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そんな、一日。

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そんな、一日。

リアクション



18


 しゃっ、と軽い音を立ててカーテンがレールを滑る。
 開かれた窓から夏のようなくっきりとした青空が見えて、博季・アシュリング(ひろき・あしゅりんぐ)は感嘆の息を吐いた。
「今日もいい天気だなぁ……」
 呟きに、答える人はいない。最愛の彼女は今日も学校だ。
 頑張っているんだろうな、と考えると、自然と自分も頑張ろうと思えた。博季は今日休日だけれど、休んでいたらもったいない。
 まずは、と洗いたての洗濯物を干す。暖かな太陽はすぐに服を乾かすだろう。昼ごはんを食べ終えたら取り込まないと反対に傷んじゃうな、と考えながら手を動かした。
 洗濯を終えると、次は掃除だ。寝室、リビング、キッチン。
 てきぱきと掃除機を動かし、終えたら次は庭。
 花壇に水を撒き、草をむしる。
「今日も綺麗だねー」
 と褒めることも忘れずに。
 太陽に向かって伸びた花は、胸を張っているように見えた。世話をしているこちらまで誇らしくなるような姿に微笑んで、リビングに戻る。
 おなかが空いてきたな、と思えばそれもそのはずで、あっという間に昼前だった。
 何を食べようか。考えながらキッチンに向かって、パンを焼こうと思いつく。
 手抜きすればそう時間のかかるものでもないし、と鼻唄交じりに材料を量る。
 粉類を混ぜて、生地ができたら寝かせて、焼いて。
「適当でも出来立ての匂いってすごくいいから幸せだよね〜」
 オーブンから漂う香りにしみじみ呟きながら、サラダを作って紅茶を淹れたらはい、完成。
「適当お昼。うん、いい。楽なのに美味しそう」
 そりゃそうか、『適当』だもの。目的に当てはめ、適っているという意味だもの。いい加減であるという意味で使われがちだけど。
 満足のいく昼食を終えたら、すっかり乾いていた洗濯物を取り込んで、きちんと畳んで。
 毎度のことながら、彼女の服の前で一時停止。
 何度やっても、彼女の服を畳むことは慣れない。
「服はともかく下着とかね。こう、気分的にね。いや服もなんだけどさ。にしてもよくこんな小さな……ああっどけ雑念!」
 気恥ずかしさから独り言を零しつつ。
 畳んで仕舞えば、もうやることの大半は終わり。
 最後に残るは夕ご飯の仕込みだけ。
 一日頑張ってきた彼女を暖かく出迎えてあげるため、美味しいものを作らなくちゃ。