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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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 大型艦に戻って、空気が堅苦しい艦長室から出て、外を見てみよう。
「ええっと。龍雷の旗は……この辺でしょうかっ?」
 改めて、教導団員になり【龍雷連隊】所属の不動 煙(ふどう・けむい)。新星の旗がずらり左右に立ち並んでいる旗艦の前へ前へ行って、第四師団の旗をちょっと横にずらして……っと、船首の辺りに龍雷の旗をづぶりと突き刺した。
「それと松平隊長から渡されたこの岩の旗は、この新星の旗をちょっと横にずらして……」
「……何してるの?」
 ノイエの若い士官候補生アクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)だ。
「い、いえ、何でもないのですよ。もしかして新星の殿方? どうして甲板へ?」
 アクィラはおへそにちょっとどきどきした。
「う、うん……」
 新星は、新星隊員控え室が用意されている待遇だったが、マーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)(常に策謀を巡らせている)とジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)(仕事前で延々と沈黙している)がずっと無言無表情でベンチにじーっと座っているので、ちょっと、恐かった。
「な、何でもないんだ」
 アクィラはそっと風に吹かれた。……その背中を、パートナーのクリスティーナアカリパオラたちが眺める。「……」「……」「……慰めてあげなさいよ。クリスティーナ」「はわっ。アクィラさん……(アクィラさんもその内、ジーベックさんやクロッシュナーさんやジェイコブさんや青さんや昴さんみたいに、なれますよぉ。……でも、今のままのアクィラさんでいてほしいとも……)」「……」「……複雑なようね。恋かしら? クリスティーナ」「は、はわわっ」
「……彼も、煙(けむい)と同じ、これから成長していく隊員さんなんですね」煙も強風にはためく龍雷の旗を見ながら、思う。そんな煙のところにも、元気なパートナーたちがやってきた。「煙にぃ!」「煙アルー!」「ふふっ、煙」
 不動 冥利(ふどう・みょうり)古代禁断 死者の書(こだいきんだん・ししゃのしょ)古代禁断 復活の書(こだいきんだん・ふっかつのしょ)たちだ。
「しかしまた遠い所に行くのですねぇ、仕方ないのでしょうけど」
 風を感じながら、煙。
「冥利頑張るよ! どこに行っても」
「遠い所に行くけど治安を良くしないとどうしようもないネ!」
「ふむ、遠い所近い所は特に関係ありません。用は功績をあげられるかどうかです」
 煙は、皆の方を向いて優しく笑む。
「まぁそうですね、頑張りましょうか」
 それから少しだけ申し訳なさそうに笑って、
「しかし皆さんのマスターなのにすみませんね下っ端で」
「下っ端でもいいんじゃないの? 頑張れば身分何て関係ないよ!」
「下っ端でも頑張ればどうにでもなるヨ、頑張ろうネ」
「下っ端のままってのもちょっと気にかかりますが、話し合ったところで身分があがるわけでもないですし、とりあえずは今の事を大事にしましょう」
 そんなに下っ端下っ端と……
「とりあえず注意点は怪我をしない事ですね、誰かが怪我したら泣きますよ?」
「絶対怪我しないよ! 煙にぃ泣かせたくないから!」「怪我しない様に頑張るけど、万が一の事も考えて動くヨ」「怪我はどうでしょう、時の運ですかねぇ」
 三人はめいめいに言って、煙と同じに横に並んで空を見る。「わぁ、雲が。煙にぃ〜!」「ええ……いい眺めですね?」「ん。アル〜」「そうだな」
「ま、行ってみましょう、運はこちら側に向いていることを敵が来たら見せ付けてあげましょう」
「おー!」「おー!」「おー!」
 皆がハモったことに、「ふふ」っと微笑む煙であった。
 
「……おー」
 アクィラも虚空に拳を突き出す。
「はわわわっアクィラさん、私たちだって見せ付けてしまいましょうよぉ今回は!」「あたしたちも……」「あれ、やってあげてもいいわよ。「おー!」ってハモる?やつ」
 
「あいつらも、新兵なのか」
 赤のピアスが目を引く、軍服ではないラフな格好で登場したのは、輝石 ライス(きせき・らいす)
 まだ空京には寄っていない。つまりこの姿でも傭兵ではなく彼は教導団員。大規模な作戦には、初参加だ。パートナーに誘われて、仕方なく、なのだけど……
「ちょっとこの格好はまずかったかな、と思ったけど、さっきの龍の旗持ってた女の子もおへそ出してたし。お姫さんみたいなの被ってたし……」
 それに、第四師団はもともとそういう傾向(?)の部隊だった、なんでも辺境討伐隊上がりの、規模でいってもちょっと前まで半旅団クラスだったっていうし……?
「いっかな。どうせ、空京で傭兵を乗せれば、わかんないだろーし」
 軍服のアクィラが船室に戻るのかこっちに来るので、敬礼でもしてみる。「あ、軍人っぽい方だ。……」
「や、やあ」
 アクィラも新星に叩き込まれた敬礼で返した。クレーメック、クレアが司令部になると、第四師団の規律も厳しくなるかもしれない。「(傭兵志願で来た子かな。ちょっと不良っぽい? 俺と同じでまだ若いね)」
「……ま、めんどくせーけど。行くか!」
 というライスであるが、厳しい父を持ち、その父から自立できるかも知れない、とパラミタに来てそして教導団に入ったことを前向きに捉えてもいる。
「それに……(内心新しいところに向かうことはワクワクしているんだよな。ま、皆には内緒だな)」