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【ろくりんピック】流れるプールで水球勝負!?

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【ろくりんピック】流れるプールで水球勝負!?

リアクション

 ☆4・超高速でワクワクせよ☆




 現在得点は1対1。
 思ったほど伸びていない。それぞれのゴールキーパーが優秀すぎたことと、途中の作戦で多くの怪我人がでたことが理由だろう。
 皆が水中にいたために良く分からなかったが、タイムアウトで陸に上がってみると、両チームの選手には、銃がかすめた傷や刀痕が数多くあり、水着もあちこちが切り裂かれていた。
「ルール無用とはいえ、このままエスカレートすると死人が出かねません」
 東チームのリーダー、フィリップのメガネの奥の瞳が曇っている。
「ここはしばし停戦をお願いしたい」
 フィリップの申し出に、西チームリーダー、ティファニーは大きく首を振る。
「無理デース、まだたくさん時間あるヨ」
「いや、停戦といっても…」
 ティファニーは、怪我人を休ませ、メンバーの入れ替えを提案した。
「その・・・意図を汲んで・・・」
 というわけで、タイムアウトの後、メンバーは大幅に変わった。新しくプールに入るのは、下記メンバー。




真口 悠希(まぐち・ゆき) ゴールキーパー
神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす) 
ミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)
レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)
ミア・マハ(みあ・まは)
ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)
ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)


西
守山 彩(もりやま・あや)
オハン・クルフーア(おはん・くるふーあ)
レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー) 
ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす) 
天貴 彩羽(あまむち・あやは) 
天貴 彩華(あまむち・あやか)
ハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)


 比較的、戦闘色の薄いメンバーをお互いに指名して選んだ。が、決定までに要した時間はほんの数秒、取りこぼしや勘違いもあるかもしれない。


 西チーム影野 陽太(かげの・ようた)は、これまでの選手の動きをみて、普通の水球とは違い、流れるプールでは連係プレイが難しいこと、体力の消耗が激しいことを見た。人数が多く、ヒールなどの回復スキルを多く持つ西チームが勝つためには…
「ねえ、ティファニー」
 陽太は、自分が考えた作戦を話し始めた。
「戦力温存カウンター大作戦というのを考えたんだ」
 東チームが参戦中の選手の体力及び余剰人員が疲弊しきってかつ反撃が間に合うギリギリの絶妙タイミングを見極めて(「ナゾ究明」「博識」「防衛計画」「財産計画」「記憶術」の思考系スキル総動員して、ついでに「セルフモニタリング」で冷静さを保って)温存していた自チーム戦力を一気に投入(&必殺技発動)して逆転を図る作戦だ。
「グレイト!」
 ティファニーは目を輝かせている。



 ゲームはスタートした先ほどまで、時折、赤茶けた水が混じっていたプールは水の洗浄も終わり、もとの涼しげな様相を取り戻している。
 凍った、スライダー入り口も回復している。回復していないのは、先発で戦ったメンバーの心だった。
「まだ戦い足りない!」
「再び、選手として出してくれ!」
 怪我が回復した選手たちはチームリーダーに詰め寄っている。
 フィリップは、殆ど無傷だったアルコリアに声を掛けた。
「お話があるんです」


 そんななか、プールに入る選手たちは、穏やかにキャキャとお互いの水着などをさわりあっている。
 有栖「ミルフィ、、ちょっと、大胆かも、、(赤面)」
 可愛い百合園の水着にテンション高めの有栖は、パートナー、ミルフィの大胆なホルターネックビキニの水着の紐を引っ張って遊んでいる。
「し、仕方がなかったのですわ、百合園水着には、わたくしに合う胸のサイズのものがなくて、窮屈だったんですもの、、有栖お嬢様、よしてください、水着は外れたら大変ですわ」
「なんか、俺、場違いじゃないか」
 ラルク・クローディスは、女子校のノリについていけず、ひたすら、戦いに備え、腹筋を鍛えている。
 ゴールキーパーは、合園女学院の真口 悠希に決まった。
「大丈夫です!ボクが来た以上は…そう何度も抜かせませんから!」
 頼もしく胸を叩く。

