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種もみ剣士最強伝説!

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リアクション



バトラーvsフェイタルリーパー


 沢渡 真言(さわたり・まこと)椎名 真(しいな・まこと)志位 大地(しい・だいち)のテンションは上がっていた。
「アピールタイム獲得までもう少しですっ」
「そうだね。しっかりアピールして専用武器とか申請しよう」
 真言と真が気合を入れあうのを見ているうちに、二人の手伝いとして参加した大地も不思議とその気になってきた。
「お二人の願いが叶うよう、俺も精一杯やりますよ」
 一方、フェイタルリーパーの葛葉 翔(くずのは・しょう)は、ニャンルーを連れてきていた。
「がんばるニャー」
 と、和む雰囲気で一生懸命に気張るニャンルーの頭を、翔はやさしく撫でる。
 そして試合開始直後、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が超重量級の斧でなぎ払いを仕掛け、一気に突き崩そうとした。
 ところがそれは大地に読まれており、ロケットパンチが飛んできて相打ちとなった。
 続けて真言と真がタイムウォーカーを使い、短期決戦を計る。
 レガースで硬度を増した真言の蹴りを、安芸宮 和輝(あきみや・かずき)はブロードアックスで防いたが、息つく間もなくナラカの蜘蛛糸が巻きつくようにふわりと下りてきたため、斧で糸を払いのけ攻撃範囲から脱出した。
 そして今度は和輝から攻撃を仕掛ける。
 足元から救い上げるように切り上げる刃はかわされたが、勢いを利用して振り下ろす。
 それはナラカの蜘蛛糸に防がれ、しばらく押し合いとなったが、ふと和輝は片方の手を離すとその手に光条兵器を出現させ、突き出した。
「……っ」
 とっさに後ろに飛んでかわしたが、真言は脇腹を痛めた。
 真のヒロイックアサルトで強化された拳による『気合の一撃』は、前田 風次郎(まえだ・ふうじろう)の金剛力とドラゴンアーツを合わせたパワーとぶつかり合っていた。
 素早く動き回り真は人には見えにくい角度から打ち込んでいくが、風次郎も勘が良く捉えることができたものは確実にガードしている。
 なぎ払いを防がれたウィングは、今度は斧をジャイアントスイングのように振り回して大地に接近した。まるで凶暴なコマのようだ。
「まともにぶつかるわけにはいきませんね……」
 翔と挟み撃ちにされないように注意してウィングと距離をとる。
 しかしそれを翔が許すはずもなく、金剛力や怪力の籠手で威力を増した一振りをお見舞いしようと、虎視眈々と攻撃の機会を狙っていた。
 その機会は意外と早くにやって来た。
 回転をやめたウィングがそのままなぎ払いに移行する。
 大地が転がるようにそれをかわしたところに、翔とニャンルーが飛び掛った。
 素早く立ち上がり身構えた大地は眼前に迫る剣先を顔を傾けて避け、一歩下がる。
 その時、翔のグレートソードの切っ先が大地の眼鏡を跳ね上げ、彼の背後から爪を出していたニャンルーは後退した大地に踏まれてしまった。
 ニギャアアアアッ!
 と、ニャンルーの断末魔のような悲鳴に、周りの者の動きが一瞬止まる。
 大地も意図して踏んだわけではないが、ニャンルーをかわいがっていた翔は激昂した。
「お前の血は何色だ!」
 次の一撃のために力を溜め込み大地を怒鳴りつける翔。
 しかし、大地の様子も変わっていた。
 彼は瞳を好戦的に光らせ、シレッと答える。
「赤に決まっているでしょう。さて……では、あなたは何色でしょうね。見せてくれますか?」
「ざけんな! 吹っ飛びやがれぇぇぇ!」
 充分に力をこめた翔のなぎ払いを、大地はこれまでの戦いの経験から得た技術でもっとも負担の少ないように受けるが、翔の威力のほうが勝っていたようで受けた刀は半ばから折られてしまった。
 衝撃で数歩後退する大地に翔の追撃が迫る。
 振り下ろされた剣の軌道を折れた刀でそらした大地は、隠し持っていた無光剣を叩き込んだ。
「ああ、あなたもちゃんと赤い血でした。良かったですねぇ」
 などと、すっかり人が変わったような大地に、真言はやや引きつった表情を見せる。
「志位さんにヘンなスイッチが入っちゃいました……!」
「替えの眼鏡は!?」
「ありません!」
「……仕方ない、放っておこう」
 真の判断に真言も頷くしかない。
 風次郎はこれをチャンスだと思った。
 今まで回復役にまわっていた者が攻撃的になったのだ。一気に畳み込む時だと。
 直接の力比べで負けないことはこれまでの打ち合いでわかっていた。
 真もそれはわかっていたので、不用意に間合いに飛び込むことはしない。
 それなら、と風次郎が先に動いた。
 と、突然煙幕があがり二人の視界を遮った。
 真の腕が真言に引っ張られる。
 移動する二人に最初に気づいたのは風次郎で、彼は見当をつけた場所へ素早く駆け寄りスタンクラッシュの力をこめた一撃を放つ。
 何らかの手応えを感じたが、自分もそれなりの衝撃を受けた。
 彼らの攻防はウィングや和輝を呼び寄せることとなった。
 薄くなってきた煙幕にかすんで見える対戦相手らしき人影を、ウィングの斧が横薙ぎに一閃する。
 呻き声と倒れる音があった。
 二人は慎重に進む。
 ようやく対戦相手達と風次郎の判別がつくようになった時、ウィングと和輝の足が突然拘束された。
「でええええーい!」
 真の、腹の底からの掛け声と同時に、二人の足は強く引っ張られて視界がぐるりと回る。
 一瞬見えたのは、ナラカの蜘蛛糸で引き寄せた二人に一撃入れようとしている真の姿。
 そうはさせるか、と和輝は身を捩った。
 ウィングも、とっさに斧をリングに突き立てて勢いを止めようとする。
 すると、二人の下に真言が滑り込んできて投げ飛ばすように救い上げた。
 真がウィングと和輝を迎え撃つことはできなかったが、二人の抵抗も阻止されてしまい、結果、三人は場外へ転がり落ちた。
 真言も二人もの人間を放り投げた反動で尻もちをつく。
 だが、目だけは風次郎の行方を追っていた。
 着ていた執事服のおかげでスタンクラッシュの畏怖の効果は受けなかったが、刀の威力はそれなりに受けている。
 今、攻撃されたら反応できるか危ういところだ。
「志位さん……」
 思わずこぼれた仲間の名前。
 風次郎の首筋に何かが押し当てられている。彼が硬い表情のまま動かないところから無光剣と思われる。
 翔は戦闘不能だ。
「そこまで!」
 菊の声でバトラー側の勝利が決まった。

