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リアクション
同時刻 紅生軍事公司 大連支社 イコン整備施設
「お待ちしてましたよ」
垂とライゼを出迎えたのは、一人の技術者。
かつて竜系列の機体が動き出す度、その機能を解析し、鋭峰に説明してきた人物だ。
そして、かつて禽竜のBBCをイーリャに託した人物でもある。
彼に案内されるまま、格納庫の最深部まで向かう垂とライゼ。
エレベータのドアが開いた瞬間、垂とライゼは息を呑んだ。
「……こいつは!」
そこにあったのは修復された禽竜。
そして、その姿は修復される前と様変わりしている。
背中に取り付けられていた四連装のターボファンエンジンは取り外され、代わって背部には巨大な棒状のパーツが取り付けられている。
棒状パーツの巨大さたるや禽竜の身の丈以上、太さも禽竜の半分ほどある。
もはや棒というより柱を背負っているような状態。
その威容からは並々ならぬ力が感じられる。
「お待たせ。つい先程、ようやく完成したんでね。何とか間に合ったよ」
そう告げるのは三船 甲斐(みふね・かい)だ。
「俺も協力させてもらったぜ。俺だけじゃなく、教導団の整備班メンバーが総出で協力したんだ。間に合うに決まってる」
甲斐に同行する猿渡 剛利(さわたり・たけとし)も言う。
彼等の技術力もふんだんに活かされているようだ。
「短時間で大量のターボファンエンジンを集めるのは流石に骨が折れましたけどね。それに加えて火竜の体え……おっと、別に気にしないでください」
「そそ。ま、それが俺達の仕事だからな。きっちり組み込んでやったからよ、じゃんじゃん使ってくれ!」
エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)とアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)も言う。
その後にエールヴァントが語ったところによると、 今は別行動中の朝霧 栞(あさぎり・しおり)と夜霧 朔(よぎり・さく)の二人も、部品集めに奔走してくれたらしい。
「これもアカーシ博士のおかげです。あの方がシュバルツタイプから得られた技術を基に短時間で図面を引いてくれたから、私達も動くことができました」
そう告げるのは牡丹・ラスダー(ぼたん・らすだー)だ。
「すげぇ……すげぇよ……あんた達。けどよ……」
感動する垂。
だがすぐにその顔は泣き笑いのような顔になる。
「せっかく直してくれたのに悪いんだが……もう、間に合わねえよ。さっき、迅竜が襲われてるって情報が入った。かなりやばいらしい。今から行っても、もう……」
涙混じりの垂の声。
それを甲斐が励ます。
「確かに、その通りだ。でもそれは普通のイコンの話だぜ」
「んなこと言ってもよ! 最新の第三世代機が本気を出したって、今すぐ迅竜の所まで行けるわけが――」
「忘れたのかよ? この機体は現行機の先を行く技術を持つ者によって改造され、その者が造り出した数世代先の機体から得られた技術を取り込んで改修された。たとえ最新の第三世代機に無理だとしても、この機体に無理だという道理はないぜ」
「……!」
「信じてくれよ。あんたが乗ってきた禽竜を。そして、新たな姿に生まれ変わったこの機体――鳳竜を」