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2021年…無差別料理コンテスト

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第8章 味は変幻甘味

「むむ・・・着こなしている人ばかりですわ」
「ビデオ回してる暇があったら料理の準備しろ!それまで監視しているからな」
「もちろん、ちゃんと作りますわよ。ここはあえて、定番で攻めますわ!」
 髪を和風に結い上げ、金魚柄の可愛い浴衣を着てコンテストに参加したミナ・エロマ(みな・えろま)は、やっとチョコバナナを作り始める。
 バナナを皮を剥き、割り箸に刺して冷凍庫に入れ、凍る寸前まで冷やす。
 チョコを湯煎すると甘い香りが泉 椿(いずみ・つばき)の鼻をくすぐる。
「うまそぉ〜」
 紅い椿の模様の浴衣姿の彼女は、黙っていれば男子が寄ってきそうなほど可愛い。
 いつも胸に晒を巻いているから慣れてるが、七夕のときに着付けを教えてもらった。
「溶けず固まらない中間の温度の、見極めがポイントですわ!」
 ムラなくテンパリングし、お玉でチョコをバナナに一気にかける。
「それとカラースプレーで飾りを♪椿、試食していいですわよ?♪」
「できたか、おー、いろいろあって綺麗だな♪」
 ストロベリーチョコや抹茶、ホワイトチョコなどのチョコバナナを眺め、どれにしようか悩む。
「チョコバナナは大好きだぜ。どれどれ・・・うん、うめえ!―・・・ってなんでビデオ構えてるんだよ!?」
「ウフフ・・・あら。ちゃんと浴衣を着ている人ばっかりですわね」
「そりゃ残念だったな、エロマ!」
 椿がほっと安堵するのも束の間・・・。
「むっ、あの女子はっ」
「―・・・早く来すぎたようね」
 飴細工を作る予定の橘 カオル(たちばな・かおる)を手伝おうと来た李 梅琳(り・めいりん)は、運悪くエロマに目をつけられてしまう。
「梅琳ちゃん。その胸!ブラジャーしてますわね?ブラは浴衣に似合いませんわ!」
「そう?―・・・ど、どこへ!?いやっ、やめてっ!」
 手をひっぱられ物陰に引き込まれ、ブラをはぎ取られる。
「気になるなら、ヌーブラがお勧めですわよ♪着物のサイズがぴったりじゃありませんわね?」
「着慣れてないのよ」
「私がレクチャーてさしあげますわっ」
 梅琳に着方を教えるものの、しっかりと撮影する。
「―・・・一応、お礼を言っておくわ」
「そ〜んな。いいんですのよ、お礼なんて♪」
 “撮影出来ればいくらでも♪”