 勝負はついたがどちらも満身創痍だ。
 救護班の世話になっている中、大地は代わりの眼鏡を手に入れ、目を覚ました翔はまだ気絶したままのニャンルーに気づくと、目に涙を浮かべて抱きしめた。
「なんてことだ……俺だけ生き残るなんて……っ」
 実はニャンルーは手当ても受けて眠っているだけなのだが。
 救護班の二人は、そのことをそっと彼と共に戦った仲間達に教えて、その場を去っていった。


ヘクススリンガーvs魔法少女


 この試合は、開始直後から弾幕や何かの落下物が巻き起こした砂埃で、審判にも観客にも何も見えなかった。
 ただ、選手達の話す声や戦闘音が聞こえるのみだ。
「どうする?」
「どうしようもないだろ。最後にリングに立ってたほうが勝ちだ」
 危なすぎてリング上にいられなかったため、観客席へ避難していた卑弥呼と菊が半ば諦めたような会話を交わした。

 菊の「始め!」の声が終わるか終わらないかのうちに、両者は動き出した。
 変身した魔法少女達はいっせいに宙へ舞い上がり、各々得意の攻撃態勢をとる。
 しかしそれは、ミルキーウェイで飛行した志方 綾乃(しかた・あやの)により乱された。
 両手の拳銃と両足に履いたファイアヒールの四門を向け、クロスファイアを放つ。
 さらに地上からは高性能 こたつ(こうせいのう・こたつ)がレーザーガトリングを薙ぐように連射した。
 それらを少しでも打ち消そうと、北郷 鬱姫(きたごう・うつき)がシューティングスター☆彡を降らせる。
 リングに降り注ぐ何かのせいで、もうもうと立ち込める砂埃。
「何も見えないじゃん! ケホッ」
「……まだ、足りないようですね」
 咽る御弾 知恵子(みたま・ちえこ)の近くで、こたつが不穏な呟きをもらす。
 待て、と周囲が止める前に、こたつの六連ミサイルポットからミサイル全てが射出された。
 上空で何やら騒ぐ声が聞こえた。
 少しして、あちこち煤けた鬱姫達と綾乃が降りてきた。
 ササッと煤を払った騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が、不自然に愛想の良い笑顔を見せる。
「お礼は、至れり尽くせりのご奉仕でいいかな? いいよね☆」
 と──本気狩る(マジカル)☆ステッキが唸りを上げる。
「古代シャンバラ杖術でのおもてなしです。どうぞお受け取りを〜♪」
「いいえ、お気持ちだけいただきますよ!」
 綾乃は距離を保ちつつ銃弾を撃ち込んだ。
 当たりそうなものだけステッキで弾き、間合いを詰める詩穂。
 こたつが綾乃の援護に入ろうとするが、久世 沙幸(くぜ・さゆき)に割り込まれてかなわなかった。
「沙幸よ、わしの力も存分に使うがよいぞ!」
 今回も沙幸の素肌をしっかり覆っている魔鎧のウィンディ・ウィンディ(うぃんでぃ・うぃんでぃ)
 沙幸は大きく頷き、さっそくその力を借りる。
「まじかる☆火遁の術!」
 ゴウッ、と放たれたファイアストームを、こたつはからくも避けた。
 それをしっかり捉えていた沙幸は刀に電気を纏わせ、真っ二つにしてしまおうと振りかぶる。
 きれいな軌跡で振り下ろされた轟雷閃は、しかし白麻 戌子(しろま・いぬこ)の光条兵器である大鎌に受け止められてしまった。
「ボクを仲間はずれにしないでくれたまえー」
「……いいよ。それじゃ、いっくよー!」
 沙幸は宙に浮くと、戌子の頭上を自在に飛びながら刀で斬りつける。
 戌子は大鎌で受けては反撃を試みた。
「私だって、負けられません……!」
 鬱姫は、御弾 知恵子(みたま・ちえこ)氷室 カイ(ひむろ・かい)が援護に入らないよう、再び空飛ぶ魔法で飛び立つと、まじかる☆ますけっとを二人に向けた。
