シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

ンカポカ計画 第1話

リアクション公開中!

ンカポカ計画 第1話

リアクション


第4章 マレーネ・モンロー


 パーティーは徐々に盛り上がり、会場内を行ったり来たりするスタッフも慌ただしくなってきた。
 そこで、今までサボっていたのだろう、超美人のウエイトレスがやってきた。
 マレーネ・モンローは、制服を勝手にアレンジして胸元を大きく開き、スカートも短めでむちむちの太股が肉感豊かでメチャセクシー。金髪でボンキュッボンの身体全体が、歩くだけで何かを主張していた。
 全男子が釘付けになっていた。
 その中で、やる気満々の男が1人、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)は早くも仕掛けにいった。
「ワインを!」
 と声をかけ、席に呼ぶ。
 マレーネが少し眠そうな色気丸出しの目つきで合図を送り、ボトルを手に歩き出す。
 クロセルはドキドキしながら何を話すか考える。どうしよう。まずは、軽く海の話でもしようかな、それとも出身とか聞いてみようかな、いや、それは失礼ですかね……。うーん……。
 しかし、残念。
 マレーネは、クロセルがいるテーブルに向かう途中、手前のテーブルで止まった。
「あれ? マレーネさん、どうしたのかな。ワインを頼んだのはこっちですよ〜」
 マレーネが止まった方のテーブルには、コースターが置かれていた。
 コースターの裏には、個室の部屋番号と時間の指定が書いてある。
 黙って目を合わせようともせず、瀬島 壮太(せじま・そうた)が背中でマレーネを誘っていた。クロセルより1枚も2枚も上手だった。
 コースターに書かれた時間の指定は、『30分後』。
 マレーネはペンを取り出すと、斜めの線を1本入れて文字をひとつ消した。
 『3』が消えて、『0分後』になった。つまり……

 ジャストナウッ!!!

 壮太は立ち上がった!
 クロセルのテーブルに向かっていたはずのマレーネだが、踵を返して、壮太とともに会場を後にした。
「あううう……!」
 クロセルはがっくりと肩を落とし、そして壮太の背中を睨みつけた。
 いや、睨んだのはクロセルだけではない。
 会場からしっぽりと消えていく2人の姿を、会場中の全モテない男子が睨んでいた。そして、心に誓っていた。
「あの野郎……! この前デートしてた女に言い付けてやるぜー!」

 マレーネは個室に入るやいなや、セクシー過ぎる半目で壮太を見つめる。
 壮太はいろいろと策を練っていたようだが、圧倒的なセクシーさに、単純な褒め言葉を捻出するのがやっとだ。
「き……き……きれいだな」
「ありがとう……」
 ただの高慢女かと思いきや、ここで軽くツンを緩めてデレを見せるところがもう男殺しのスペシャリストなのか、根っからの色情魔なのか、とにかく壮太の脳みそはトコロテン寸前まで来ていた。
「座って、話でもしようぜ……んぱ」
 マレーネは、静かにベッドに腰掛けて足を組んだ。そして足を組み替えた。

 マレーネの足の組み替えをじろじろ見てるのは、壮太だけではなかった。
 天井の通風口に忍び込んでのぞいている者がいた。
 言わずと知れたのぞき部幹部、鈴木 周(すずき・しゅう)だ。
 そして、そのすぐ後ろには、仲間の浅葱 翡翠(あさぎ・ひすい)もいる。
 2人は小声でごちゃごちゃ喋っていた。
「鈴木様。……鈴木様!」
「な、なんだよっ?」
「やらしい目でばかり見ていてはいけませんよ。情報収集という目的を忘れないでくださいよ」
「わわわ、わかってる。当たり前だぜ……」
 と生唾ごくん。鼻血がつつーっ。
 それを見て、翡翠はますます心配だ。
「鼻血鼻血! 鼻血出てますよ。これだからのぞき部は――」
「お、おお。やべえやべえ。でもよお、ここまでうまく潜入できたのは、のぞき部で培ったスキルのおかげだぜ。な?」
「まあ、そうですけど……」
「お! おおおお!」
 周はマレーネの胸元に注目する。
 マレーネは胸の谷間を壮太に見せて、
「取ってぇ」
「え……え? な、なにを?」
「あるでしょう。ねぇ」
 壮太がのぞきこむと、確かに何か見える。
「ああ、これを取ればいいんだろ」
 この程度のことでは動揺しないぜ、とフツウを装いながら谷間に手を突っ込む。
 周はもう嫉妬と羨望で体が痙攣し始めている。ガタガタガタ……
 そして壮太が取ったのは、謎の液体が入ったボトルだった。
「これ……なんだよ?」
「せっかくだから、とろけちゃいましょう」
 壮太は必死に考える。麻薬? ウイルスの素? 脳みそトコロテンドリンク? んぱんぱー?
「ねぇ、これで……イキましょう」
 そのとき、周のスケベ圧が限界に達した。

 ドッバァァァァーーーーーーー!!!!!

