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【大荒野のジーンズ、アトラス染め】

「開拓者の精神を色濃く持つ大荒野、その地で暮らす民が作ったジーンズを身につけ、フロンティアスピリッツを体感せよ!」

 最後に一際大きくナレーションが流れ、『大荒野のジーンズ、アトラス染め』が生まれるまでの一部始終を記録したドキュメント映像作品『プロジェクト大荒野』は終了した。 

 このジーンズはその名の通り、アトラス火山で採れる土を使って染めている。
 染料以外にも、生地の原料となる植物の栽培や、紡績、染織、縫製までを、大荒野に点在する村々が一貫して行っている。
 映像では、荒野の村々を一つずつ回り、産業を起こす意義を熱心に説く様子や、頻発する問題を一つ一つ解決していく様子が、克明に描かれていた。


「ど、どうだったっスか?この映画……?」

 シグノー イグゼーベン(しぐのー・いぐぜーべん)が、恐る恐る円華御上に訊ねる。

「ハイ。大荒野の持つ荒々しさ、力強さ、そして豊かさ。それに、開拓にかける皆さんの情熱が伝わってくる、素晴らしい作品でした」
「企画の立ち上げから製品化までに次々と起こる問題を、皆で知恵を出し合いながら粘り強く解決していく。色々と参考になる点は多いし、単純に映像作品として見ても、十分に面白い作品に仕上がってると思うよ」
「ホントですか!やったぁ!」

 円華の感想と御上の評価を聞いて、思わずガッツポーズを取るシグノー。撮影を含めた制作全般は彼の担当である。

「臨場感のある映像にしたいと思って、射撃のテクニックを応用したんスよ〜」
 シグノーは、《ゴッドスピード》や《ホークアイ》といった技を如何に撮影に生かしたのかを、大げさな身振り手振りを加えて話す。


「口でゴチャゴチャ言うよりも、映像を見てもらったほうが、俺たちの伝えたいモノを手っ取り早く伝えられると思って作ったのだが、上手くいったみたいだな」
「あの映像から、そう言って貰えれば、苦労した甲斐があったと言うモノだ」
「ヴァルさん!お久し振りです!」
「久しいな、円華。息災そうで、何よりだ」

 ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)は、以前円華が反葦原のテロリスト集団『金鷲党』にさらわれた時、その救出に尽力したことがある。

「お初にお目にかかる。私の名は神拳 ゼミナー(しんけん・ぜみなー)。大荒野の帝王、ゴライオン殿の補佐役を務めている。以後、よろしく頼む」
「五十鈴宮円華です。以前ヴァルさんには、大変お世話になりました。こちらこそ、宜しくお願い致します」
「御上真之介です。円華さんの、相談役みたいなコトをしています」
「成程。つまり、私と立場はほとんど同じという事だな」
「いえ、それ程の者かどうか、分かりませんが……」

 謙遜しながら、メガネを外す御上。 

「もしよろしければ、ジーンズの商品化にあたり、苦心した点について伺いたいのですが……。今、少しお時間よろしいですか?」

 素顔の御上に微笑まれ、一瞬頬を赤くするゼミナー。

「そ、それは構わんが……。ゴライオン、少し良いですか?」
「勿論だ。我々の経験が円華たちの役に立つのなら、これに勝る喜びはない」
「分かりました。では−−」

 ゼミナーはメガネを直すと、改めて御上に向き直る。

「今回の商品化にあたり、私が一番腐心したのは、事業の採算性と権利関係の問題だ。と言っても、私がこれらの問題を直接処理した訳ではない。大切なのは『専門家を如何に使うか』だ−−」

 ゼミナーは立板に水を流す様に、御上に話し始める。

「ヴァルさん。私もあなたのお話を伺いたいのですが、よろしいですか?」

 何時になく真剣な表情で、ゴライオンを見つめる円華。
 ゴライオンは円華に、自分が村々の説得に如何に心を砕いたかを話した。

「−−物が流れると同時に、繋がりと絆も強くなる。かつての葦原のように、閉じ篭っていても、新しい物は何も生まれない。自分を出すと同時に、他人も見る。他を知る事で、改めて己を見つめ直す。そうする事で、『大荒野とは何か』と言う問いに、新たな答えを得る事が出来る−−。いや、こんな事はお前には『釈迦に説法』だったな」
 
 そう言って、笑うゴライオン。

「いえ、そんな事はありません。自分と同じ事を考えている人がいると分かるだけで、私は嬉しいです」

 円華は 懐から帛紗を取り出すと、ゴライオンに差し出した。
 促されるままにゴライオンが袱紗を広げると、そこには、1本の簪が光っている。

「この簪は……?」
「あなたに助けて戴いたあの時。二子島であなたから頂いた扶桑の枝を、簪に仕立ててみたんです。……挿して見てくださいませんか?」

 突然の展開に内心ドキマギしながらも、簪を挿すゴライオン。
 簪が陽の光を浴びて、鮮やかに輝く。

「どうです、似合いますか?」
「……あ、あぁ。とても良く、似合っている」

 ほんのりと頬を朱に染めながら、そう訊ねる円華に、ゴライオンはようやくそれだけ答えた。

「これを見るたびに私は、私と同じ『想い』を持っている人が遠くで闘っている事を、思い出すことが出来ます。一緒に頑張りましょう、自分たちの『想い』を叶えるために」

 そう言って、右手を差し出す円華。
 円華のその手を、ゴライオンのガッシリとした手が包んだ。

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【大荒野のジーンズ、アトラス染め】

【基本値】
 4,4,3=11

【修正値】
《MC》(運営)ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)
:2×1=2

《LC》(運営)シグノー イグゼーベン(しぐのー・いぐぜーべん)神拳 ゼミナー(しんけん・ぜみなー)
:1×2=2

《IC》なし
《MB》設定+2、イベント+1=3

 2+2+0+3=7
 11+7=18

【判定結果】
 成功:PP+1

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