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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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第2章 街と友達と

 百合園女学院の近くの喫茶店で葛葉 翔(くずのは・しょう)はパートナー達の帰りを待っていた。
(一体なんで、こんなことに……?)
 街の中が騒がしく、落ち着いて茶を楽しんでいられない状況だった。
 離宮に向った2人を案じながら、翔は待ち続ける。

「治療お願いね」
 怪我人を病院に誘導した後、プレナ・アップルトン(ぷれな・あっぷるとん)は再び街へと飛び出した。
 自分を庇って怪我をした人がいた。
 辛い思いをしたのに、校長は病院の中で皆の中心となり頑張っていて。
 命に関わるほどの怪我をしたのに、怪我を押して会議に出席をする先輩達の姿に励まされて。
 自分は何をしてきたのだろうと疑問に思い、悩んでいるだけでやるべきコトを先送りしてきたことに気付いた。
 だから、今は。
 ただがむしゃらに、根性出して動いてみせる!
 そう強い意思を持って、プレナは街を駆け回っていた。
 ディテクトエビルで常に周囲に警戒を払い、光条兵器もいつでも使えるように、手に持っておく。
「マリクー! マリクどこー!?」
 20代くらいの女性が、道路で大声を上げている。
「どうしました? ここは危険ですよ。キメラが近くまで来ています」
 すぐに駆け寄って、プレナは声をかけた。
「子供が家の外に出てしまったみたいなの。青い服を着た4歳くらいの男の子、見ませんでしたか?」
「見てないけど、病院や救護所の方に避難しているかも。お姉さんも病院へ急ごう。情報も集まっているはずだから」
 不安気に周囲を見回している女性の手をプレナは強引に掴んで引っ張り、病院へと連れて行く。
「子供見付かったらプレナの携帯に電話下さい。プレナはお姉さんの家の辺り、探してきます!」
「うん、お願いね」
 プレナは静香に簡単に事情を話して女性を預けると、子供の名前を呼びながら来た道を戻りだす。

「ママ、ママ、ママー! えーん、あーん」
 小さな子供が大声で泣いている。
 その声に誘われるかのように、道路で暴れていたキメラが子供の方へと駆けてくる。
「早く……ママのところ……行くですぅ!」
 駆けつけた如月 日奈々(きさらぎ・ひなな)が子供を覆うように庇う。
「ママも直ぐ避難所に連れていくから。先に行っててね!」
 冬蔦 千百合(ふゆつた・ちゆり)はそう言って、日奈々と子供の前に立ち、キメラの攻撃をタワーシールドで受けた。
「大丈夫、ですぅ……」
 日奈々は擦りむいているその子にヒールをかけてあげる。
「もう1匹……来ますぅ」
 超感覚で感じ取り、日奈々が声を上げる。
 運悪く、もう1匹キメラがこちらに目をつけて、駆けてくる。
「……っ!」
 千百合は大剣型の光条兵器を、キメラに振り下ろす。
 キメラの体が大きく割かれるが、一撃では仕留めることが出来ない。
 そうしている間に、もう1匹が接近する。
「ここは私にまかせて日奈々はその子を連れて、早く逃げてっ!!」
「千百合ちゃん……っ」
 日奈々は泣き出しそうな声を上げる。
 一緒に残ってサポートしたいのだけれど、子供どころか自分のことも守れるか……千百合の足手まといにならずにいられるかというと、無理であることは明白で。
「大丈夫だから!」
 千百合はキメラの攻撃で傷つきながらも、何度も光条兵器を振り下ろしていく。
 千百合は以前、別の事件で日奈々を守れなかったことがあった。
 その時のような悔しい思いは絶対にしたくなくて。
 歯を食いしばり、盾でキメラの鋭い攻撃を受け、剣を必死に振り下ろし続ける。
「ありが……とう……私も、みんなのために、精一杯頑張りますぅ」
 涙を浮かべながら、日奈々は子供を連れて救護班のいる病院へと急ぐ。
「あーん、あーん」
「大丈夫ですぅ、よしよしですぅ」
 泣き続ける子供を抱え上げて、日奈々は走っていく。

「マリクちゃん、マリクちゃーん、ママが探してるよ〜!」
 走り回っていたプレナは、子供を抱えて走る日奈々を見つけた。
「ママ、ママどこ!?」
 日奈々の子供が声を上げて振り向く。
「マリクちゃん……ですかぁ?」
 日奈々の問いに、子供が首を縦に振る。
「よかった、お母さんが病院で待ってるよ」
 駆け寄って、プレナがそう言うと、子供はまた強く頷いて日奈々の腕の中から下りて、自分で歩き出す。
「プレナちゃん、キメラが……あっち、に……。千百合ちゃんが、1人で戦ってますぅ」
 日奈々が路地の向うを指差す。
「分かった。加勢に行くね! マリクちゃんのことお願い」
「はい……」
 日奈々は子供を1人にしないよう、ぎゅっと手を握りしめて一緒に病院の方へ。
 プレナは路地を抜けて、千百合の方へと走る。

「日奈々達の方へは行かせないっ!」
 千百合は健闘していたが、攻撃を盾で防ぎきれず、体は次第に深く傷ついていった。
「いたわ」
「2匹いるぞ!」
 そこに獣系キメラの対処に当たっていたユーナ・キャンベル(ゆーな・きゃんべる)シンシア・ハーレック(しんしあ・はーれっく)が空飛ぶ箒で駆けつけた。
「大丈夫。ヒョウ型の方をお願い!」
 言って、千百合は防御を捨てて最初から相手にしていたキメラの方に、光条兵器を打ち下ろした。首を切り落とし、更に、胸に剣を突き刺す。
「グギィギャーギャー!」
 キメラにはまだ1つ頭が残っており、奇声を上げながら千百合に血を滴らせながら爪を振り下ろす。
「危ないっ」
 路地から駆けつけたプレナがロングボウで、キメラの腕を射抜いた。
「そこまでよ!」
 千百合はもう一つの首をも、光条兵器で切り落とす。その一撃で、1匹目のキメラは完全に動かなくなった。
「大人しくしなさい!」
 ユーナは脇差しを両手に持ち、素早く動き回るヒョウに似たキメラに斬り込んでいく。
「窓から顔を出さないで! 子供は絶対外に出したらだめだよ!」
 シンシアは2階の窓から顔を出している一般人に声をかけていく。
「足を斬らせてもらうわ」
 ユーナはキメラが跳んだ瞬間に、脇差しで左右から斬りつけて、足を切り裂いた。
「動きを止める!」
 シンシアが氷術を発動し、キメラの足を凍らせる。
 負傷と凍結により、キメラは殆ど動けない。
「悪いけど、これ以上人々を傷つけさせるわけにはいかない!」
 ユーナーは脇差しをキメラの体に何度も突き立てて、息の根を止める。
「大丈夫!?」
 プレナは駆け寄って、千百合にヒールをかける。
「うん。ありがと」
 千百合はほっと息をついて、プレナに微笑みを見せた。
「よかった」
 プレナも千百合に微笑み返す。
 友達を救うことが出来た。母と子も再開をして微笑み合っているだろう。
 ユーナとシンシアとも顔を合わせて、一瞬だけ微笑み合う。
「まだ避難できてない人沢山いるみたい。プレナ行くね」
「うん」
「わたくし達は空から見回るわ」
「皆も気をつけろよな!」
 そして、皆次の場所へと移動をする。