「持ってきた器、テーブルに並べ終わったか?」
「これで最後だな」
 神崎 優(かんざき・ゆう)の方をちらりと見て頷き、浴衣を着た神代 聖夜(かみしろ・せいや)が、テーブルに透明な容器をコトンと置く。
「量はこのくらいか」
 ナタデココ・ミカンの入ったソーダー味のゼリー液を、器の3分の2くらいになるように、優が注ぎ入れる。
「それくらいでいいのね?浴衣の袖につかないように気をつけなきゃ・・・」
 器の量を見て水無月 零(みなずき・れい)も袂を片手で抑えて手伝う。
「優。こっちのやつ、ちょっと多すぎよ」
 アイスとかを盛り付けたら零れちゃうかも、と少しだけ別の器に移す。
「あぁ、ごめん。ありがとう。おっと、こっちのもだな」
 他の器の量もチェックして溢れないように調節する。
「冷蔵庫に入れておきますね」
 2人がゼリー液を入れ終わった器を、零さないように陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)はそっと冷蔵庫の中にしまう。
 数十分後・・・。
「次ぎは盛り付けだよな」
 飲むゼリー状にほどよく固まった頃、聖夜は冷蔵庫から取り出してテーブルに並べる。
「もうすぐ出来そうな感じですかぁ〜?」
「ちょっと待っててくれ」
 優が器にアイスを盛り付けて零に渡す。
「一口サイズなら食べやすいかしらね」
 小さく切り分けた桃を2種類のアイスを囲むように飾りつけ、サクランボを桃の傍に乗せる。
「出来たわよ!」
「へぇー・・・美味そうだな」
「ちょうど冷たいデザートも欲しかったんですよぉ。早く食べたいですぅ〜っ!」
 エリザベートは涼しげな浴衣姿の4人をデジカメに映しながら、ぱたぱたと駆け寄っていく。
「ストローとかつけておくか?」
「んー・・・そうですねぇ」
「これなら食べやすいと思うんだけど」
「いただきますぅ〜」
 聖夜から受け取るとすぐさまぱくつき、スプーンのようなストローの先でアイスをすくう。
「あたしにも試食させて」
「はい!蒼空アイス、お待ちどうさま」
 にこっと微笑み、刹那がミルディアに渡す。
「この2つのアイスって、バニラとヨーグルトだね?」
「2種類の味が楽しめるってわけですねぇ〜」
 欲張りなイベントの主催者の少女は、両方のアイスをスプーンの部分ですくい、ほわ〜んと幸せそうに味わう。
「写真撮らせてもらってもいい?」
「どうぞ、遠慮なく撮っちゃってください!」
 刹那は北都が撮りやすいように、蒼空アイスを丸いテーブルの真ん中に置いてあげる。
「ありがとう。(こった作りじゃないみたいだけど、見た目はとってもいいね・・・。このゼリーとか何味なのかな?)」
 空のようなひんやりとしたスィーツにカメラのレンズを向け、北都はどんな味がするのか考える。
「キレイな色合いだね、クナイ」
「見ているだけで涼しくなりそうですね」
「うん、冷たくって美味しい」
 ストローに口をつけ、ちゅーっとゼリーの飲む。
「青いのはソーダー味だね。フルーツとアイスとも合ってるよ」
「おかわりならまだありますよ」
「もらっておこうかな。どこか工夫してるところって、あったりする?」
 喉が渇いた時にでも飲もうかと刹那から受け取り聞く。
「零れないようにしたところですね」
「これなら持ち歩きやすいかも」
「へぇ〜蒼空アイスか!」
「私たちにもください」
「おーい、2人分作ってくれ」
「あぁ、分かった」
 聖夜の声に優は急いで桃の皮を剥く。
「うちの校長も来てるのか」
「隣にいるのは彼女ね?」
「結構、カップルで来ている人が多いみたいだしな」
「皆、楽しそうね」
「そちら手伝いましょうか?」
「いいえ、大丈夫よ。刹那は聖夜と接客をお願い」
「そうですか?分かりました」
「2人きりにしてあげるっていうのもいいわよね」
 聖夜のところに行く彼女を見て優へ視線を移す。
「うん?仲がいいみたいだしな」
「本当にそれだけなのかしか」
「それ以外に何が?」
「―・・・さて、何かしらね♪それこっちにちょうだい、ぱぱっと切っちゃうから」
 優の手から果物を受け取り、零が切り分ける。
「出来たわよ、持っていって」
「はいっ」
 刹那は蒼空アイスをトレイに乗せ、涼司と加夜に渡す。
「おっ、ありがとう!」
「美味しそう・・・。ねぇ、涼司くん。一緒に写真撮りませんか?」
「いいぜっ」
「私が撮ってあげます。―・・・撮りますよっ」
「はい♪」
 加夜は二人で一緒に手を伸ばし、アイスを片手にパシャリと刹那に撮ってもらう。
「ありがとうございます!」
 カメラを返してもらった彼女は、さっそく操作して画面で見る。
「ばっちり撮れてるな」
「コンテストなのに夏祭りみたいですね」
「そうだな!」
「(涼司くんと出場してもよかったかもしれませんね)」
 クリームソーダーのようなアイスを一口食べた加夜は、コンテストに出てみればよかったと、ちょこっと思った。
「ほぉ〜・・・結構好評みたいだな」
「えぇ。屋台を出す方も楽しいですし」
 お祭り気分を満喫している人々の様子を刹那は聖夜と一緒に眺める。



