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家族団欒へ



「今年も無事過ごすことができたねえ」
 自宅の炬燵で家族揃ってぬくぬくしながら、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)が言いました。隣には、妻の御神楽 環菜(みかぐら・かんな)が、娘の御神楽陽菜を膝の上に載せて炬燵に入っています。母親似の金髪紅眼の可愛い赤ちゃんです。もう、一人で歩きだすようになりましたから、目が離せません。今も、炬燵の上の蜜柑を転がして、キャッキャと遊んでいます。
「今年の我が家のトピックは、なんと言っても陽菜が生まれたことだなあ」
 御神楽陽太の言葉に、御神楽環菜を初めとして、全員がうんうんとうなずきました。
「確かに陽菜のことは今年最大のトピックですが、ズルズル、それよりもお前たちの親馬鹿ぶりですわ。特に、御神楽陽太、ズルズル、この間のラジオはなんですの、ズルズル……」
 年越し蕎麦を啜りながら、エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が言いました。
 御丁寧に、あの日の放送を録音したデータを再生します。
「あれは……忘れて、お願い!」
 御神楽陽太が、両手を合わせて拝みました。
「それよりも、環菜が出演したことの方をねっ、ねっ!」
 放送が終わるまで、御神楽陽太がのたうち回りました。それを肴に、エリシア・ボックが蕎麦を完食しました。
「他には、私たちの誕生日もね」
 さすがに見かねて、御神楽環菜が話題を逸らしました。
「うん、あのサプライズパーティーは感激したよ。エリシアも、ノーンも、舞花もありがとう」
 その言葉に、御神楽陽太がうなずきました。早く、話題を切り替えたいのが見え見えです。
「ワタシは、エリュシオンへの留学かなあ。久々に帰って来られて、楽しいよ」
 庭にいるモデラートステキ大自然へも目をやって、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が言いました。
「それから、第二回新ジェイダス杯での準優勝かなあ。そうそう、ラジオも面白かった……」
 ノーン・クリスタリアが、ラジオで御神楽環菜が冷やしぜんざいのことを話題にしてくれたことを思いだして言いました。
 いけません、また話題がラジオに戻りそうです。
「こんなこともあろうかと、用意しておりました」
 御神楽 舞花(みかぐら・まいか)が立ちあがると、キッチンから冷やしぜんざいを持ってきました。きっとノーン・クリスタリアが食べたくなるだろうと、あらかじめ用意しておいたのです。
「舞花は、いつも、パーティーや事業の裏方でありがとう」
「いえ、たいしたことはありません」
 御神楽陽太に言われて、御神楽舞花がちょっと恐縮しました。
「今年の思い出というと、イルミンスール魔法学校の大浴場は面白かったですね」
「うん、そうだ、初詣が終わったら、みんなでお風呂に入ろうよ」
 御神楽舞花の言葉を受けて、ノーン・クリスタリアが提案しました。この御神楽家のお風呂なら、全員では入れるだけの広さがあります。
「えっ、みんなで……いたたたた」
 いけない想像をする前に、御神楽陽太が御神楽環菜にお尻をつねられます。それを見て、御神楽陽菜がキャッキャと喜びました。
「来年も、陽太様と環菜様のお手伝いと自己鍛錬に励もうと思います」
 御神楽舞花が、クスリと笑いながら来年の抱負を述べました。
「昔から陽太は環菜のために一生懸命でしたわね。これからも環菜と陽菜のために全力で頑張るでしょうし、来年も引き続きわたくしたちがフォローしてさしあげますわ」
 エリシア・ボックが言いました。
「来年は、いつ陽菜がパパママと言ってくれるかが楽しみだなあ。鉄道事業の方も、頑張らないといけないしね」
 路線のさらなる拡張を目指して、御神楽陽太が言いました。でも、それよりも大切なのは、御神楽陽菜がいつ自分たちを呼んでくれるかと言うことです。
 それが、来年の御神楽家最大の予定でした。
「来年も一杯楽しいことがあるとよいな!」
 ノーン・クリスタリアが言ったとき、遠くで除夜の鐘が始まりました。