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リアクション
■ 姉のいない家への里帰り ■
「セレナさん、本当に行かないの?」
出掛ける用意を調えた端守 秋穂(はなもり・あいお)に聞かれ、セレナイト・セージ(せれないと・せーじ)はそうよと頷いた。
「本当はセレナさんとも一緒に行きたかったんだけど……」
せっかく買い物を楽しめる機会なのにと、秋穂は残念がる。
やっぱり一緒に行きませんかと誘ってくる秋穂の背を、セレナイトは送り出すように軽く押した。
「ほら、私は良いから。というか、ユメミ待たせすぎると怖いわよ?」
たまには秋穂とユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)を2人っきりにさせてあげたいから、セレナイトは今日は留守番と決めている。
「わかりました……それじゃ、行ってきます!」
秋穂は元気に出て行きかけて、父の端守 誠一郎を振り返る。
「あ、父様、帰ったら一緒にゲームとかしましょう!」
父は忙しい事業家でもあるから、ゆっくりと家にいることは少ない。たまたま今回は数日の休暇が取れて在宅していると聞いたから、秋穂は帰省をその期間に合わせた。
昨日はゆっくりと父親と話をし、今日は帰省2日目。お菓子の補充も兼ねて、買い物に出掛けることにしたけれど、やっぱり父とも遊びたい。
「ああ、楽しみにしているよ。いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
誠一郎と笑顔で手を振るセレナイトに送り出されて、秋穂はユメミと共に買い物に出掛けていった。
2人が出掛けてしまった後、セレナイトと誠一郎はリビングのソファに座り、話をした。
扉の向かいにある窓からは、レースのカーテンごしに明るい日が射している。
部屋の調度品はどれも質の良い品で、ゆっくりと落ち着いて話が出来た。
「学園生活はどうかね?」
親としてはやはり気になるのだろう。そう尋ねてくる誠一郎に、セレナイトは笑顔で答える。
「そうですね……実入りの多い、楽しい日々を過ごしていますよ」
笑ったり泣いたり、ユメミと一緒にイコンに乗ったり。
他の生徒と交流したことや、学院の内外で起きた様々なことをセレナイトが話すと、誠一郎は、途中幾つか質問を差し挟みながら熱心に聞き入った。
様々なことがあるけれど、娘たちは楽しく学生生活を送っているようだと誠一郎は安心したようだった。
「まぁ……パートナーが増えるってのは、秋穂も予想してなかったみたいですけど」
「私も話を聞いた時は驚いたよ。だが、秋穂のパートナーがセレナ君もユメミ君も良い子で、本当に良かった」
良い子と言われ、セレナイトは少し照れた。
どちらかと言えば、秋穂やユメミと一緒にいるときはお姉さん的立場にいることが多いから……とそこまで考えて、セレナイトはふと気になったことを誠一郎に尋ねてみる。
「そういえば……お姉さんは?」
つい声を潜めてしまったのは、その姉が秋穂に決別されたことを知っているからだ。
「ああ……当分、帰って来れないぞ」
秋穂には年子の姉が1人いて、現在厳格な全寮制の中高一貫校に通っている。
学校行事と被ったとのことで、もうしばらくは帰省出来ないのだと家に連絡があった。
だからこそ……秋穂たちは帰省をしたのだ。姉が帰って来ないことが確定しているこの期間に。
「彼女と秋穂が会うことはない……安心して欲しい」
そう言う誠一郎に、セレナイトは悲しい表情で頷いた。
「ただいま!」
存分に買い物を愉しんで、秋穂は帰宅した。
「お菓子いっぱい買ってきたよー!」
抱えきれないほどのお菓子を持って、ユメミは満面の笑みを浮かべている。
「セレナさんと父様へのお土産もあるんですよ」
秋穂はセレナイトと誠一郎に向けて、包みを掲げてみせた。
「お土産? 楽しみね」
「私にも? それは楽しみだな。さっそく見せてもらおうかな」
「はい! あ、ユメミ、お菓子が落ちるよ」
秋穂はユメミにお菓子の包みを持たせ直すと、弾む足取りでリビングに入っていったのだった。
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