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【終焉の絆】滅びを望むもの

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【終焉の絆】滅びを望むもの

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リファニーを制止せよ!2


「このままじゃダメ……危ない! 今のままじゃリファニーはとても話を聞いてくれるような状態じゃあないよ!」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が叫んだ。
(”滅びを望むもの”を内包したまま、リファニーが指揮官級のダエーヴァを取り込んだ結果があの恐ろしい姿なんだよね……。それなら……一か八か、やってみるしかないじゃない……!)
美羽は切りたいものだけを切ることができる光条兵器の特性を活かせば、あるいはリファニーと融合している指揮官級のみを切り裂き、リファニーだけを取り戻すことができるかもしれないと思ったのだ。美羽はパラミタに来たばかりの頃の、世間知らずで頼りないルシアを知っているだけに、パートナーを取り戻すため、ここまでの苦難の道のりを強い決意を持って歩んできたルシアを何とか助けたかった。彼女と永きを共にしているパートナー、ヴァルキリーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)、剣の花嫁であるベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)がすぐ横に控えて、苛立つリファニーを見つめている。
「コハク、ベアトリーチェ、光条兵器を使うよっ!」
美羽が呼びかけた。
「わかった。美羽が攻撃を当てられるように、僕もなんとかしてみるよ」
このもの静かでおとなしげな少年は、その内に恐ろしいまでの威力を誇る熾天使の力を秘めているのだ。ベアトリーチェが美羽の瞳を覗き込んだ。
「やるのですね。わかりました。私自身は使い物にならなくなってしまいますが、せめて足手まといにならないようにだけはします!」
パートナーが覚醒光条兵器を使えば、剣の花嫁はほとんど動けなくなる。だがそのことが、美羽のしようとしていることのペナルティとなってはいけない。ベアトリーチェは美羽に頷いてみせた。
「お手伝い、するよ」
御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナー、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)が声をかけてきた。エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)も一緒だ。陽太は現在ツァンダで子育て中であり、ノーンとエリシアがここに来ていることは知らされていない。それでも時事に聡い彼のことだ、アナザーでの有事に彼女らが関わっていることくらいは感づいているだろう。
「たぶん、ルシア・ミュー・アルテミスが鍵ですわね。熱意とパートナー同士の絆に賭けましょう。
 ……それと、ここに来ている皆さんと。
 カケラの話から、“滅びを望むもの”がグレている気持ちもわからなくはないですが……こんな状態のままでは……」
エリシアが静かに言うと、要人警護を使い、手早く配下の15名に周囲の契約者たちの護衛を命じる。自らも必要があれば切り込む覚悟だ。ノーンがルシアに声をかける。
「大丈夫、ルシアちゃんの気持ちはきっと届くよ!
 ……帰ったらリファニーちゃんも一緒に、みんなで遊べると良いね!」
ルシアは黙って頷いた。苦悩と悲しみ、希望の入り混じった眼差しが、リファニーを見つめる。ノーンは祈るように両手を組み、そっと呟く。
「ルシアちゃんたちを頑張って応援するよ! ワタシはラッキー・ガールなんだから。きっと、大丈夫!」
美羽がすっと背筋を伸ばした。その構えた両手に刃渡り2メートルの大剣が現れる。ベアトリーチェのパワーが開放され、巨大な剣が白熱光を放った。同時にベアトリーチェは立っているのもやっとになった。強力なパワーを持つ覚醒光条兵器だが、このデメリットは未だ解決を見ていない。よろけるベアトリーチェをノーンが支え、ルシアらの後方へ避難させる。リネン・ロスヴァイセ(りねん・ろすヴぁいせ)フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)ともどもルシアをかばうように立ちながら言った。
「思えば久しぶりね、こっちにくるのも。
「私にも古王国時代の生き残りの、大切な人がいる。だから、リファニーにも悲しい結末なんて、私は認めないわ!」
 彼女を今の側に引き戻してあげて、ルシア」
ワイルドペガサス・グランツにひらりと飛び乗り、舞い上がる。リファニーの剣戟をかわしながら、『新生のアイオーン』の石化能力を発動させる。おそらく石化は無理だろうが、多少動きを鈍らせる効果はあるかもしれないとの判断だ。
「やっぱり来たわね、今は邪魔させない!」
不意にリネンがリファニーの傍らに向かって叫んだ。いつの間に現れたのか、マンダーラが来ていた。契約者たちと変わらぬ大きさながら、そのメタリックな輝きを帯びた熾天使の姿からは、あたりを威圧せんほどのパワーが放散されている。それを感じ取ってか、再びリファニーが洞窟全体を震わせるほどの凄まじい咆哮をあげる。黒い瘴気の尾を引く剣が敵を探すように空中を薙ぐ。フェイミィが滑空しながらリファニーに叫ぶ。
「この力……お前にもらったようなもんだ……だから、ここで応えさせてもらうぜ!」
「あなたから授かった力で、今度はあなたを救ってみせる!」
リネンも叫び、マンダーラの方を向いて戦闘体制をとった。
「まあ、待ってよ、別に君たちの邪魔をしにきたわけじゃない。
 そもそも”滅びを望むもの”はこちらにいるべきじゃない。僕はもともと、連れ帰ることが目的で戦っていたんだから」
リネンが疑わしげに目を細めると、思いがけずカケラが口を開く。
『マンダーラの言葉は真実です。彼の目的は彼の管轄する範囲の正常化だけ……。
 彼は光条世界の全てに従っている、というわけでもなく……彼自身のイメージする世界の在り方を叶えたいわけでもないのです。
 彼自身は“今と過去”だけが守備範囲で、その先は彼の範疇ではないのです』
マンダーラはカケラの言葉に頷いた。それを聞き身動き叶わぬベアトリーチェが声を搾り出すようにして語りかける。
「すみま……せん……ご迷惑を……。
 マンダーラさん……動けない私に……代わって、リファニーを取り押さえて……もらえませんか……?」
マンダーラは無表情なまま答えた。
「今はまだ……あとでね」