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そして、蒼空のフロンティアへ

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そして、蒼空のフロンティアへ
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リアクション

    ★    ★    ★

「コハクったら、どこまで行っちゃったのかしら。まあ、たまにはいっかあ」
 大浴槽でのんびりと湯に浸かりながら小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が言いました。
 近くでは、ゴチメイのみんなものんびりと湯に浸かっています。
「ひゃっはあ。パンツ分補充完了だぜえぃ。ほら、新入り、さっさとしないか」
 いつの間に手下にしたのか、食い逃げ番長を従えたPモヒカン族が、身体のあちこちにパンツを引っ掛けて走ってきました。
「えっ、あー、それ私の!」
 それを見た瞬間、小鳥遊美羽とゴチメイたちが叫びます。
「またお前かあ!」
 即座にパンツを奪い返すと、一同がPモヒカン族たちをぶっ飛ばしました。
「まったく、いいかげん脱衣場に警備でもおいてほしいよね」
 取り返したパンツをジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)に頼んで脱衣場に持っていってもらうと、小鳥遊美羽がやれやれという顔で湯船に戻りました。まったく、湯冷めしてしまうところです。
「お待たせしましたー」
 そこへ、ミリア・フォレスト(みりあ・ふぉれすと)が、出前を頼まれたアイスを届けにやってきました。少し前に、小鳥遊美羽が頼んだ物です。
「数に余裕がありますから、みなさんもいかがですか?」
 すかさず、ミリア・フォレストがゴチメイたちにもアイスを勧めます。
「もちろん、いただくぜ」
 ちょうど冷たい物がほしかったと、ココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)が目を輝かせました。全員が好きな味のアイスを買い、アラザルク・ミトゥナが支払いをすませました。

    ★    ★    ★

「ぷふぁっ! 危なく溺死するところだった……」
 なんとかローゼンクライネを押しのけて浮上したコハク・ソーロッドが、新鮮な空気を思いっきり吸い込みました。
「さすがに、もう何もないだろう。そろそろ、美羽と合流した方が無難……いやいやいや」
 あちらにはゴチメイもいるはずだと、コハク・ソーロッドは考えをあらためました。きっと、むこうに行けば、何ごとかに巻き込まれるに決まっています。ここは、もう少しここでのんびりするとしましょう。
 けれども、ホッとしたのも束の間、何かが飛んできました。
「えっ、うぼあっ!?」
 派手な水飛沫を上げて、小鳥遊美羽たちに吹っ飛ばされたPモヒカン族と食い逃げ番長がコハク・ソーロッドのいる湯船に墜落してきました。反動で、コハク・ソーロッドが吹っ飛ばされます。
「とばっちりだろがあー!」
 叫ぶコハク・ソーロッドが、流れる風呂にむかって墜落していきました。
「はは、負けないざんす!」
「何を、ボクの方が速いんだ!」
 何やら競争して泳いでいたざんすかとつあんだの上に、コハク・ソーロッドが落ちてきます。
 ごすっ!
 命中です。
 頭にでっかいたんこぶをこさえた三人は、そのまま流されていきました。

    ★    ★    ★

「まあ、それにしても、この間の最後の戦いに比べたら、Pモヒカン族なんて平和なもんよね」
 シャンバラ山羊のミルクアイスをなめながら、小鳥遊美羽が言いました。
「迷惑には違いないですけれどもね」
 やれやれという感じでペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)が言いました。
「そういえば、ペコさんやチャイさんは、これからどうするんですか?」
 小鳥遊美羽が、ペコ・フラワリーとチャイ・セイロン(ちゃい・せいろん)に訊ねました。
「なんですかあ?」
 なんのことかなあっと、チャイ・セイロンが聞き返します。
「だって、マサラさんは結婚したし、ココさんも時間の問題だよね。アルディミアクさんも似たようなものだし。他の人たちはどうするのかなあって」
 既婚者の小鳥遊美羽が聞きました。ほとんど地雷に足を載っけたようなものですが。
「同じって言われても……」
 ちょっと、アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)がはにかみます。
「あはははははは……。多分、そのうち追い越してみせますわあ。だいたい、うちにはリンちゃんがいますからあ、その面倒だけでも大変ですしい」
 ちょっとから笑いしながらチャイ・セイロンが言いました。何かいい匂いがすると言ってどこかへ行ったリン・ダージですが、今ごろはくしゃみをしつつ戻ってくる途中でしょう。
「急いで、不良品は買わないのです」
 ペコ・フラワリーが言いました。
「大丈夫、不良品も、熱いうちに打ち直して好みの形に変える」
 グッと拳を握りしめるココ・カンパーニュに、アラザルク・ミトゥナが、風森 巽(かぜもり・たつみ)の未来を案じて深い溜め息をつきました。
「で、その後、マサラはどうなんですかあ、新婚生活う」
 ちょっと興味津々で、チャイ・セイロンが訊ねました。
「うーん、新居がじきできるらしくって、そこに引っ越すまではまだなんとも……」
 そういえば、相変わらず暇を見つけてはゴチメイたちと一緒なマサラ・アッサム(まさら・あっさむ)でした。
「家かあ。いいよなあ、うちはいつになることやら。一応、近々、実家に挨拶に行くとは言ってるんだけどさあ」
 ボソリとココ・カンパーニュが、結構大切なことを言います。
「それはいつですか」
 キランと目を輝かせるアルディミアク・ミトゥナを、軽くアラザルク・ミトゥナがつついて牽制しました。これ以上、風森巽の胃に穴を開けられても困ります。
 一同が、騒がしく恋バナに花を咲かせていると、流れる風呂を一周してきたコハク・ソーロッドとざんすかとつあんだが、大浴槽に流れ着いてきました。
「きゃあ、コハク、どうしたのよ!?」
 まさか、自分のせいでこうなったとはつゆにも思わない小鳥遊美羽が、慌ててコハク・ソーロッドに駆け寄ってだき起こしました。
「ううん……。あれっ? 美羽? ぶくぶくぶく……」
 意識を取り戻したコハク・ソーロッドが、ゴチメイたちに囲まれているのに気づいて、慌ててお湯の中に沈んで隠れました。小鳥遊美羽たちの胸のあたりを見ていた視界が水中に移り、おへそから下へと変わります。
「きゃあ、何やってるのよ」
「ふんじゃえ」
 まさに墓穴を掘ってしまって沈没したコハク・ソーロッドでした。