イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

【2024初夏】声を聞かせて

リアクション公開中!

【2024初夏】声を聞かせて
【2024初夏】声を聞かせて 【2024初夏】声を聞かせて

リアクション


6.思い切り遊んだ後で

 楽しい遠足を終えて、帰りの新幹線の中。
 おしゃべりしている子達もいたけれど、幼児化した契約者の殆どが眠ってしまっていた。
 リーア・エルレン作の幼児化薬は長時間の睡眠をとれば元に戻る――。

「楽しかったでござるな」
 空京駅が近づいた頃、目を覚ました真田 佐保(さなだ・さほ)は、隣にいるミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)に微笑みかけた。
 幼児化した佐保は、全てのアスレチックをやりつくす! と、森林公園で凄く楽しそうに過ごしていた。
 恋人のミーナはそんな佐保にずっとくっついていて、佐保もミーナを気遣いながら、とっても仲良く一緒にめいっぱい遊んだのだ。
「うん。えと……」
 幼児化していた時は、佐保ちゃんと呼んでいたことを思い浮かべ、ミーナは考える。
(恋人だし……呼び捨てでも……いいよね)
 そして、少し緊張しながら話し出す。
「さ……佐保……今日はいろいろあったけど楽しかったね」
「うん、凄く楽しかったでござるよ!」
 2人は爽やかな笑顔で笑い合った。
「ミーナ殿……えっと……ミーナは子供の頃は人見知りだったでござるか?」
 これまで殿をつけて読んでいた佐保も、ミーナに合わせてか、彼女の名を呼び捨てで呼んだ。
「はい。ミーナ、小さいころは結構人見知りだったんですよ。以外……でした?」
「拙者の知ってるミーナは無邪気で明るいでござるから、新鮮でござった。尤も、拙者の前では可愛いミーナのまま――いや、いつも以上に可愛いミーナでござったが」
「ふふっ」
 佐保の言葉に照れくさそうに笑った後、ミーナは今日一日中していたように、佐保の腕のぎゅっと抱きついた。
「小さいミーナからの約束ですけれど、ミーナのことちゃんとお嫁さんにしてくださいね♪」
「えっ」
 ミーナの言葉に、佐保の顔が赤くなる。
「ミーナが佐保のお嫁さんで、佐保がミーナのお嫁さんです!」
「両方互いのお嫁さんでござるか」
 ミーナはこくんと頷く。
「えへへ、佐保、愛してます」
 そして、佐保の唇に自分の唇をちゅっと重ねた。
「拙者はお嫁さんにもなれるし、こんなに可愛いお嫁さんも貰えるでござるね」
 佐保がミーナをぎゅっと抱きしめた。
「拙者、幸せでござるよ、ミーナ」
 囁いて佐保はミーナの耳にキスをした。

○     ○     ○


 地球での遠足を子供の姿で楽しんだ御神楽夫妻も、新幹線で大人の姿に戻りツァンダに存在する自宅へと戻ってきた。
 留守の間、娘の面倒をみてくれたパートナー達に礼を言って、入れ替わりで家に入り御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)と共に、愛娘が眠る姿を幸せいっぱいな気持ちで眺めた。
 それから起こさないように静かに交代で汗を流してから、飲み物を用意して、2人でソファーに腰かけた。
「楽しかった?」
「勿論です。とっても楽しかったですね」
「……本当に?」
「本当です。……どうしてですか?」
 念を押す環菜に、陽太は不思議そうに尋ねた。
「我慢して付き合ってくれた部分も、あるのかなって」
「そんなことないです。……確かに、子供の心でしたし……怖いと思うこともありましたけれど、環菜と夫婦であることはきちんと覚えてましたから。小さい頃の俺なら避けてたことも、環菜と一緒なら……一緒だったから、楽しいって知ることができました」
「うん。……私も1人なら、遊んでいる子達を尻目に、携帯電話いじってたかも。
 あなたと一緒だったから、楽しい遠足だったわ」
 環菜は僅かな笑みを浮かべ、陽太の顔には嬉しそうな笑みが浮かぶ。
「はい! これからも2人では勿論、家族で色々なところに出かけましょう、環菜」
「ええ。1人で行くよりも人数分の楽しみ方が、出来そうよね。あなたのパートナーたちにも助けてもらってるし、皆で一緒にいくのも悪くないかもしれないわね」
「そうですね、賑やかな外出になりそうです」
 すくすくと成長していく愛娘についての話をしたり、家族で過ごす日々について、話し合ったり。
 お出かけのプランを立てたり――。
 過去の事、今の事、未来の事。
 2人の会話は尽きることがないけれど。
「環菜、そろそろ休んでください。明日も早いですからね」
 夜が深まる前に、陽太は環菜を先に寝室へと向かわせて。
 片付けや、朝食の仕込み、就寝の準備を済ませてから、自分も愛しい家族が眠る部屋へと向かった。

