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嘆きの邂逅~離宮編~(第5回/全6回)

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嘆きの邂逅~離宮編~(第5回/全6回)

リアクション

「殺せ」
 上空から声が発せられ、キメラが一斉に宮殿へと下降してくる。
「上空に7。指揮者が乗っていると思われる空飛艇が1。キメラは多種です。いくつも頭があるキメラの場合頭や首を切り落としただけでは動きを止めることが出来ないでしょう。また、殆どのキメラが翼を有していますが、鳥型というわけでもなく、獣の足をも持っています」
 状況を見極め、陽太がそう皆に説明しながら、銃を撃っていく。
「北に行く前に、大きな仕事が出来たようね。皆はここから援護をお願い」
 リカインもまた、梯子を下りだす。
「近づけさせません!」
 リカインに迫るキメラを、陽太が銃撃で追い払う。
「なめんなよバカ女、俺だって強くなってんだよ!」
 言いながら、アストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)も陽太の援護を受けながらリカインの後に続き、屋上へ下りていく。
「お2人共、気をつけて……!」
 鞆絵が火術を放ち、キメラを退ける。
 その間に、リカインに続き、アストライトも屋上へと飛び降りた。
 リカインは飛び降りると同時に、ドラゴンアーツで飛行しているキメラの顔を打ち飛ばす。
 キメラは奇声を上げて、リカインに爪の攻撃を加える。
「ケガしてんじゃねぇよ!」
 アストライトがラスターブーメランで、キメラの背に一撃を加える。
「この程度、ケガとは言わないわ」
 裂かれた頬の血を拭い、リカインは再びドラゴンアーツを繰り出して、飛ぶキメラの翼を折る。
「全部落としてやるぜ!」
 アストライトはブーメランを操り、破邪の刃をも使い2匹のキメラにダメージを与える。
 だが、1,2撃で倒せるほどキメラは弱くはなかった。
「頑丈な身体ね……っ」
 リカインは移動力を失ったキメラに近づき、打撃で急所と思われる部分を打ち、翼や足の骨を砕いていく。
「ほらよっ!」
 アストライトは敵の飛行経路にブーメランを放ち惑わせる。
「翼を撃ちます」
 陽太が塔から援護射撃をし、キメラの翼を撃ちぬいた。
「射撃後は後ろへ!」
 クリストファー、クリスティーが、遠距離攻撃を行う者の前に出て、盾になりつつ窓からキメラを狙っていく。
「この中には入れさせない!」
 クリスティーが近づくキメラの顔面にランスを打ち込む。堪らずキメラは上昇する。
 クリストファーはランスを下方から繰り出し、キメラの内臓を狙う。
 皮膚は硬いようだが、腹の部分は若干脆く、クリストファーの一撃はキメラの腹を大きく引き裂き、血が屋上に降り注いでいった。
「俺の名は樹月刀真。貴様は?」
 刀真は屋上に下りたキメラと戦いながら、上空の男に問う。
「ヒグザ・コルスディ」
 男が低い声で答えた。
「ソフィアの、仲間……?」
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が塔の中から、声を発する。答えはない。
「何故、ここへ? そんな少ない数で」
 キメラの数は8。ヒグザ自身が強い力を持っていたとしても、援軍としては少なすぎる。
「何故、戦う必要がある? 理想かなにか、ある?」
 月夜は身を乗り出して問いかけ続ける。
「恐怖を知らしめるために。数は少なくとも十分だ。我等の目的はヴァイシャリーの制圧」
 男の声は笑みを含んでいた。
「お前は誰かと契約しているのか?」
 クリストファーもキメラを牽制しながらヒグザに問いかける。
「弱点になるような存在は不要だ」
 ヒグザはそう答えて、キメラに攻撃指示を出していく。
「月夜!」
 刀真の合図を受けて、月夜はハンドガンでヒグザを撃った。
 銃弾は空飛艇に当たる。防弾加工がしてあるらしく、この距離では撃ち落すことが出来ない。
「そんなこと……許しません」
 陽太もまた、銃をヒグザに向けて撃っていく。
 ヒグザが2人の銃撃に気を取られたその隙に、刀真がバスタードソードを金剛力で投げつける。
 剣はヒグザの肩を掠める。
「ここはもういい。下に行け」
 キメラに指示を出し、ギラリと光る目をこちらに向けた後、ヒグザは姿を消した。
 テレポートだ。
「キメラが宮殿前に下りています。補佐班が危ない!」
 陽太はキメラの首を狙う。
 生還して蒼空学園に戻り、想い人に再会できるように。
 自分だけではなく、仲間全員が大切な人とまた会えるように。
 恐怖を押し殺し、覚悟を決めて必死に敵を撃っていく。
 キメラ8匹のうち、ダメージを与えていた4匹とすでに倒した1匹が屋上に残る。
「お前等の相手はこっちだ!」
 アストライトがラスターブーメランを放ち、キメラの頭を攻撃する。
 リカインが跳び、ドラゴンアーツでそのキメラを屋上に叩き付け、刀真が光条兵器で、止めを刺す。
「テレポートか……」
 クリストファーは射撃メンバーを守りながら考える。
 ソフィア、ヒグザ、2人のテレポートの使い手を相手にするとなるとかなり厄介だ。
(ヘルのように連続でできるのか? できると脅威だが、できるつもりでいたほうがいいだろう)
 見たことのない場所へのテレポートは不可能と思われるが、彼らはその力を使い、この内部に幾度となく入り込んだこともあるだろう。
 屋上のキメラは自分達だけで十分片付けられる。
 非常階段を下りて北方面に駆けつけるか、ジュリオ解放に向ったメンバーの援護の為に宮殿に留まり、光条兵器使いの殲滅に務めるか……どこも手が足りない。それぞれ、先を考えながら戦っていく。