「蒼、機械出来そうかな?」
 真はポン菓子のフレーバーを器に移して準備をしつつ、蒼の様子を見る。
「う〜んもうちょっと。料理を作る機械つくるのも、立派な料理のひとつだもーん」
「少し時間かかるみたいだな」
「にーちゃん、ネジしめやって〜」
「これ?」
「ぎゅーってしかっりね」
「ん〜っ、ふぅ・・・強く締めておいたよ。蒼、ぬいぐるみが落ちてるよ」
 帯に少年が愛用しているわんこぬいぐるみを、はさみなおしてやる。
「ありがとーっ!えっとね、にーちゃん。取っ手支えてて」
「こうかな?」
「うんっ。―・・・やったー!かーんせいっ」
「何ですかぁ〜、これ?」
「ちょうどいいところに来たね。これを回して」
「はいですぅ〜」
 電熱線で加熱しながらエリザベートにくるくる回してもらう。
「それくらいでいいよ」
 10気圧になったところで加熱を止め、取り出し口に麻布をしっかり被せる。
「それじゃ離れてて。えっと、もうちょっと・・・うん、そこで!」
「離れなきゃいけないんですぅ?」
「ちょっと危ないからさ。いくよ・・・」
 ぼんっ!!
「すっごい大きな音がしましたけど。なんですぅ〜?」
「好きなのを、この中から選んで」
「チョコと苺のにしますぅ〜」
「これをね、かけて・・・出来上がり!」
 大きい容器に移し、炒っておいたピーナッツを加えてフレーバーをまぶし、取っ手付きの紙コップにスプーンを添える。
「持ち歩けるんですねぇ。ポン菓子、さくさくですぅ〜」
「何か面白そう!私も作ってみたいわ」
「いいよ〜。どんどんいーっぱい、食べてっ。ここを回すんだよ」
「これね?」
 蒼に教えてもらいセレンフィリティは取っ手をくるくる回す。
「ちょっと離れてね」
 危ないからと真は蒼の代わりに、コンコンッと留め具を叩いてあける。
 ぼん!
「お好みの味は?」
「蜜にするわ」
「カレー味も作ってくれる?」
「セレアナ、どうせなら一緒に回そうよ」
「そうね・・・それもいいかしら」
 くるくる・・・。
「出店らしくっていいですねぇ♪」
 ポン菓子の機械の傍にいる浴衣姿の4人を、エリザベートがデジカメに映す。
「虹色ポン菓子みたいですぅ〜」
「ちょ、ちょっとセレン。作りすぎよ」
「全部食べられるもの」
「あ〜、少しメンテナンスをって・・・うわ!?」
 ぼぉおおんっ。
「ふぅ。びっくりしたーっ」
「もうっ、セレン!」
「どのみち教導団での厳しい訓練で今日食べた分のカロリーなんて、完全に消費されるし無問題☆」
「すればいいけど・・・。それ以上に、早く離れて」
「あっ!?あはは、ごめんね♪」
 驚いた拍子に抱きついてしまい、セレアナからぱっと離れる。
「これは・・・・・・メンテしなきゃね、蒼」
「うぅ〜・・・」
 修理しながら蒼は、耳と尻尾をしょぼんとさせる。



「かき氷屋がありますよ、北都」
「縁日の定番だね」
「涼司くん次、ここ行きましょう」
 看板に描かれた、かわいいパラミタペンギンを見つけた加夜が、涼司と一緒に屋台へ入る。
「2つください」
「はい、少々お待ちください!」
 ベアトリーチェは練乳を包み込むように氷術を放つ。
 ヒュォオオオッ、ピキキ・・・。
「そっちは任せましたよ」
「おっけー。フルーツの方、切っといてね」
 それを美羽がシャリシャリシャリと削りかき氷にする。
「キレイ・・・」
 加夜は雪のような色の氷が器へ落ちていく様子を眺める。
「はい、ベア!」
「ありがとうございます」
 かき氷の真ん中にバニラアイスをそっと乗せて・・・。
 一口サイズに切った桃や甘酸っぱいイチゴ、キウイ、マンゴーをのせて無糖のヨーグルトソースをかける。
「パラミタペンギンが運ぶんですね?」
「ペンギンも浴衣を着ているのか」
「一緒に撮ってあげましょうか?」
「おぉ、頼む!」
「撮りますよっ」
 ペンギンと一緒に、かき氷を手にしている加夜と涼司をカメラで写す。
「こういうかき氷も美味しいですね」
「日本の縁日にはみかけないな」
 シャリシャリと冷たいかき氷を口にする。
「僕にもくれるのかな?クナイ、半分こしよう」
 ペンギンから受け取り北都たちも試食する。
「そうですね、1つは食べきれそうにないですし」
「―・・・練乳の氷の甘さが、果物のすっぱさを消してくれるね」
 4人が試食している頃、ペンギンたちはエリザベートたちを出店へ案内している。
『いらっしゃいませ!』
「きゅーきゅー」
 店主2人で挨拶し、3匹のペンギンが彼女たちにかき氷を渡す。
「ん〜とろけますぅ〜」
「ちょっと食べたことない感じかも?」
 静香はスプーンですくい、ちまちまと口へ運ぶ。
「まぁ、美味しいほうだと思いますわよ?」
「厳しいわね・・・」
「添えるものをもう少し、工夫したほうがよかったのかもしれないですね」
 もう一手間欲しいというラズィーヤのコメントで、2人に課題が追加された。



「チョコバナナ、全種くださ〜い♪」
「は〜い。どうぞ、召し上がれ!」
 エリザベートはエロマからもらい、すぐに食べきってしまう。
「とってもカラフルですわね」
「(そちらはとってもセクシーですわっ)」
 ラズィーヤが食べている姿を撮影する。
「まぁ、キレイに作ってる方ね」
「セレアナ・・・もうちょっとちゃんと、感想言ってあげたら?」
 ストロベリーチョコバナナを食べつつ、セレンフィリティはため息をつきそうになる。
「(秘蔵映像がたまっていきますわ!)」
 エロマは欲の映像をどんどん撮りためていく。