イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

【カナン再生記】 砂蝕の大地に挑む勇者たち (第1回/全3回)

リアクション公開中!

【カナン再生記】 砂蝕の大地に挑む勇者たち (第1回/全3回)
【カナン再生記】 砂蝕の大地に挑む勇者たち (第1回/全3回) 【カナン再生記】 砂蝕の大地に挑む勇者たち (第1回/全3回)

リアクション

 神聖都キシュ。漆黒の城内。
 どうにか明かりはあれど意外に広い、それでいて何も備えられていない部屋の中に一人、椿 椎名(つばき・しいな)は居た。
 人質である生徒たちの相棒たち、ネルガルによって石像になった者たちの監視を彼女は任されていた。
 石像の監視。何とも地味な役目である。
 部屋の外に出た所で、同階には無駄に広い洗面所と、ここと同じ部屋が並んでいるだけだった。
 人一人居ない階の一室に一人だけ。チャンスは、
 ――今しかないな。
 椎名は静かに瞳を閉じて、そして『精神感応』を発動した。
 パラミタ大陸に居るパートナーとテレパシーで会話ができる魔法。遠く離れたは蒼空学園にいる椿 アイン(つばき・あいん)との通信を開始した。
 『キシュの黒城の内部構造として、この階の様子とネルガルに謁見した部屋の様子を』そして『ネルガルに仕官する生徒の情報』を伝えた。
 そして最も重要な『黒水晶と石化について』話していた時だった。「あぁ、全く恐ろしい限りだよ」と言葉に漏らしてしまっていた。
「何が恐ろしいのかしら?」
 驚きで体が大きく跳ね上がった。笑みを浮かべて歩み寄るファトラ・シャクティモーネ(ふぁとら・しゃくてぃもーね)に、どうにか笑顔を繕おうとした。
「どうしてここに? ネルガル様と一緒に行かれたのでは?」
「無理を承知でお願いしましたの。それよりも、誰かと話しておられたようですけど」
 ファトラは、わざとらしく周囲に視線を走らせて、
「誰も居ないようですね」
「………………」
 椎名が黙り、ファトラも続く。視線だけがぶつかる中、先に口元を開けたのはファトラだった。
「精神感応、ですね?」
「!!!」
 顔に出すまいと思っていたのだが。どこから見られていたのかは不明だが、これでは……。
「分かった。白状するよ」
「えぇ、そうして頂けると助かります。パートナーの方は今どこに?」
「蒼空学園だ。向こうの様子を探らせようと戻らせたんだ」
「…………それで、成果のほどは?」
 椎名は瞳を閉じて笑みを浮かべた。『それが参ったわ』というポーズに見えたならただの幸運、実際は『ここが勝負どころ』と覚悟を決めた一間だった。
「戦艦爆破の際に『顔』を出してたからな。オレたちがネルガル様に仕官したのは向こうには知られてた。んで、学園に戻った途端に捕まった」
「なるほど」
「今は檻の中、1食フロ無し拷問漬けの毎日だそうだ」
「それは恐ろしいわね」
「だろ? 迂闊だったよ、少し考えれば気付けただろうに」
「すぐに捕まったという事は、肝心の収穫は無しという事ですか?」
「まぁね。あ、でも今後も志願者はカナンへの渡航を認めるみたいだね。敵は今後も増えるよ」
「私たちの仲間も、でしょう?」
「まぁ、そうかもね」
 手の内は明かした、これ以上は無い。看破されれば、そこで終わり……。
「よく分かりましたわ。つまり今後は『学園側に気付かれるまで』は向こうの情報を得続ける、と、そういう事ですわよね?」
「あ、あぁ。そうなるね」
「勝手に謀を企てた事、そして無断で外部と通信していたことはネルガル様に報告します。もちろん、裏切りの意志は無いことを説明した上で」
「あぁ」
 ――そいつは助かる。
 そう思った時だった。ファトラ椎名の耳元で囁くように、
「話の筋が通り過ぎていると、かえって怪しまれるものよ」と呟いた。
 背筋がゾッとした。掌に汗が噴き出している。「次からは気をつけるのね」とも言われたが、ほとんど耳には入って来なかった。
 離れゆく彼女の背の先で、部屋に入り来る者たちの姿が見えた。ネルガルを先頭に、仕官を願い出た生徒たちが後に続いていた。
「地球人の手を借りてカナンに内乱を起こそうと考えるマルドゥークこそが、カナンの真の敵であると訴えるべきでは?」
 歩みながらに和馬が提案した。
「加えて、各地にあるイナンナを祭る教会を全て取り壊し、新たに、シャンバラの国家神にして女王である『アイシャ』を祭る教会を各地に建てれば。カナンの民にシャンバラへの疑惑の芽を植えることができると考えます」
 とグンツも告げた。
「どちらも面白い。検討しよう」
「ありがとうございます」
 歩みながらに2人は頭を下げた。椎名ファトラも歩みに加わったが、先頭を行くネルガルは足を止めることはなかった。
 不敵な笑みを携え歩む、彼は一体どこを目指しているのだろうか。
「さぁ、そろそろ本腰を入れて動くとしよう」
 その様は、暗き深淵の中へと歩み進みゆくようでもあった。

担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 
 おはようございます。ゲームマスターの古戝正規です。

 「【カナン再生記】 砂蝕の大地に挑む勇者たち」の第1回目は如何だったでしょうか。
 みなさまにとっての『スペシャルシナリオ』になって頂けたことを願っております。
 最後まで楽しんで頂けたなら幸いでございます。

 さて、第1回目という事で、新たなキャラクターも登場致しました。
 アクション投稿が多かったのは「ジバルラ」と「闇瞑の洞窟」に関するものでした。
 【カナン再生記】シリーズにどう絡んでゆくのか、はたまた足早にフェードアウトするのかは、
 みなさまのアクション次第でございます。
 今回のアクションを総括した結果……「ジバルラ」「ザルバ」「メートゥ」に関しましては、
 どうにか次回以降も描くことが出来そうです。(お楽しみに♪)
 

 また今回【石化中】の称号を付与しましたLCたちは、石化が解かれるまでは動く事ができません。
 ですので次回ご参加の際には、「人質である」「石化中である」ことを踏まえての
 アクションにしていただきければと思います。
 また、【石化中】の称号は【カナン再生記】シナリオでのみ有効です。他マスターのシナリオにおいては、
 石化されていないものとして扱いますので、ご了承下さい。


 キャラクタークエストにも【カナン再生記】と連動したクエストが幾つも登場しておりますし、
 掲示板での「『カナン再生記』開拓スレッド」の企画も大盛り上がりを見せているようです。
 という事は次回あたりイナンナの姿が……!! 
 たくさんのご参加、誠にありがとうございます。【カナン再生記】の今後の展開にもご期待下さい。


 次作のシナリオガイドは近日公開予定です。(公開日が決定次第「マスターページ」にて告知させて頂きます) 
 次の機会にもお会いできることを心より祈っております。