら楽しい時間だったのに……」
 少し残念そうに呟くフェイだったが、土産話程度にはと見ていく事にしたフェイは会場に設けられたベンチの一角に腰掛け、星空に負けない大輪の花を咲かせる花火に暫し魅入っていた。

 シェリエは、この光景を見たならどんな顔を見せてくれるのだろう――
 花火に照らされたシェリエは、どんなに綺麗だろう――

 今はまだ怖い、けれどいつかは言わなきゃならないと解っている。

「……シェリエ、大好き、だよ」
 花火の音が大きく鳴り、その音で掻き消えるタイミングでフェイは言葉を紡いだ。この気持ちがシェリエに届く願いを込めて――。


 祭りの土産を持って訪ねてきたフェイを、シェリエは笑顔で迎えた。「一緒に行けなくて、ごめんなさい」と済まなそうに告げるシェリエに、フェイは首を横に振った。

 フェイがゲットしたお土産を前に、シェリエも楽しそうな笑顔を見せる。そんな2人を見届けた某も、彼を待つ人の元へ戻るのだった。