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一会→十会 —指先で紡ぐ、聖夜の贈り物—

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一会→十会 —指先で紡ぐ、聖夜の贈り物—
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リアクション



【訪れる仲間達】


「豊美ちゃんやっほー」
「あっ、花音さん。こんにちはですー」
 やぁ、と手を挙げた赤城 花音(あかぎ・かのん)へ、豊美ちゃんがぺこりと頭を下げて挨拶する。
「ぬいぐるみを作りたい、って希望だったから。基本的なことは飛鳥に任せていいかな」
「はい、いいですよー」
 花音とウィンダム・プロミスリング(うぃんだむ・ぷろみすりんぐ)リュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)を連れて来たリンスの言葉に、豊美ちゃんが頷く。
「豊美ちゃん、ぬいぐるみ作れるの? 凄いなー」
「私も全然だったんですけど、リンスさんに教えてもらって出来るようになったんです。でもデザインとかはまだまだです。
 その辺はジゼルさんが凄いですよ」
 豊美ちゃんの視線の先、ジゼルの周りには子供たちにプレゼントする用のぬいぐるみがいくつも置かれていた。……難を言えば、彼女自身のセンスがやや特殊であるせいか、これは本当に可愛いのか首を傾げる品があるくらいだった。
「ボクたちの中だと、に……リュートが一番裁縫が上手だよね。ウィン姉と私は……あはは……」
「花音と私は針仕事の経験ないわね。おまけに私はほら、大ざっぱだから。細かい作業をチクチクやるのってどうしてもダメなのよね」
「僕とて一般家庭の家事レベルですよ。豊美ちゃんも言っているように、コツさえ掴めば案外出来るものです。
 休み休み、メリハリをつけながら作業していきましょう」
 リュートの言葉に花音とウィンダムが頷き、早速準備に取りかかる。
「皆さんは何を作る予定ですか?」
「えっとね、それはもう決めてあるの! ボクたちは子供向けに、モップスさんを二頭身にデフォルメしたぬいぐるみを作るんだ!
 その名も『モップス・ベアー』!」
「まんまですけどね。子供さんに喜ばれそうなのを考えたら、これに行き着きました」
「モップスさんは子供が好きなんだし、子供たちにモップスさんを知ってもらうことで“縁”が出来たら、モップスさんにとってもプラスなんじゃないかな、って思ったの。
 先に話はしてきたけど、モップスさんにもぬいぐるみをプレゼントするつもりよ」
「いいですねー。子供たちがモップスさんをかわいい、って思ってくれたら、モップスさんが孤児院で芸を披露、ということもあるかもですね」
「でしょ? だからモップスさんのぬいぐるみを作ろう、って言ったの。
 豊美ちゃんも同じイメージのぬいぐるみを作ってるみたいだし、これなら心配はいらなそうね」
「わぁ、期待されちゃってますー。頑張りますので、皆さんよろしくお願いしますー」
「うん、こちらこそ! じゃあ張り切っていこー!」

 というわけで花音とリュート、ウィンダムは{SNL9999014#モップス・ベアー}のぬいぐるみを作ることになった。
「豊美ちゃん、こんな感じかな?」
「あっ、いいと思いますよー。花音さん、飲み込みが速いですー」
「えへへ、良かったー。作詞をする時のような集中力で、って思ってやったから上手く行ったのかな」
「はぁ、花音はやる時はやるからねー。私はそこんところが弱いかなー」
「ウィンダムさん、大切なのは心、ですよ」
「そ、そうね! 大切なのは心だわ! ちょっとくらい糸がはみ出てても、それはそれでモップスさんらしいわよね!」
「まあ、それはそうですが……」

「リュート兄の記憶が正しければ、モップスさんの恋愛対象は、確か両方だったはずよね? 何がトラウマになったのかしら?」
「え、そうだったんですか?
 子供は男の子も女の子も大好きですよー、ってことじゃなくて?」
「あぁ、そういう考えもあるわね。……だとするとモップスさん自身は、恋愛について諦めきってるってことになるのかしら。
 それはちょっと勿体無いわね。男性はあのくらいの歳からこう、渋みが出てくるのよ。私はモップスさんも守備範囲内だからね♪」
「そうでしたねー。うーんどうでしょう、モップスさんの方から声をかける、というのは今の話を聞くとなさそうですねー」
「そうなのよねー。……ま、この話はモップスさんが何かアクションを起こしてから、かしらね。力になりたいのは本当だから。
 今は、私たちが作るぬいぐるみで、モップスさんが子供さんたちから好かれる様になると良いわね♪」

 そんな事を話しながら、少しずつ形になってきた所で一息つく。
「豊美ちゃんはクリスマスの予定、ある?」
「あ、考えてませんでしたー。花音さんはご予定ありますか?」
「ボクは仕事だね。クリスマスは空京でのクリスマスライブ参加。年末はまた、空京でのカウントダウンライブ参加が入ってる」
「わぁ、忙しいですー」
「この時期のアーティストはね、みんな忙しいよ。それだけボクたちも期待されてるってことなんだと思う」
 そう口にした後で、花音はちら、とリュートの方を見て、豊美ちゃんにだけ聞こえるように小声で呟く。
「ただ、隙間を1日作って、ボクとリュートの時間……お互いを確かめる時間が持てればと思うよ。
 ニルミナスでゆっくりできると良いんだけど」
「素敵ですねー。ぜひそういう時間が持てるといいです」

「うん、ありがと。
 ……さて、休憩はおしまい! 『モップス・ベアー』を仕上げちゃおう!」
 元気付けるように声を飛ばして、花音たちは仕上げの作業に取り掛かった――。