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【第十一話】最終局面へのカウントダウン、【第十二話(最終話)】この蒼空に生きる命のために

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【第十一話】最終局面へのカウントダウン、【第十二話(最終話)】この蒼空に生きる命のために

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 数日後 パラミタ 某所

「行くのね」
 シュバルツタイプのパイロット達を前に、彩羽は静かに呟く。
「ああ。俺達の為にいろいろと動いてくれたらしいな。感謝する」
「私からも、ありがとうございます彩羽さん」
 来里人と深行の言葉に彩羽は静かに頷くのみだ。
 
 戦いの後、彩羽や迅竜機甲師団のメンバー、そして別動隊の諜報員たちといった中から有志が来里人達の為に動いたのだ。
 その結果、彼等の未来は閉ざされずに済んだのだった。
 
「あの時、キミが助けてくれたおかげで、こうして今もティーはここにいる。ありがとう」
「あの時は俺も何でこんなことしてんのかわからなかったけどよ、今ならわかる。どうしてティーを助けたのかが、な」
 源 鉄心(みなもと・てっしん)は航と握手を交わす。
 そして、航はティーに向き直った。

「ティー」
「――はい」
 自分の名を呼ぶ航をじっと見つめるティー。
 しばし二人で見つめ合った後、再び航が口を開く。
「また、一緒に飛ぼうぜ。その時まで、元気でな」
「はい。約束です。だから私、その時まで楽しみにしてますね」
 満面の笑みで応えるティー。
 次いで航は佐那に向き直る。
「ジーナ、そういやあの曲だけどよ」
「あら、覚えててくれたのね。律義な人」
「あんな振りをやっといてよく言うぜ。でだ、曲なんだが――」
 そこで一拍置き、航は微笑みと共に告げる。
「――最高の曲だぜ。特に空を飛ぶ時に聴きたくなるあたり、な」
 すると佐那も微笑みを返す。
「そう――ありがと」
 航が言葉を交わし終えると、今度は理沙が歩み出る。
「私からもお礼を言うわ。ありがとう。ふふ」
 思わず小さく笑いを漏らした理沙に、ティーと佐那が目を向ける。
「ごめんなさい。だって、航の周りにはなぜか歌の上手い女の子が集まるんだなって思ったら、なんか面白くて。いつかあなた達二人と一緒に歌いたいわね」
「ええ。いつか」
「もちろん大歓迎よ」
 三人は笑みを交わす。
 そして航を見やると、三人は再び微笑みを交わす。
 三人が笑っている理由が一人だけ解らず、呆けたような顔をする航。
 それを見て、三人は再び微笑んだ後、互いに微笑みを交わし合う。
「それじゃあ、また」
「はい。皆さんお元気で」
「また会いましょ」
 
 その横では唯斗と賢志郎、エクスと沙耶が別れの言葉を交わしていた。
「ありがとな、賢志郎。おかげで無事戦い抜けた」
「いえ。礼を言うのはこちらです。しかし、考えてみれば不思議なものです。貴方とは幾度となく敵同士として戦ったのに、今はこうして友として別れを惜しんでいるんですから」
「いいじゃないか、それで。また手合わせしたいな、賢志郎」
「ええ。今の所一勝一敗一分け。次が楽しみです」
 静かに拳を合わせる唯斗と賢志郎。

「のう、沙耶。しようのない男を相棒に持つと苦労するな」
「ええ、まあ。でも、それがあの人達の良さですから。最終決戦の時、エクスさんが言ったように、私達で支えていきましょう」
「ふふ。違いない。息災でな」
「ええ。エクスさんも」

 笑い合うエクスと沙耶。
 その横では法二と亜美も見送りの相手と話している。
 
「法二、元気でな!」
「あァ、達者にやってくとするぜ」
 快活な笑みで見送る垂に対し、犬歯を剥き出すいつもの笑みで応じる法二。
「元気で、まあ、貴方のようなしぶとい人なら大丈夫だと思うけど」
 そう言うローザマリアに法二は不敵な笑みを見せる。
「言うじゃねェか。あれか、テメェには「I’ll be back」って言えばいいのか? えェ?」
「まったく、確かに頑丈なのは認めるけど。まあ、女扱いしろとは言わないわ。軍人の私としては戻って来いとおおっぴらには言えないけど……いつでも戻ってきなさい。歓迎するわ」
 ジョークを交わし合う二人。
 やがて二人は――
「元気で」
「あァ」
 それだけで別れを済ませる。
「あ、あの……本当にありがとうございました。そして、お世話になりましたっ!」
 大柄な身体を大仰に低頭させる亜美。
 そんな彼女も踵を返し、法二に並ぶ。
 
 一方、享と舞衣も同じく挨拶を交わしていたが――。
「……」
「……」
「もぅ! 最後まで黙ってるなってのよ!」
「そうだよ。真一郎君、ちゃんとお別れしようよ」
 舞衣と松本 可奈(まつもと・かな)が促すと、二人はようやく口を開いた。
「元気でな」
「ああ」
「ああ、もぅ! それだけなの!」
「しょうがないよ。だって二人、無口だもん」
 頬を膨らます舞衣と苦笑する可奈。
 可奈はそんな舞衣にチョコチップクッキーとコーヒーを手渡す。
 
 そして、シンとこころも別れを終えていた。
「では、お元気で」
「ああ。歌菜が助かったのはお前達のおかげだ。心から、感謝する」
 握手を交わす羽純とシン。
 その横で歌菜とこころも握手を交わす。
『羽純さんと仲良くね』
 こころはいつも通りの念話。
「ええ。こころさんもシンさんと仲良くね」
 
 全員が別れの挨拶を終えた後、シュバルツタイプのパイロット達は去っていこうとする。
 その時、彩羽が来里人を呼び止めた。
「来里人!」
「どうした?」
「ねぇ、来里人。あなたはちゃんと、生きていくつもりなのよね?」
「ああ。俺は俺にできるやり方で償いをする。それだけだ」
「なら……あなたが生きていくならついて行ってもいいかしら?」
 その問いに対し、来里人は即答する。
「ああ」
「ありがと。それでもって、改めてよろしくね、来里人」
 彩羽はふと思い出す。
 そういえばこの場所は、彩羽がスミスと初めて会談し、エッシェンバッハ派への参加を告げた町だった。
 ここから始まり、ここに終わる。そして、また新たな始まりがここから――。
 不思議なものを感じ、彩羽は思わず微笑むのだった。