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忘新年会ライフ

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忘新年会ライフ

リアクション

「あっ、あっちに可愛い子が! 大好きだよ〜!」
 朔は走り出していた。見つけた黒髪ショートの子を抱きしめに行くため。
 見ると、向こうも自分を見つけたのか、「あ、可愛い子発見! ……抱いちゃおう!!」とこちらに向かって駆けてくる。
「(あれ? 男の子? ううん、違う! このニオイは……)」
 朔の前に、段々と近づいてくる青い瞳の少女。
 世界……ではなく店内の中心で、ガシリと抱き合う二人。
「えへへ♪ 可愛い子発見ー。んー、大好きだよー!」
「ボクも……カラダが変なんだよ、凄く火照って来ちゃった……」
 朔より身長が低い少女は、そのまま朔を逃げないように押し倒し、両手で抑えて、首筋を舐め回し出す。
「あぅ!?……ふぇぇ、くすぐったいよぉー」
「……うふふ、可愛いなぁ〜」
 相手の行動に朔は思わず逃げ出そうとしたが……。
「逃げちゃあだめだよ? もっとエッチなことしちゃうよ」
「紅鵡ちゃん? ……あぁー! 駄目よ、そんな淫らな事をしてはいけない!」
 饒舌なフィーアの話を聞いていたブリジッタが、「何だろう、紅鵡ちゃんの方から変な声が」と振り向いた矢先の出来事に目を見開く。
 紅鵡が銀髪の女性を押し倒していたのだ。
「えぇっと、どうしよう、ぅわ……ヤ、ヤバい唇が交わりそう! ……ハッ、あちらからも凄い殺気が……!?」
 朔の背後では再びカナン・サイサリスを紅鵡に向かって全力で投入しようとしているアテフェフと、朔に男が言い寄ってきたら、朔の父のアーティフの人格に交代していたミチルがドスの効いた声で「俺が認めた奴(人格的に)以外は許さん!」とばかりにぶん殴りに行きそうなのを、ビデオカメラを抱えた花琳が、撮影のために、「まぁまぁ」と抑えている。
「ゴメンね、紅鵡ちゃん!」
「え?」
ガンッ……!!!
 二人の唇が交わりそうになった時、紅鵡の後ろで鈍い音が鳴った。
「どう……して、ブリ……ジ……」
 振り返り、ブリジッタを仰ぎ見ながらドサリと倒れる紅鵡。
 荒い息をつくブリジッタが紅鵡の背後に立っている。その手には黎明華の残していった蜂蜜酒の瓶。
「ハァハァ……紅鵡ちゃんがいけないんですよ……紅鵡ちゃんが……」
 うわ言のように、頭にタンコブを作った紅鵡を見つめて言うブリジッタ。
「貴公! 何をするのだ!!」
 蜂蜜酒の瓶での殴打を見ていたセルシウスが激昂する。
「あ、ご、ごめんなさい」
「殴るのはその辺のモノで良いだろう!? この瓶は我がエリュシオンの名のある職人が作ったものだぞ!?」
「……あ、そこなんですね、怒るポイントは」
 セルシウスはブリジッタから酒瓶を奪い取る。ブリジッタの手にした蜂蜜酒の瓶は、エリュシオン製ゆえかどうかはわからないが頑丈らしく一切のヒビ割れもない。
「うむ……流石我がエリュシオン帝国の技術!!」
 セルシウスは瓶を掲げて見て満足気に頷く。
「おいおい、また争いごとか……くだらない事してないで、ぐーっといこうぜ、ぐーっと……わはは」
 騒ぎを聞きつけたカルキノスが定位置より用心棒として出勤してくる。
「はは……こっ……これは!?」
「む!?」
 カルキノスの視界に映るのは、タンコブを作って床に倒れた紅鵡と酒瓶を持ったセルシウス。
「犯人はセルシウスだな!」
「断固違う!!」
「シラを切るつもりか? これ以上罪を重ねるな!」
 この間観た刑事ドラマに感化されたカルキノスが叫ぶ。
「き、貴公、せ、説明してくれ!!」
 朔に懇願するセルシウスだったが……。
「くー、くー……」
 天使の様な笑顔で眠る朔はアテフェフの膝の上にいた。
「クスクス……本当、可愛いわ。ひとしきり騒いだら『えへへ〜……今日は楽しかった〜』ですって……楽しませて貰ったのはこっちなのに」
 アテフェフが朔の髪を撫でていると、ミチルが笑って立ち上がる。
「じゃあ、そろそろ帰りましょうか?」
「はーい、お母さん」
「ええ。朔は私が連れていきます、ミチルさん」
「お願い、アテフェフ」
 席を立って出ていく一行。
 バッとブリジッタを振り返るセルシウス。
「紅鵡ちゃん……どうして、こんな事に……」
 うっうっと泣くブリジッタ。
 セルシウスの肩にカルキノスがポンと手を置き、優しく語りかける。
「セルシウス、ちょっと行こうぜ……腹減ってるだろう? カツ丼でもどうだ?」
 固まったままの黎明華を担いだカルキノスがセルシウスの手首を掴んで事務室へと連れて行く。
「FUFUFU Fi−a pleasant(ふふふ、フィーア楽しい)」
 カルキノスに連行されるセルシウスを見ていたフィーアが、ケタケタと楽しそうに笑う。
「私は無実だーーー!!」
 セルシウスの絶叫が店内に響く。