 ジュダイス人形に横たわる実況の翡翠もやっと流れになれたのか、溌剌と声をあげる。
「いよいよゲームが再スタートしました。まずボールを取ったのは、蒼空学園の守山 彩選手です」
「がんがん行くよー!」
 彩はボールを手に流れに身を任せる。急流のカーブは思っていたよりもスピードが速い。
 いつのまにか、隣には、神楽坂 有栖が並んでいる。
「アターック!!」
 それほど運動神経のよいわけでない有栖だが、可愛い百合園の水着を着て気持ちも恋う様ボールに向かって、ジャンプした、が、ボールを持つ彩を通り越してしまう。
「あれ、彩選手、なんでそんなにゆっくりっ?」
 有栖はそのまま流れていった。
 有栖「はわわっ、待ってて下さいーまだ、流れないでー」
 懸命にボールに戻ろうとするが、当然、逆走は出来ない。
「ちょっ、お嬢様〜〜!?」
 懸命にミルフィが追いかける。

「あれ、選手が足りないんじゃないか?」
 急に声をあげたのは、山葉涼司だ。
 先ほどとは打って変わって、キャっキャっしているプール内の様子に、山葉涼司はつい、言ってしまった。
「選手、6人にしかいないぞ、一人足りないと不利だぜ」
 確かに、ティファニーが数えても選手は、6人しかいない。
「よし、俺が助っ人の実力を見せてやる!」

「なんで、あいつが入るんだ!」
 プール反対側のベンチから、その様子を見ていた山葉聡が騒いでいる。
「なんだって、チーム人数が足りない?そんなのこっちも・・・やった、こっちも6人だ!」
 キリッと目線をフィリップに向ける山葉聡。
「助っ人としての実力は俺が上だ!」

 さて、消えた二人は、共に水の底にいた。
 レキ・フォートアウフは、『光学迷彩』で姿を隠し水中で何か仕掛けようとする人が居ないか、コース内を確認していた。
 水面よりも、水底のほうが流れの影響を受けにくい。しかも深さは3メートル。水面は常に流れのために渦がまいていて、底の様子までは見えない。
「あ、いた!」
 レキが発見したのは、人ではなく、盾のようなものだ。上に女の子を載せて、少しづつ前に進んでいる。

「彩殿、たしかに。流れの速いプールでは、早く泳ぐよりゆっくり動いたほうが、ボールを維持しやすいであろうよ」
 機晶姫、ならぬ、機晶騎士オハン・クルフーア(おはん・くるふーあ)は、彩の作戦を聞いて、すぐに手を貸すと約束した。
「そういえば、オーちゃんって防水加工してあるのかしら? 錆止め塗っておいた方が良かったんじゃない?」
 頭上で、彩がオハンに話しかける。
 彩は、今、オハンを踏み台に立っている。人と人となら肩車といった図だが、一人が盾型なので、踏み台といってもよいだろう。
「彩殿、もうすぐスライダーにつく、どうなさる?」
 二つ返事で同意したオハンだが、内心は違う。作戦には随分と無理があるように思うのだが……彩殿が言うからには協力せねばなるまい。しかし・・・

 そのとき、彩の身体がぐらっと揺れた。
 姿を消していたレキが、オハンに気がつき、その身体に体当たりをしたのだ。
 水中に投げ出される彩、手からボールがこぼれる。
 こぼれたボール、彩、レキが、そのままウオータースライダーに吸い込まれる。
「彩殿、無茶をしてはなりませんぞ」
 オハンは、声をあげるが、身体の重い機晶騎士が浮上することはなかった。
 その後、オハンは、彩に救出されるまで、長いときを水中で過ごすこととなる。
「キャー、楽しい!!」
 オハンと別れた彩は一瞬ゲームを忘れたかのように、スライダー内を滑り落ちる。
 そのまま勢いあまってゴールポストを通り過ぎ、流れるプールの醍醐味を堪能したとき、彩はオハンがいないことに気がついた。

 教導団、ハインリヒ・ヴェーゼルは、このメンバーの中では異質のはずだが、メンバーに溶けこんで見える。金団長を呼んだ以上、この試合には是非とも勝つ必要がある。この時間帯に、教導団の選手が一人もいないのでは、金団長に見せる顔がない。ハインリヒは攻撃型の選手ではない。防御が最大の攻撃だと思っている。
 彼は、牙を隠した狼のように、そっと相手チーム、東ゴールの側でたゆたっている。

