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ニルミナス

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終わるもの始まるもの

「いよいよ穂波の転生と恵みの儀式の終了ね」
 ルカルカはそうミナホに声をかける。ルカルカやダリル、カルキに夏侯淵は恵みの儀式の終わりを見届けに来ていた。
「はい。無事にすむといいんですが」
「大丈夫だろ。儀式を終わらせるのも転生をするのも穂波だ。あいつがしくじるはずがない」
 それが『器の魔女』という存在だ。
「そうですね。……ただ、恵みの儀式を失った村がどうなるか不安はあります」
 今まで当たり前のようにあったシステムがなくなる。その要であったミナホは当然不安があった。
「それも大丈夫だ。『あいつ』が守ろうとした村だ。安心しろ、この村は俺がいる限り守るからよ」
「うむ、俺は英霊ゆえ寿命が無い。カルキと一緒に村を守り続けるゆえ安心せられよ」
 カルキノスの言葉を夏侯淵は補強するように続ける。
「……ありがとうございます。カルキノスさん、夏侯淵さん」


「結局穂波さんやミナホさん、ミナさんは転生や儀式の終了後どうなるんですか?」
 儀式の始まる前。理の魔女の到着を待つ穂波に非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)はそう聞く。
「私はミナス草を食べないと眠り続けるちょっと器用な魔女になります。ミナホお姉さんはポンコツなただの魔女に。ミナさんは怠け者なただの魔女に」
「……穂波ちゃん、ストレスたまってるんですの?」
 ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)は穂波のいいようにそう聞く。
「いえ、家族だから遠慮してないだけですよ。ええ。ミナホお姉さんが私のプリンを食べたり、ミナさんがミナホお姉さんから逃げてきた時に私のベッドを選挙することは関係ありません」
「……いろいろと保護者として問題があるのだよ」
 イグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)は穂波の話を聞いて呆れ気味にそういう。
「いえ、ミナホお姉さんはわざとじゃないからいいんですけどね。謝ってくれますし。…………これで何度目とか考えなければ」
「穂波さんも大変なのでございます」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)はそう言う。
「…………というか、保護者がどちらかというと穂波さんになってませんか?」
「…………否定はしません」
 近遠の言葉に穂波はそういう。
「穂波ちゃんもまだまだ甘えたい年頃なのに大変ですわね」
「まあ、沙夢さんたちがちゃんといろいろ教えてくれますし。…………たまにはミナホお姉さんもミナさんも甘えさせてくれますから」
「ふむ……どうやら心配は無用だったようなのだよ」
「はい。いい家族になっていると思うのでございます」
 近遠とアルティアの言葉に穂波は恥ずかしそうな顔をする。
「……そういえば、最後の魔女……理の魔女さんは儀式が終わっても影響はないんですか?」
 恥ずかしそうにしている穂波に助け舟を出すように近遠は聞く。
「大丈夫ですよ。あの人はは調整している途中でアルディリスの崩壊を迎えましたから。私は儀式に呪いで縛られましたけど、あの人は自由です。……調整不足で面白いものを求めてそのためには何でもするって困った性格になってますけど」
 今は面白い観察対象を見つけておとなしくしているから問題ないがと穂波。
「なら、無事に転生と儀式の終わりを見届けるだけなのだよ」




 転生。それは終わりであり始まりだ。
 転生をした穂波はその特異たる『技術』を失い、『縛られない生』を手に入れた。

 恵みの儀式の終わり。それもまた終わりであり始まりだ。
 恵みの儀式を失ったニルミナスはその『恩恵』を失い、『進むべき道』を見つけた。

 転生も恵みの儀式も小さな光が起きるだけで見た目的には地味なものだった。
 けれどそこにある意味は一人の少女と村にとって大きな意味があるものだった。