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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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 同時刻 迅竜 ブリッジ
 
 既に迅竜は満身創痍だった。
 アインと名乗るパイロットと彼の乗る金色の“フリューゲル”。
 それに率いられた銀色の“フリューゲル”部隊に襲われ、甚大な被害を受けた。
 
 それだけではない。
 金色の“シルト”率いる銀色の“シルト”部隊。
 彼等地上部隊からの攻撃も同時に受けていたのだ。
 
 その結果、火器は軒並み破壊され、装甲も所々破損している。
 唯一、まだ動く火器は主砲のみだ。
 だが、その主砲も――
 
「主砲のシステムにエラー発生! これはやばいよ、クローラ!」
 セリオスが告げると、クローラは静かに立ち上がった。
「主砲のあるブロックで直接操作すれば発射は可能だ」
「で、でも、主砲が不安定になってる今は危険過ぎる!」
「俺が行こう」
「クローラ、君が行くことなんて……」
「俺はこの艦で砲術を任されている身だ。俺以外に誰が行く」
「クローラ……」
「家族に伝えてくれ。心の底より愛していると」
 
 迷わずに主砲ブロックへと向かったクローラ。
 彼は慣れた手つきでコンソールを操作すると、エネルギーの充填を開始する。
 
 火器が不具合を起こしたと気付いて寄ってきた銀色の“フリューゲル”。
 それに対し、クローラは照準を合わせる。
 
「俺達を……迅竜を舐めるなよ……!」
 いつも冷静なクローラにしては珍しく、彼は気を吐きながらコンソールを拳で叩いた。
 発射される主砲。
 光条に呑み込まれる銀色の機体。
 だが、不安定な状態で発射したせいか、余剰エネルギーが放出され、ブロック内を蹂躙する。
 
 幸い、直撃は免れたものの、衝撃と破片をもろに受けてクローラは意識を失う寸前だ。
 契約者でなければ死んでいたであろう深手。
 霞む意識の中で、クローラは蒼空の彼方に見えた点へと目を凝らし――