「大丈夫よ、本部の人達がなんとかしてくれる。任務をちゃんと全うして待ちましょう!」
 補佐班の班長、ティリア・イリアーノは、そう言い班員である白百合団員達を励ましていく。
 補佐班は現在、宮殿の庭から宮殿から出てくる光条兵器使いの狙撃を担当している。
 剣の花嫁と変わらない人のような彼らを殺すことに抵抗のある団員も多く、足を狙って倒すことで、宝物庫や別邸の方には行かせないという手段をとっている。
 だた、倒しても彼らは意識ある限り攻撃を続けるため、時間が経ち、外へと出てくる敵の数が増えていくほどに、苦しい状況となっていく。
 そんな中に、上空に現れたキメラの半数が、彼女達の元に下りてきた――。
「頭を攻撃して!」
 ティリアの指示が飛ぶ。
 補佐班のメンバーはキメラの頭に攻撃をしていく。
 その間に、光条兵器使い達が彼女達の元へと走りこみ、光条兵器を打ち込んでいく。
 悲鳴が上がり、少女達が倒れていく。
 ティリアは盾を構えて、防御体勢と取り、前面へと出た。
 顔を打たれ、奇声を上げながら狂ったように暴れまわるキメラの喉に、槍を突き刺した。
 光条兵器使いが彼女達の横に回りこみ、光の矢を打ち出していく。
 倒れていた男達もまた、身体を引き摺りながら攻撃を放つ。
 通信を行う余裕もなく、ティリアは槍を振るいキメラを振り払っていく。
 白百合団員達は互いを庇いあうように身を寄せて、敵に突きを繰り出していく。
 キメラが背後に回りこみ、彼女達の背を大きく切り裂いたその時。
「皆、別邸まで下がって!」
 大声を上げて、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が空飛艇で駆けつける。
「これ使って!」
 空飛艇から降りると、美羽はベルフラマントで姿を隠しながら、バーストダッシュで攻撃を掻い潜り、敵の只中に入っていく。
 手加減をするつもりはなかった。
「伏せて!」
 声を上げた後、クロスファイアを放って、倒れている光条兵器使い達を一掃する。
「頑張って、下がって!」
 傷だらけのティリアに美羽はそう声をかけて、ブライトマシンガンで敵に攻撃を加えていく。
 正面から、そして上空、左右からキメラが美羽を取り囲むように迫ってくる。
「行かせないっ!」
 美羽はクロスファイアを連続で放ち、キメラを退けていく。
「救援お願いします。いえ……出来れば撤退のご指示を!」
 苦しげな声で、ティリアが指揮官に連絡を入れる。
 まだ、仲間がいるから室内に火を放つわけにはいかないが、宮殿前の敵は――全て燃やし尽くす! そんな気迫を込めて、美羽は自分が傷つくことを厭わず、ただ攻撃を続けていく。
「美羽さん……っ」
 白百合団員達が、傷ついていく美羽に、ヒールをかける。
「私は大丈夫だから、早く避難して!」
 言いながら、美羽は上空から迫り来るキメラの頭部を撃ち抜き、現れた光条兵器使いにクロスファイアを放ち火達磨にした。