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リアクション
序章
イルミンスール魔法学校近郊の森。
この森の中には、一部分ではあるが、幽霊が出ると言われているポイントがある。
いつからだろうか。学校の東側から森に入って少し行った所の一帯で、そういう噂話が出始めたのは。
ただ、噂はひとつではなく、色々ある。
それ故に胡散臭いと学校では言われ続けていた。
例えば、気が付くと人が一人増えているとか。すぐ耳元でクスクス笑い声が聞こえたりとか。闇の中で突然腕を掴まれるとか。
未確認情報としては、昔このあたりで仲の良い女の子たちが魔物に襲われ、命を落としたとか。そしてその子たちの霊が今もそこに留まっており、他の霊を呼び寄せているとか、いないとか。
しかし所詮、噂は噂。イルミンスール魔法学校でも霊の目撃談は、非常に少ない。それよりも、森の中に出てくる魔物たちのほうが怖いという。ごもっともな話。
ともあれ、その森を舞台にした肝試し大会は、実に一か月近くの時間を掛けて用意された。
生徒数の多い魔法学校内で、極力部外者に見られずに仕掛けやメイクの練習をするのは骨が折れた。魔物との戦闘やダンジョンに冒険もロマンがあるが、世の中娯楽が少々多くても良かろうと思って企画され、ついに今日、開催日を迎えた。
夕暮れも過ぎ、日は暮れた。
森の中はいつもなら闇に閉ざされるが、今日は違う。ところどころに松明が焚かれ、一部が明るい。
そして魔法学校正面の森の入口では、すでに肝試し参加者たちがスタートを待つ長蛇の列を作っており、スタッフたちが整理券を配ったり誘導したりと忙しそうに働いていた。
一方、森の中。
「皆さん! 今日までのご協力、ありがとうございました!」
企画した生徒は、仕掛けや準備を突然辞退した生徒達に代わって集まってくれた契約者たちに向かって深々と頭を下げた。
「おかげで形になり、なんとか今日という日を迎えることができました。感謝感謝です! これから本番、至らない部分があるかと思いますが、我々も精一杯サポートしますので、最後までお付き合いいただければと思います」
皆が、一斉に頷き合う。
「さあ、始めましょう。皆さん、持ち場にお願いします。今からきっかり十分後、入口と出口のスタッフに連絡を取り、お客様をお迎えしますので、万全の準備をお願いします」
ぱん、と生徒が手を叩くと、皆がやる気に満ちた顔で森の方々へ散っていった。
かくして十分後、一組目の客が、ギミック満載の森の中に足を踏み入れた。
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