○     ○     ○


 自宅に戻ってからも、金元 シャウラ(かねもと・しゃうら)金元 ななな(かねもと・ななな)夫妻は遠足の話で盛りあがっていた。
「ゼーさん、小っちゃい頃はちょっと臆病だったのかな〜? ななな〜ななな〜って沢山なななのこと呼んでたよね!」
「そんなことはない。あの年齢なら普通だって」
 なななと逸れた時、幼児化したシャウラは捨てられた子猫のように不安そうな顔でなななを呼んでいた。
「それに手はやーい。あんなちっちゃい時から、女の子とちゅーしてたんだ」
「あれは、相手がなななだったからに決まってるだろ」
 迷路の頂上にたどり着いた時、小さな2人は感極まってキスを交わしたのだ。
 笑い合いながら、片付けをして2人はお風呂に入る準備をしていく。
「なななのお腹の中にいる子、男の子ならあんな子なのかな。可愛かった〜っ」
「女の子なら、幼児化したなななみたいな子かな……って、お腹の中の子!?」
 思わず、シャウラは大きな声を上げてしまった。
「なななまさか……」
「えへへっ、なななのお腹の中には、ゼーさんとなななの赤ちゃん、いるんだよ」
「!! !! !!!」
 シャウラは声にならない声を上げて、ぎゅーっと目を閉じ、ぐっと拳を握りしめて。
「ななな……っ、おめでとう!」
「うん、おめでとう、ゼーさん!」
「パン…まつりに行った時“遠くないうちに”って言ったのは、こういう事だったのか」
 シャウラはすっごく嬉しそうに微笑むと、そっと大切そうになななを抱きしめた。
「新たな刑事の誕生が待ち遠しいのだー」
「なのだー」
 と、宇宙刑事ポムクルさん達も一緒に喜び踊っていた。
「性別ももう分かってる?」
「ううん、なななもまだ知らないよ」
「そっか、男の子かな、女の子かな。
 女の子ならなななに似た可愛い子だろうな」
「男の子なら、ゼーさんに似てイケメンかなー。ファーストキスはなななが奪っちゃおう!」
「なななそれはやめてくれー。俺も妬ける」
「ふふふふ♪ 男の子も女の子もいっぱいで賑やかだと良いよねー」
「ああ、健康だったらどっちでも良いし、両方沢山いたら、楽しそうだ。
 よし、明日はホームセンターに行ってくる! 庭にブランコ設置だ」
「生まれるのはまだ先だし、ブランコに乗れるようになるのは、ずっとあとだよ、ゼーさん」
「それまでは、ポムクルさんたち膝に乗せて、2人乗りの練習をするぜ」
「それじゃ、安全が確認されたら、ななながこの子と一緒に先に乗らせてもらうね♪」
「あっ、なななずるいー。よし、3人乗りができるブランコ作るぞ!」
 シャウラは張り切って木工用具を準備しだす。
「ゼーさんそれより、お風呂お風呂〜。先に入っちゃうよ」
「あ、まってなななー」
 シャウラはなななを追いかけてまたぎゅっと、愛しげに最愛の人を抱きしめた。