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まほろば大奥譚 第二回/全四回

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第七章 幽閉4

「睦姫、もう泣くな。どうしたらよいか、わからなくなる」
 翌朝、貞継は着物に袖を通しながら思案に暮れてた。
 睦姫は将軍に背を向けたまま、ただ泣き続けている。
 貞継は鼈甲の櫛を手に取ると、彼女の金色の髪を優しく梳いてやった。
「今日、紅葉狩りにでも行くか。見事に赤く染まっているそうだ」
 すると、廊下の奥が騒がしくなり、老中楠山の声が聞こえてきた。
 いくら老中とはいえこのような場所にやってくるなど、前代未聞である。
「何事か?」
 将軍の問いに、老中楠山は身を低くして答える。
「上様、お支度を。これより、お出かけいただきますよう願います」
「これからだと? 何処へいこうというのか」
「東光大慈院でございます」
 貞継の表情が変わったのを見て、楠山はさらに身をかがめた。
「上様のご察しの通りです。しばらく城を離れてご養生されるのがよろしいかと」
「……閉じ込める気だな」
「ご存じの通り、これ以上、家臣や女官を処分する訳にはいかないのです」
 大奥での惨殺事件は、老中や家臣、大奥総出で火消しに回っている。
 しかし限度があった。
 マホロバ城内では不安や不満、恐れが渦巻き、たとえ大奥御法度や天鬼神の力に頼ったとしても、全てをぬぐい去ることはできなかった。
「わかった、行こう」
 貞継はすでに観念しているようだった。
 もう二度とこの城には戻ってはこれまいという思いが、彼にこう言わしめた。
「だが、最後に一言だけ、房姫に詫びたい。すまなかったと」



 大奥では将軍を見送るため、女官達が並んだところで将軍はふと、どこかで見た顔だと思い足を止めた。
 御花実候補の葛葉 明(くずのは・めい)が将軍の回復を願って千羽鶴を折ったという。
「将軍のためにあたしにできることは、これしか浮かばなかったのよ。元気になってもらわないと、困るわ。マホロバの将軍は貴方一人だけなんだから」
「お前はあの時の御花実か……別人のようだ」
 黒く髪を染め、きちんと着物を着た明を美しいと貞継は思った。
 一つ、一つ丁寧に折られた鶴を、愛おしそうに眺める。
 いくつかの鶴には名がつけられていた。
「礼を言う。これはどこまでも持っていこう」
「そうしてちょうだい……そして、早く戻ってきてね。あたし待ってるから」
 そう言って笑いかける明に、顔を見られたくなかったのか、貞継は伏し目がちにその場を離れた。
 彼の手には強く、強く、千羽の鶴が握りしめられていた。

卍卍卍


 狭い部屋で男達が密談している。
 彼らはしきりに『噴花』について議論していた。
「天子様をいかにお連れするかが問題だ……」
 男達が真剣に話し込む傍らで、日数谷現示は携帯メールを見ていた。
 突然、睦姫を知るという男から手渡されたが、今まで見たことも触れたこともない鉄の塊を、彼はただ眺めるだけだった。
「鎖……か」


 将軍の去ったマホロバ城では、老中楠山の改革が推し進められていた。
 これまでの政を一新していくという。
 その裏で、マホロバ城地下へ進入した者への追っ手が放たれた。
 鬼城家の兵が、忍者が、鬼が、その者達をどこまでも追ってゆくという。
 冬の兆しはもうそこまで訪れていた。


担当マスターより

▼担当マスター

かの

▼マスターコメント

 こんにちは、「かの」です。
 まほろば大奥譚 第二回、ご参加いただいきありがとうございます。
 こちらの予想以上のアクションをいただいて嬉しい限りです。

 さて、次回アクションについてご連絡です。
 将軍の身柄は、現在「東光大慈院」にあります。
 将軍に付いていくことも、マホロバ城内や大奥にとどまることも可能です。
 「東光大慈院」については、男女入場の制限はありません。
 ただし、アクションによっては制限される場合もあります。

 貞継と交わりを持った女性キャラクターは托卵されたか否か、出産するか否かを次回アクションに記入してください。
 ゲーム時間内において約一ヶ月後に出産となります。また、托卵者は捧げる身体の一部を指定してください。
 托卵による出産は、このシナリオのおいてのみ身体的ペナルティを負います。
※これらは、特に指定がなかったときは、マスターの方で判定します。
※ペナルティはシステム上キャラクターデータには反映されてませんが、このシナリオに参加される方は私の方でチェックを入れてます。
※托卵者は所属が芦原明倫館生に限ります。その他の学校生は寵愛のみの対象となります。

 みなさまの積極的なアクションお待ちしています。
 それでは、またお会いいたしましょう。

※マスターからのお願い
 パートナーと一緒にシナリオ参加していて、アクション記入欄字数のあまっている方は、それぞれMC、LCの名前を書いていただけると、アクション処理がしやすくなるので助かります。
 次回ご参加いただけましたら、お手数ですがご協力お願いします。


【マスター追記】
キャラクター名の表示ミスを修正しました。
申し訳ございませんでした。
(2010.11.03)


【NPC一覧】
鬼城貞継(きじょうさだつぐ)……マホロバ将軍
房姫(ふさひめ)……葦原藩姫
睦姫(ちかひめ)……瑞穂藩姫

ハイナ・ウィルソン……葦原明倫館総奉行(=校長)。房姫のパートナー
ティファニー……葦原葦原明倫館・分校長 大奥入り
楠山……老中
御糸……大奥総取締役
ウダ……マホロバ先住民の末裔。頭に角がある

日数谷現示(ひかずやげんじ)……瑞穂藩士
瑞穂弘道館分校……葦原明倫館分校と同じで、マホロバ内作られた瑞穂藩分校

【付録】
●大奥内部構造
マホロバ城……表、中奥、大奥の三つの空間に分かれる。
表は職務など行う公的な場所、中奥は将軍の居住空間、大奥は将軍に仕える女性たちの居住空間
根の口……中奥との通用門
花の実……将軍が大奥で過ごす場所
繭の間……寵愛を望む女官の住まい
広敷……大奥の入口部分で、警備・事務の男性役人の詰所

緑水の間……房姫の部屋
紫光の間……睦姫の部屋

●大奥の身分
大奥取締役(おおおくとりしまりやく)……大奥を取り仕切る女官の最高権力者
御花実(おはなみ)……将軍や姫の世話役。大奥取締役から選ばれた娘たち。将軍はこの中から手をつける。手付けとなったのもは他の女官から嫉妬や皮肉から御花実様と呼ばれる
御繭(おまゆ)……御膳の用意や献上品の管理、対面所の掃除などを担当する。ここから御花実様になる者もいる
御根口(おねくち)……大奥の出入り口である錠の管理を担当

●大奥の男性
役人……警護や事務で広敷にいるが中には入れない(老中や上級官吏は入れる)
警護……大奥周辺や庭を警護するが中には入れない
医者……奥医師として大奥に入って診察を行う
雑用係……上級女官に雇われた使用人。勝手口までで奥には入れない
その他、上級女官の親類や九歳以下の男児は特別に許される

●表、中奥
御従人……将軍の警護など行う親衛隊

●東光大慈院……マホロバ城から東に少し離れた将軍家の菩提寺。療養などにも使用される