 知恵子とカイが二手に分かれて飛びのいたそこを、ますけっと銃の弾丸が跳ねる。
 すかさず知恵子の魔銃カルネイジの銃口が火を吹いた。
 鬱姫は弾道を読み、ひらりとかわす。
 二人の間で銃撃戦が繰り広げられ、その勝負の決着は長引くと思われたが、突如鬱姫の態勢が崩れる。
 ハッと下を見た鬱姫の目にカイが映った。
 奈落の鉄鎖でリングに引きずり下ろそうというのだろう。
「観念しろ!」
 知恵子の銃弾に、ついに鬱姫は落とされた。
 痛みに顔をしかめながらも立ち上がった鬱姫は、乱れた呼吸を整えるとゆっくりと顔を上げ、知恵子とカイへ鋭い視線を向け──ニヤリと、暗い笑みを浮かべる。
「まだ、ですよ……ふふ、あは、あはははははっ! マダデス、マダデスヨ! マダ、ヤラレルワケニハ イカナイデスヨ!」
「う、打ち所でも悪かったのか!?」
「あれが素かもしれん……」
 狂ったように笑い出した鬱姫に、知恵子とカイは戸惑う。
 と、鬱姫の瞳が妖しく光ったように見えたと同時に、二人の背筋にぞくりと悪寒が走った。
 ふだんは認識することのない、本能的に恐れる部分を刺激するような何か。
 そこから逃れようとした時、不意打ちのように重い衝撃に襲われた。
 掻き消えたおぞましい気配と戻る視界は、まるで束の間別世界に飛んでいたような錯覚を覚えさせる。
 くすくす笑いながら、リジェネーションで傷を癒す鬱姫。
「黒い魔法少女か……おもしろい。とことんやったろうじゃん!」
 知恵子は両手に銃を握り締め、鬱姫からのその身を蝕む妄執や闇術の的にならないよう、素早く移動しながらトリガーを引く。
 カイも知恵子に合わせ、鬱姫を挟み撃ちにするように駆けた。
 すっかり陰気になってしまった魔法少女鬱姫も、容易に挟み撃ちにされないよう、空飛ぶ魔法も併用して攻撃を回避する。
「この……っ」
 知恵子が鬱姫の逃げ道をふさぐような箇所に撃ち込むが、空中に逃げることもできる彼女にはそれも難しいと思われた時、カイの奈落の鉄鎖が再び鬱姫を捕らえた。
 自分に引き寄せるように力を込めたところに、突然詩穂と綾乃の声が上がる。
 ガツンッ、と物凄く痛そうな音がして、鬱姫と詩穂がふらふらと落下してくる。
 どうやら綾乃も奈落の鉄鎖で詩穂を捕まえたらしく、引き寄せたところに偶然鬱姫も引っ張られてきていたということのようだ。
 驚きに一瞬止まるも、綾乃は次の瞬間にはとどめの一撃を放っていた。
 目を回した詩穂と鬱姫に、綾乃は大きく息を吐き出すとすっかり乱れてしまった髪をかきあげる。詩穂の何かが違う至れり尽くせりにより、気を抜くと倒れそうだ。
 と、別のところでも何かが壊れるような音が響いた。
 ハッとそちらを向いた綾乃から驚愕の声があがる。
「こたつ!」
「はぅあ! 自慢の天板に傷が!」
 沙幸の刀にざっくりと斬られたこたつは、小さく火花を散らしながら動揺している。
「もう一度! まじかる☆火遁の……」
「させないよー」
 横合いから戌子のクロスファイアが飛んできて、沙幸を飲み込んだ。

「えーと、勝負ついたみたいだね。ヘクススリンガーの勝ちみたいだ」
 炎の勢いに押され、沙幸が場外に落とされたところで菊は立ち上がり、リングに向かう。
 卑弥呼もそれに続いた。
 ふと立ち止まった菊は、救護班の二人を呼んだ。
「たぶんまた、どっちも死にそうだと思うから」
 そう言うと、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)は苦笑して紫月 睡蓮(しづき・すいれん)を連れて菊と並んで歩くのだった。