 スライダー出口にいるハインリヒの前に最初に流れてきたのは、敵チームの有栖とミルフィだ。すぐさま、暫し間があってボールと彩、レキが落ちてきた。

 流れてきたボールに向かい泳ぐハインリヒ、しかし、そのボールはハインリヒのもとではなく、有栖に吸い寄せられた。
「えっ?、、あうっ」
 ボールが当たり、再度、流される有栖。
「お嬢様っ、しっかりして下さいまし、、!」
 ボールは、ミルフィの背後を流れる。ハインリヒが手を伸ばす。
 お約束だが。
 ハインリヒの手は、心ならずもミルフィの首筋に触れてしまった。
 流れるボール。そこには豊かなカップのビキニが纏わりついている。
「すまない、わざとじゃないんだ」
 ハインリヒ、平謝りする。
 が、当のミルフィは気がついていないようだ。有栖を抱えることに精一杯だ。
「、、ミルフィ、たいへんっ!!」
 灼熱の太陽の下、プールは本当に気持ちいい。有栖は本当はずっと水の中にいたかったのだが。
 不測の事態だ。
 名残惜しそうに、交代を求めた。

 ボールは既にゴール前にはない。
 どんどん流れている。

 ボールが流れてくるのを待ちきれず、逆走して泳ぐものがいる。流れの激しさから不可能と思われた逆走にチャレンジしているのは、一人はラルク・クローディス。日々、身体を鍛えるラルクだ。
「俺には、スタミナとパワーはあるはず!あると思いてぇから、それはもうめっちゃ気合いいれていくぜ!!」
 水流に逆らってクロールでボールを目指す。
 もう一人は、天貴 彩羽。天御柱学院に通う小柄な少女だ。対格差のある二人が並んで、ボールを目指す。
「その身体じゃ、俺には勝てないぜ!」
 ラルクがクロールで押し寄せる水流と戦う。
 当然というか、か細い彩羽は、水流に押し流される。
 しかし。
 ラルク、泳ぎに夢中になるあまり、ボールの位置を把握していなかった。
 ボールはラルクの横を軽やかにスピードを上げて流れゆき、彩羽の腕の中にスポッと入った。
(いくわよ、彩華!)
(わかったよ〜、彩羽〜、えぇ〜い!)
 彩羽は、逆走を諦めて、水の流れにのりゴールを目指す。しかし、ゴールの前には自分たち西のゴールとウオータースライダーがある。ここでボールを取られては相手方の有利だ。
「彩羽〜がんばろぉ〜」
 強化人間の双子の姉、彩華はどこまでも能天気だ。
「あははっ、なんだか楽しいね〜」
 試合を忘れて、流れるプールを純粋に楽しんでいる。
 西チームゴール前のウオータースライダーまでは、あっという間だった。妨害する選手もいない。
 二人で、ボールをパスしつつ、入り口についたとき、殺気を感じる。
 水中から、ラルクが現れた。
「すまねぇがボールは奪わせてもらうぜ!」
 ボールを横から掻っ攫うと、そのままスラーダー内に消える。
 西ゴールキーパーを務めているのは、またも山葉聡だ。聡はまだ流れるプールを回っていない。本当は、ゴールキーパー以外がよかったのだが、気がついたらこのポジションを押し付けられていた。
 目前の、スライダー出口から、ラルクの巨体が現れる。
「ちきしょー、ここは止めてやる!」
 聡が身構えたとき、スライダーから、大きな、たゆんたゆん、動く巨乳が…!
 彩羽だ。
 彩羽は、水着の上からチームユニフォームを着ている。スライダー内でユニフォームがめくりあげられ、身体に張り付き、ふつうの水着よりもエロチックになっている。水面に浮かぶ、たゆんたゆん。
「む、どこみてるのよ」
 彩羽が、顔を赤らめる。
「隙あり!」
 ラルクが再び、水流に逆走しながら、ゴールまで泳ぎこむ。
「うおりゃあああ!!これでもくらえ!!」
 渾身の力を込めたボールが、ゴールネットを揺らした。
 なんというか、山葉どもは別競技でもこの胸にやられるのだ。学習してもらいたいものである。



 大きく歓声が上がる。
「うおりゃあああ!!」
 勝利の雄たけびを上げるラルク!
 その瞬間、何かが切れる音がする。激しい逆走に耐えられなかったのは、ラルクの身体ではなく、水着の紐だった。
 水流に、ラルクの水着が流れていく。
「よっしゃ!もう一点とるぜ!」
 ラルクは、水着がないことなど気にしていないようだが、キャプテンは違ったのだろう、しばらくしてラルクの姿はプール内から消えていた。


