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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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陸路 1
出発
  
 
「皆さん。コンロン遠征を総指揮いたします騎凛セイカ(きりん・せいか)です。
 今回の遠征自体が、第四師団の任務となっています。コンロン到着までは、私は陸路行軍を統括いたします。
 
 陸路には、新星こと【ノイエ・シュテルン】【騎狼部隊】【龍雷連隊】の三軍が従軍します」
 兵数はそれぞれ、400、100、100となっている。他、士官が率いる兵や各々のパートナーら含め総勢800を越えるまさに行軍となる。
 これだけの規模になったのは、飛空艇では全てを運びきれないことがあるが、この陸路ルートはコンロンでのとくに初期的な活動においては補給ルートしても確保しておく必要性が高い。各都市はなるべく刺激を与えないよう通過する予定だが、補給における幾つかのポイントやそれに警備隊がすでに全滅しているという国境等には兵を配置していく必要もあるだろう。無論、この規模の行軍になる以上、各都市については交渉もしくは何らかの対策を前提とした行軍となった。
「ヴァイシャリーについては、軍師マリー・ランカスターが交渉に赴いています。私はそちらの方に、さんと一緒に向かいますので、少しの間ここを空けます。そこで、イルミンスールから協力を願い出ている方たちとも合流する予定になっています。
 皆さんはこれから準備や、進軍速度もありますしヴァイシャリー到着まで日数もかかるかと思います。
 ノイエの400を率いる昴 コウジ(すばる・こうじ)を、騎凛セイカ不在時の侍大将とし、また、龍雷・騎狼部隊それぞれの松平 岩造(まつだいら・がんぞう)デゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)を武将とします。
 士官である比島、金住、大岡ら三少尉がコンロンに無事入るまでよく軍を統括してくださるよう」
「お、おおお」
 昴コウジは第四師団の旗を受け取って身震いした。
「こ、この昴 コウジ、だ、第四師団の兵を必ず無事現地まで率いるであります……!」
 ノイエ・シュテルンは、隊長のクレーメック・ジーベックは空路、隊員であり第一師団中尉の香取翔子は現地に赴いているのだ。
「龍雷も、各員それぞれの場所に派遣している」
 松平は、ニッと微笑んだ。
「のんびりいこうかと思ったが、そういうことならまァ、適度に頑張るか」
 騎狼の手綱を引きつつ、デゼル。
 
「東シャンバラの領内で心配だとしたら、パラ実の生徒でしょうか」
 比島 真紀(ひしま・まき)少尉は中軍の位置につく。
「そうでありますね。特にキマクを通る際は、教導団に不満を持つ勢力が多いと思われますので、襲撃を十分警戒する必要がありましょう」
 金住 健勝(かなずみ・けんしょう)は、南部平定においては懲罰人事を自ら願い出て斥候を行った経験があるが、第三師団の実績で少尉になっている者である。今回も斥候を買って出たが、先行部隊を率いるという形になる。
「俺も、そう思う。キマクからコンロンにかけてが、いちばん襲撃を受けやすいと考えている。
 川岸付近の偵察を欠かさず、いつ襲われてもいいようにしたい」
 大岡 永谷(おおおか・とと)も同じく第三師団にて少尉。第四師団では南部の戦いで輸送隊を預かった。今回も陸路、輜重を中心に警備・護衛を統括する。今回は、さきの騎狼部隊の100と、大岡少尉の輸送隊50が騎兵となっている。

「しかし、できることなら彼らとも戦闘は避けたいところですね。パラ実の生徒と言えども、無駄な戦闘をしなくて済むならいいでしょうし」
 比島は言い、大岡、金住も頷く。
 このように、三少尉の心配は何れもキマクにあったが、それについてすでにノイエは手を打つべく策士の二人を当地に向かわせていたのである。これについては、後に語られる。
「騎凛隊長。そうだ、これを」
「永谷さん?」
 大岡は、騎凛にお守りを手渡した。「禁猟区のお守りです。どうかお気を付けて」
「ありがとうございます! みっつめのお守りです」
 騎凛の護衛(お守り?)には、久多 隆光(くた・たかみつ)、メイド隊を率いるメイドナイトのユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)。「……お守りじゃなく、今回は騎凛の補佐がきちんとできるようなりたいぜ」「メイド隊長の出立が遅れているようですから、このメイドナイトのユウと武装メイド隊がしっかり、騎凛教官を支えてみせます」
「では、私たちはヴァイシャリーに向かいましょうか」
「騎凛隊長、行ってらっしゃい」「お気を付けてであります」三少尉ら見送る。
「ええ、楽しんできます(?)」
「久多、しっかり騎凛教官をお守りするのだ」松平は久多の肩をポンと叩いてニッと微笑んだ。
「……あ、ああ」
「あれ、あいつらも行くのか?」
 最後尾にはプリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)が並んで歩いていた。
「ちょっとした旅行気分〜♪」
「さて。参りましょうか。前回は本隊からはぐれてえらいことになったからな。今回ははぐれないようしなければ!」「はぐれないようにって、それってフラグじゃ……」博士の魔道書イル・プリンチペ(いる・ぷりんちぺ)はいきなりツッコミを入れる。ラテンダンスを踊りながら、ハイテンションのロドリーゴ・ボルジア(ろどりーご・ぼるじあ)、カメラを持ちながらそのロドリーゴや博士を叱りつけるアマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)
 大丈夫なのか……?
「大丈夫。
 団長にスカウトされた魏 恵琳(うぇい・へりむ)さんも一緒ですから。恵琳さん今回はよろしくお願いします」
「はい。麒麟師団長」
 師団長について第四師団のやり方を学ぼうと思う恵琳。幼少より帝王学を叩きこまれた厳格な軍人である。「でもそこは郷に従え、のつもりなのだけど、……大丈夫かしら。この遠征で第四師団のやり方を拝見させて頂くとしましょう。……」
 
 こうして騎凛たちはヴァイシャリーへ。陸路行軍は準備のあと、ヒラニプラを出てまずはシャンバラ大荒野を目指す。