 スケベ圧上昇による鼻血と悔し血涙の大量噴出だ。
 ベッドにドバドバ垂れてくるスケベ・ブラッドに、マレーネは素速く飛び退いた。
「あなたたち、わたしの命を?」
 壮太はのぞき部がいることに気がつき、少し冷静さを取り戻す。
「違う。オレは女性を攻撃するようなことはしない。信じてくれ!」
 が、マレーネは油断することなくガードルに潜ませた銃身の短い拳銃をサッと取り出す。
 壮太は鬼眼でマレーネを睨んで、銃を奪おうとする――
 が、壮太の鬼眼が向いたのは、今の動きでパラリとめくれたマレーネのスカートの中だった。
「あ」
 気がついたときは遅かった。
 ガッツーン!
 マレーネのハイヒールで顎を砕かれて壁まで飛んでいった。
 ドンガラガッシャーーーーン!
 
 その音を廊下で聞いていたのは、クロセルだ。
 まだあきらめてなかったのだ。
「よーし。ここはひとつ、オネーサンを助けて信頼を得るのが一番ですね。この状況を利用させてもらいますか!」
 すぐに中に入るのではなく、鞄をごそごそ。
「えーっと、黒マント持ってきましたよねー。あ、ありました!」
 登場シーンには特にこだわりを持っているのだった。

 その頃、周と翡翠は慌てて通風口をバックしていた。
 が、
「あ。あて。あて。うっぷうっぷ。ちょっと鈴木様! お尻で押さないでくださいよっ!」
 周の尻が翡翠の顔にぶつかるばかりで、なかなか進まない。
 その上、周はぶつかるたびに、ぷうう〜!
「うわ。くさっ。鈴木様、いい加減にしてください!」
 バチコーン!
 ついにキレた翡翠が周の尻を引っぱたくと、その衝撃と部屋からのマレーネが攻撃が天井を破壊して――
「わ。わーーーー!」
 周が落ちた。
 逃げ損ねたことであきらめがついたのか、周は急にかっこよく着地に成功。しかも、運良くマレーネの銃を蹴り飛ばしていた。
 周はこの隙に壮太の手から謎の液体を取ると、ヒュッ。翡翠に投げた。
「翡翠! ここはオレに任せろ!」
 パシッ。周の命をかけての情報を、翡翠は確かに受け取った。
「でも……鈴木様!」
「死んで屍拾う者無し……だぜ!」
 翡翠は、実は大して流れてない涙を拭く真似をして、去っていった。
 拳銃を失ったマレーネは、周に肉弾戦を挑む。
 が、周は待ってましたとばかりに、スケベ根性で挑んだ。
「おーーーーーーーーーーーーーーーっぱいぱいぱいぱい!」
 スケベ検定3級以上なら誰でも会得している必殺技“おっぱいもみもみ”だ!!!
 もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ……
 しかし、この技は仕掛ける方にもダメージが大きい。周は鼻血が出すぎて貧血。すぐにも輸血をしないと命が危ないレベルになっている。
 が、その前にトドメを刺された。
 周が血涙を拭ってよく見ると、もみもみしてると思っていたのはマレーネのおっぱいではなく……

「こらこら。やめなさい! お茶の間のヒーローに何をするんですか!」

 クロセルの尻だった!
 マレーネを救うべく部屋に突入したものの、つまづいてぶっ飛んでしまったのだった。
 クロセルはこともなく周のスケベ顔を蹴り上げると、マレーネに声をかけた。
「お待たせしました。マレーネさんを守るために、やってきました。俺が来たからにはもう安心です」
 しかし、クロセルの目には写ったのは、マレーネではなかった。ドカドカと入ってきた、屈強な警備員軍団だった。
「マレーネさん……」
 黒マントの「かっこいい」ヒーローは、壮太と周と一緒に警備員に連行されていった。

 マレーネは気持ちいいことができず、欲求不満で悶々としながら会場に向かった。
 と、通路には遊び人風のヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)が立っていた。
 ヴィナは会場に入らず、周囲を歩いて様子を窺っていたのだ。
 悶々のマレーネがヴィナを見て声をかけないわけはない。
「ねぇ。わたしと……どう?」
 こう見えても妻子持ちで根が真面目なヴィナは、静かに首を振った。
「それは、遠慮しておこうかな」
 マレーネはかまわず手をヴィナの首にかけ、耳元に囁きかける。
「一緒に脳みそとろけましょう」
 まったく壮太や周、クロセルに見習ってほしいほどの真面目さで、ヴィナはきっぱりと断った。
「もっと綺麗になったら、また来てね」
 しかし、ヴィナはマレーネのプライドの高さを理解していなかった。
 ドガッ!
「ううう……」
 マレーネの膝がヴィナの股間を直撃していた。
 ヴィナは、その場に沈んだ……。

 謎の液体を持った翡翠は、通風口の中を警備員から逃げていたが、元々こそこそした行為は得意じゃなかったので……道に迷ってしまった。
「た、たしかにのぞき部のスキルも馬鹿にならないもんですね。とほほ……」
 仲間の刀真に、ウイルスの素らしき液体をゲットしたとメールだけ送っておいた。
 刀真はトイレの個室でメールを読んだ。

『ンカポカ=マレーネ・モンロー』???

 マレーネがサボってばかりいるもんだから、いよいよやる気のないウエイター白髪の爺さんが会場に駆り出されることになり、従業員控え室でゆっくり立ち上がった。
「まーったく、めんどくせえぞな……」