リアクション
シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)は金元 ななな(かねもと・ななな)の元にパンフレットを抱えてやってきた。
「ななな、模擬結婚式イベントってのがあるんだぜ」
「結婚イベント?」
「模擬だよモギモギ。本物の式の前に、色々やっときたい事やっちゃおってワケ」
なななは「面白そう!」とすぐに食いついてきた。
「本物式のが良かった?」
「えっ?!」
首を少し傾げてくすくすと笑うシャウラに、なななは少し赤く頬を染めた。
「なななはどんな式にしたい? 結婚式場にホテル、神社とか教会とか、いろいろあるけど」
シャウラたちは、パンフレットを見ながら模擬結婚式の計画を立てることにした。
「うーん? なななはウェディングドレスが着てみたいなっ」
「どっちかっていうと、洋風な感じ?」
「かなっ!」
シャウラは手元の資料をまとめながら、少しずつ式のイメージを作って行く。
「なななは、こんな家庭にしたい、とかそういう夢ってある?」
「何でも一緒にできるといいなー。仕事も共働きで、家事とかも一緒に半分ずつやりたいなっ」
「うん、なななと一緒だったら何でも楽しそう」
シャウラたちは将来のことも話しながら、模擬結婚式の計画を立てた。こうしている時が本当に幸せってやつなんだろうな、とシャウラは胸の奥で温かい気持ちを噛みしめていた。
そうして迎えた、模擬結婚式の当日。ウェディングドレスを着たなななは、お洒落にタキシードを着こなしたシャウラに導かれて教会の式場へと足を踏み入れた。
シャウラたちは誓いの言葉を交わし、指輪交換をすることになった。
「これって……」
ななながリングピローに乗っている指輪に目を留めた。金色のデザインリングの上に小さなダイヤが乗っている指輪だ。
「うん、デザインしたんだ」
上から見ると、なななの指輪はゆるくNの字を、シャウラの指輪はSの字を描いている。
「ゼーさんって、ほんとにすごいねっ!」
「さあ、姫。このシャウラめと指輪の交換をして頂けませんか?」
芝居がかって畏まり、一礼するシャウラ。
「喜んで!」
なななが差し出した左手を恭しく取り、シャウラはその薬指にそっと指輪をはめた。続いてなななも、シャウラの指に指輪をはめる。指輪の交換をしたシャウラたちは、どちらともなく微笑み合った。
いつか、本当の結婚式をする時を二人、夢見ながら。