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遊園地へ



「なんだか、また大荒野の方で爆発があったけど……。もう、毎回毎回、いったいみんな、大荒野で何をやってるんだよ、迷惑きわまりないじゃん。さあ、とっとと調べに行ってきな!」
 魔威破魔 三二一(まいはま・みにい)が、腰に両手をあてたまま、浦安 三鬼(うらやす・みつき)に命令しました。
「またかよ。ほっとけばいいじゃねえか。どうせまた、武闘大会でもやってるんじゃないのか?」
 どうせ、調べに行ったって、地面に謎のクレーターができているか、正体不明の機械の破片が散乱しているだけに決まっています。行くだけ無駄だと、浦安三鬼が言い返しました。
「何よ、この遊園地のオーナーである、あたしの命令が聞けないって言うん。あんたなんか、ただの使いっぱじゃん」
「ただの使いっぱって……。俺は、この遊園地の共同経営者じゃなかったのかよ?」
「違うに決まってるじゃん」
 一言で、魔威破魔三二一が片づけました。実際には、この遊園地を管理しているのは恐竜騎士団です。アトラスの傷跡を巡るマスドライバーが計画倒れになったのをいいことに、施設のほとんどを遊園地として接収したわけです。それをいつの間にかうまく丸め込んで、魔威破魔三二一がオーナーの座に居座っているだけなのでした。世間では、乗っ取りとも言います。
「いい? この遊園地はあたしの物。あたしだけの物なんだよ。そして、ゆくゆくは、シャンバラすべての遊園地やテーマパーク、さらにはパラミタ大陸全土、地球やニルヴァーナ、そして、まだ見ぬ新世界まで含めたすべてのアミューズメントは、あたしの足許にひれ伏すんだよ!」
 壮大な野望の炎をめらめらと燃やしながら魔威破魔三二一が言いました。なんだか、彼女の全身をつつむ炎が真っ黒な気がしますが、見なかったことにしておきましょう。
「さあ、その新たな野望のためにも、すぐに現場に行って調べてくるんだよ!」
 結局、どんな壮大な野望を企てていたとしても、魔威破魔三二一にはそれを実行できる力などほとんどありません。多分、ないはずです。浦安三鬼は、そう頑なに信じていました。だからこそ、自分が動かなければならないのです。同時に、何も目的を持たない浦安三鬼にとっては、どんなあほらしい目的だとしても、目的を与えてくれる魔威破魔三二一は必要な存在なのでした。
「しょうがねえなあ……」
 愚痴を言いつつも、浦安三鬼は、いつものようにシャンバラ大荒野を調べにでかけていきました。

    ★    ★    ★

「なんだか、むこうの方が騒がしいわね。何か新しいアトラクション?」
「さあ、戦闘の爆発音のようにも聞こえたけれど」
 すっかりアトラスの傷跡近くの遊園地の常連となったエメラルドことチャルチーウイトリクエアクアマリンことトラロックが顔を見合わせました。
「まさか、テスカポリトカたちが、また勝手に面白いことしているんじゃないでしょうねえ。あなた、調べてきなさいよ」
 何間外れはずるいとばかりに、エメラルドが言いました。とはいえ、ウエウエテオトルを始めとする彼らは、次のカトゥンの回帰までは、何もする予定がありません。ただ、ただ、静かに見守るまでです。
「ええっ、そんなことは聞いてないよ。だいたい、また黒蓮を栽培して疲れてるんだから。姉さんが自分で調べに行けばいいじゃないか」
「それは、めんどくさいもの。だいたい、作業はサテライトセルが勝手にやってくれているんでしょが」
 しれっと、エメラルドがアクアマリンに言いました。
「どちらかというと、僕としては、世界を終わらせないで誕生させたという新世界の方が気になるんだけど」
「でも、それってどこにあるか分かってないじゃない。まったく、あなたが早く見つけないせいよ」
「それって僕のせい!?」
 理不尽なツッコミに、アクアマリンが言い返しました。
「まあ、そのうちウエウエテオトルが見つけだすでしょ。そしたら、探検にでかけようじゃない。ここも十分面白かったけれど、多分、そこももっと面白いはずだわ」
 そう言って、エメラルドが目を輝かせました。