リアクション
卍卍卍 「……それで、大奥から城の地下に入りたいというのですね」 大奥の一角。 緑水の間近くの庭影で、葦原 房姫(あしはらの・ふさひめ)は蒼空学園風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)に会った。房姫のパートナーであり葦原明倫館奉行ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)も人目につかぬよう警戒している。 「はい、それで是非とも房姫様のお力を借りたくて。葦原明倫館分校長ティファニー・ジーン(てぃふぁにー・じーん)さんが見たという、マホロバ城地下の鬼の屍体の正体をつかみたいんです」と、優斗。 「葦原明倫館分校長が関わっているなら、わっちらも見捨てることはできないでやんす。ヘタをすれば、不法侵入でお咎めを受けるでやんす」 ハイナの心配に房姫も頷いた。 「ティファニーが見たというものは、私も気になります。鬼とは……何なのか」 房姫の耳にも貞継と鬼城家を取り巻く噂は入っている。 ただならぬものを感じていた房姫は、優斗と協力する約束をした。 「なるべく穏便にお願いしますね」 「分かっています、では、子の刻(午前12時)に再度、ティファニーさんを連れて来ます。無理はさせないつもりです」 「警備についてはわっちが何とかするでやんす。ご武運を!」 ハイナの言葉に優斗は軽く礼をすると、颯爽と立ち去った。 「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」 優斗の足は葦原明倫館分校へと向けられる。 卍卍卍 「大奥では将軍様がいまだ祈祷療養中だ。瑞穂においても、今のところ目立った動きはない」 葦原明倫館分校では透玻・クリステーゼ(とうは・くりすてーぜ)がもどかしそうにしていた。 パートナーの璃央・スカイフェザー(りおう・すかいふぇざー)が気遣う。 「そうですか、何か他には。例えば托卵に纏わることとか、将軍様の病の原因とか……?」 「……いえぬ。察しろ」 「透玻様がそうおっしゃるのであれば、これ以上は聞きはしませんが」 璃央は事情があってのことだろうと察したが、引きこもり気味だった透玻が大奥入りしたのを彼が気にかけない日はなかった。 「貴様、大奥で血判状押しただろう? ……やはりな」 そう透玻に話しかけてきたのは、蒼空学園閃崎 静麻(せんざき・しずま)であった。 続けざまに、葦原明倫館分校長にも問う。 「ティファニーは押してないんだよな?」 「サインはしましたヨ、静麻。でも、アメリカで血判状なんて大統領でもしないデス」 サムライガールと自称する米国人ティファニーは平然と答えている。 彼女はすっかり元気を取り戻していた。 「一緒に大奥入りした人に、ミーも分も押してもらったデス。セルフで血を流すなんて、ハラキリと同じデスよ!」 「……それはちょっと違うけどな、ティファニーちゃん」 蒼空学園風祭 隼人(かざまつり・はやと)が苦笑を交えながら、彼女を諭す。 「ハラキリは死んじゃうから。でも、君が危険なのには変わりない。大奥の血判状に縛られることなく、マホロバ城の地下で見たことを、巷で噂になるくらい言いふらしたんだからね」 「うう……」 「ティファニーの血の契約? は成立してないんだろうな。どうやっているのかは分からないが、血判状を押した者は外で大奥の秘密を話せなくなってるみたいだし。でも、彼女が見たものは事実だろう。俺たちはそれを確かめに行く」 そういって透玻をちらと見る隼人。 彼女は不快感を露わにした。 「よその学校生がマホロバ城内を闊歩するのは気に入らんな。我々、葦原明倫館生に任せてもらいたいところだが」 「そう、言わないで。俺たちはまだ血判状を押してはいない。もしかしたら、適任かもしれないぜ」 空京大学如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が間に入って間を取り持つ。 「聞いた限りじゃ、本当にやばそうな所だ。何が起きてもおかしくない気がする。ティファニーさんの情報だけが頼りだし、いろんな駒があっていい」 正悟は冷静に判断し、自らの考えを提案した。 「俺個人としては、ティファニーさんを城には近づけたくない。危険だからな。だが、決めるのはティファニーさん自身だ。俺は彼女が決めたことに従う」 その場にいた者に一斉に見つめられ、ティファニーは急に真っ赤になってまごまごする。 「み、ミーはオバケは怖いデス。でも、オバケじゃなかったら平気……デスヨ」 「よし、決まりだな」 正悟が静麻に視線を送り、互いに頷きあった。 隼人の双子の弟、優斗も合流し、こうして勇士によるマホロバ城地下探検隊が結成された。 |
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