 ただいまの得点、西1点東2点。





 思わぬ事態で体力を消費したハインリヒは、交代前に、ディフェンスシフトを使用して、味方全員の防御力を上昇させていた。今、プール内にいるのは、ハインリヒのパートナークリストバル ヴァリア(くりすとばる・う゛ぁりあ)だ。
 なんとなく、この時間、西チームはおっぱいに負けている。
 クリストバルは女性であるし、既に長い時間を生きている魔女だ。たいていのことでは驚かない。
 意気消沈する聡からボールを受けとったクリストバルは、まず、周囲の水を凍らせた。追っ手を防ぎ、水流を弱める。
 相手チームのゴールはちょうど反対側だ。

 ベンチには、レキのパートナー、ミア・マハ(みあ・まは)がいる。
 公式水着の上にウインドブレーカーを羽織って、ベンチから双眼鏡で全体を見回し、競技を見ていたミアは、クリストバルが水流の少し先で、プール側面に捕まっているレキを標的としていることに気がついた。
「レキ、逃げるのじゃ」
 ミアが叫ぶ。
「え、駄目だよ、勝ちたいもん、全力でいくよ」
 レキがボールを持って通り過ぎようとするクリストバルに向かってゆく。
 クリストバルは、再び、氷術をレキに向ける。
 そのとき、水中から、山葉涼司が顔を出した。レキを庇うように両手を広げる。
「男らしいですわ」
 にっこり笑うクリストバル、涼司とレキを残して水の流れにのっていく。
 涼司の身体が氷で閉ざされる。
「大丈夫、この暑さだ、すぐ溶ける」
「そんな…」
 レキが、涼司の身体を支える。
「世話が焼けるのお」
 メガネが濡れるのを嫌がって、ベンチにいたミアがプール脇に駆け寄り、火術で涼司を覆う氷を溶かした。
 急に自由になる涼司。
 かっこよく開いた両手が、そのまま…意思に反して…レキのぼんっ、きゅっ、ばーん!のぼんっを掴む。
 レキの、力をこめた、グーが涼司の頬に命中した。
「結局は、こうなるのだのぅ」
 ミアが気絶寸前の涼司をプールから引き出して呟いた。


 クリストバルは、ゴール前まで来ていた。
 東のゴールキーパーは、真口 悠希だ。
「一対一の勝負ですわ」
 クリストバルの直球がゴールを狙う。
 この時、悠希は、愛し慕っている百合園女学院の校長、静香のことを思い出していた。
(静香さま…)
 走馬灯のように、静香の言葉が次から次へと心に蘇る。その言葉は悠希の心に深く突き刺さって痛かったけれど…
「だけど、逃げちゃいけないんだ。痛い事も、厳しい事も…」
 愛することを知ったことで、届かない想いを抱えることで、悠希は成長した。
(静香さま…ボクは…)
「ボク…全てを、受け止めますっ!」
 悠希は持てる力を全て使用して、クリストバルが投げるボールに対峙する。クリストバルは半周を独走してここまで来た。既に体力の消耗も激しい。それでも勝負を挑んでくる。
「ボクも逃げちゃいけないっ!」
 金剛力のパワーと超感覚のスピードを加え、ボールを静香さまだと思って、恐れずにボールに向かって飛び込んでいく悠希。
 ブロックされたボールは、そのまま宙に舞った。
「残念!途中体力を消費しすぎたわ」
 余力が僅かなクリストバルは、そのままプールを退き、天津 亜衣(あまつ・あい)とチェンジする。
 亜衣は、交代する直前に、回復呪文で、傷付いたクリストバル治療した。
「この水流だもの、きっと他にも体力消耗で困っている人がいるはず。あたし、助けてくるね」
 明るく手を振って、亜衣は皆に合流する。
 西チームの策士・レティシア・ブルーウォーターが仕掛けた罠が活躍するのは、この後だ。




 この時、プール内の選手はほぼ入れ替わっている。
 今、プールにいる新しいメンバーは、





ルイ・フリード(るい・ふりーど)
クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと) 
雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)
ブレイク・クォーツ(ぶれいく・くぉーつ)
鬼崎 朔(きざき・さく)
マナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)
童話 スノーマン(どうわ・すのーまん)
赤羽 美央(あかばね・みお)は、キーパーとして悠希と替わってはいる予定だ。

西
樹月 刀真(きづき・とうま) 
漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)
橘 恭司(たちばな・きょうじ)
桐島 麗子(きりしま・れいこ)



 東チームの新メンバー6名には、東シャンバラを勝利に導く以外にも、ろくりんピックに参加した隠れた目的があった。
 彼らが建国した雪だるま王国の威勢を世に知らしめることである。