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ホワイトバレンタイン

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(いつかは二人っきりでのデートもしたいけど、今はきっと大勢で過ごした方がヴァーナーも楽しめるよな)
 緋桜 ケイ(ひおう・けい)はそんな思いでチョコ作りに参加した。
 2人っきりでのバレンタインデートも魅力的だけど、クリスマスに一緒に過ごせなかったことを考えれば、こうやって3人仲良く特別な日を過ごせるのはうれしいことだった。
 そのケイの想い人であるヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は制服に赤白のチェックのエプロンと柄に合わせたリボンで可愛く&お菓子作りに適した格好をして、材料をもらってきていた。
 ちなみにヴァーナーは白いハートのポケットがついた黄緑のエプロンも持っているのだが、これも緑の髪に似合っていて、とても可愛い。
 一緒にチョコ作りの道具を借りてきたソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)はヴァーナーの持つホワイトチョコを見て、首を傾げた。
「これで何を作るのですか?」
「白い薔薇の花のチョコを作るのです。一口サイズで可愛いのにする予定ですよ」
「わあ、素敵!」
 褒めるソアにヴァーナーはニコニコする。
「緑の葉っぱも作って透明の袋でラッピングするのです」
「そしたら本物のミニホワイトローズみたいですね」
 うんうん、とヴァーナーは頷いたが、実はまだ内緒にしていることがあった。
 それは隠しておいて、ヴァーナーはソアに尋ねた。
「ソアちゃんは何を作るのですか?」
「私はハート型のチョコとか作ってみたいですっ。でも、チョコ作りは初めてで……」
「それならボク、教えますよ。お菓子作り、大好きなのです」
「ありがとう、ヴァーナーさん!」
 仲睦まじい2人の様子を見て、ケイは柔らかく微笑む。
 秋の頃はちょっと寂しそうな様子だったソアだったが、今は明るく元気だ。
 実際、ソアは複雑な心境を整理し、今は自分も素敵な恋がしたいなと思っていた。
 ケイはそんな二人に負けないように気合を入れた。
「ここは一つ、俺もがんばってチョコを作ってみるぞ!」
 『ギャザリングヘクス』を応用した魔力の上がるチョコを作るため、ケイは気合を入れた。
 しかし、そのケイを見て、ヴァーナーが止めた。
「待ってください〜」
「え?」
「ケイもちゃんとこれをつけるのです」
 ピンクと白のチェックのエプロンにフリルのついたものを、ヴァーナーがケイにつけてあげる。
「お、おい……」
「ダメですよ〜。意外とチョコってはねるんですから」
 ヴァーナーがキュッと後ろをリボン結びで止める。
「まぁ……言うとおりか」
 お菓子作りをするならばお菓子作りにふさわしい格好を。
 ケイはそう観念し、白とピンクの可愛いエプロン姿でチョコを作ることになった。
「さ、たくさん作るとするか。モップスにも持って行きたいし!」
「モップスさんに?」
「うん、いつかの手作り賞状のお礼に、手作りチョコっていうのもいいだろ? それに、チョコレートには疲労回復効果もあるっていうからな。気苦労が多そうなモップスにはピッタリだろ」
 受け取ってもらえるくらいの物を作るとしよう、とケイもヴァーナーに教えてもらって、チョコ作りを始めた。


「できたー!」
 3人のチョコが出来上がり、ケイはみんなに食べ比べを提案した。
「せっかくだし、みんなで食べようぜ!」
「うん! 紅茶入れますね」
 ソアが楽しげに紅茶を入れた。
 2人の後ろにはたくさんのチョコが積まれていた。
 今食べる分だけでなく、学校の友達やパートナーにあげるためにも作ったので、すごい量になったのだ。
「さ、2人とも食べてくれ」
 ケイはギャザリングへクスを応用した魔法チョコをソアとヴァーナーに差し出した。
 魔法使いがメインのソアと、プリーストがメインのヴァーナーにとっては、似合いの品だ。
「私はこれを」
 ソアは綺麗な形に出来たハートチョコをケイとヴァーナーに送った。
「ありがとうございます。ボクも……」
 そう言いながらヴァーナーは作っておいた白薔薇のチョコを……手に取らなかった。
「ケイとソアちゃんは特別なチョコなのです」
 ヴァーナーはニコッとして、がさがさと違うところに手を入れた。
「あ、あれでしょうか」
「あれ?」
「さっきヴァーナーさんが桃のエッセンスを混ぜてピンクの薔薇を作っていたのです。それかと……」
 しかし、それはヴァーナーが花言葉である愛と尊敬、そして温かい心の意味を込めて作った片思いなどの想いを持つ人たち用のもので、ケイたちにはもっと特別なものが用意されていた。
「はい、どーぞなのです!」
 ケイとソアに渡されたのは、イチゴのエッセンスが入った赤い色の薔薇のチョコだった。
 花言葉はもちろん愛と尊敬、そして情熱。
「あれ、このチョコ、プルプルしますね」
「うん、グミっぽくしたのです」
 ニコニコッとヴァーナーは微笑み、チョコを口にした2人に尋ねた。
「ボクのくちびるみたいな感じにプルプルするんです、おいしいですか?」
 その言葉にケイは真っ赤になって咳き込み、ソアも頬を赤くする。
「……? ケイとソアちゃんのチョコ、おいしいですよ。ほらほら」
 ヴァーナーはケイのチョコを食べ、ソアにちゅ〜をし、次にソアのチョコを食べてケイにちゅ〜をして、2人をさらに真っ赤にしたのだった。