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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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彷徨える島

 
 
「おおお? 地震か?」
 突然、大きな震動を感じて、迷子となって島を彷徨っていたアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が叫んだ。風むきも変わったような気がする。いや、風というより、雲の波のような物が断続的に襲ってくる。また島が、雲海に突っ込んだり浮上したりを繰り返しているのだろうか。
「落ち着くんじゃ馬鹿者。ここは浮遊島じゃぞ、地震なぞ、起こるはずがない。……この震動、そしてあまりに突然の不自然な風むきの変化……。これは間違いないじゃろう。島が移動しておるのじゃ」
 自信をもって、ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)が叫んだ。
「島が移動!? 流されているんじゃなくて?」
 なぜか目をキラキラさせてアキラ・セイルーンが言った。
「突然変わりましたから、おそらく何かの意図によって進路が変わったのではないでしょうか。もともと、この島には敵がいるようですし。その者が何かをしたとしても不思議ではありません」
「移動できるのか、この島は……。ふふふふふふふふ……」
 セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)の言葉を聞いて、アキラ・セイルーンが突然大声で笑いだした。
「アキラ?」
 ちょっとどん引きながら、ルシェイメア・フローズンとセレスティア・レインが聞き返した。
「ふ、ふふふふはははははは。きたぞ、きたぞ、きたきた、きたあああああああ! あるぞ! 確実に! この島の中心に巨大な機晶石がぜぇっっってぇある!」
 その自信はどこから来るのかと言いたくなるほどの確信をもって、アキラ・セイルーンが主張した。
「まあ、確かに巨大な浮遊物を動かすエンジンのエネルギー源としては、巨大機晶石は妥当だがのう。だからといって……」
「よし、見つけようぜ!」
「おい、人の話を……」
 ルシェイメア・フローズンの話を聞きもしないで、アキラ・セイルーンが走りだした。
「闇雲に探しても……」
「その通りなのじゃがなあ。なんだか、アキラの奴、ずっと舞いあがっておるからのう」
 困ったように、セレスティア・レインとルシェイメア・フローズンが顔を見合わせた。だがすぐに、はぐれては大変と、あわててアキラ・セイルーンの後を追いかける。
 島の原生林は霧の津波に襲われてかなり視界が悪かった。いったんはぐれてしまっては、いつ再会できるか分かったものではない。
「おーい、何か怪しい穴を見つけたぞー」
 わくわくが止まらないアキラ・セイルーンが、大声でルシェイメア・フローズンたちを呼んだ。
「あまり変な穴に手を出すと危険なのでは……」
 セレスティア・レインが言ったそばから、穴の中からメイドロボがポンとと飛び出してきた。
「下がれ、アキラ」
 すぐさまルシェイメア・フローズンが雷術でメイドロボを攻撃する。ボンと煙をあげて、アキラ・セイルーンの後ろでメイドロボが吹っ飛んだ。
「ほら来たー! ほら来たー! よーし、ここから中に入るぞー」
「敵が出てきて喜ぶでない!」
 テンションが上がるアキラ・セイルーンを、ルシェイメア・フローズンが怒鳴りつけた。すでに、セレスティア・レインは呆れ顔だ。
 なにしろ、アキラ・セイルーンが見つけた穴から次々にメイドロボがでてくるのではシャレにならない。
「いったん退くぞ!」
 ルシェイメア・フローズンが叫び、セレスティア・レインと共にアキラ・セイルーンを引っぱって逃げだした。
 
    ★    ★    ★
 
「うーん、これでもうちょっと可愛ければ、俺としても手加減できるんだけどねぇ」
 遭遇したメイドロボを曙光銃エルドリッジで倒したクド・ストレイフ(くど・すとれいふ)が、残念そうに言う。
「早くみんなと合流しないとだめであろうが」
 つんつんとメイドロボの残骸をつついているクド・ストレイフに、ハンニバル・バルカ(はんにばる・ばるか)が言った。
 先ほどから島全体が不穏な動きを見せ始めている。他の場所で、ゴチメイたちが暴れているのは間違いないだろう。
「でも、この霧じゃ、進むのも大変なんだよぉ」
 島のコースが変わったのか、雲海の雲が、風と共に津波のように襲いかかってきていた。もちろん、風が強いとはいえ、水ではなく霧であるから、それによって吹き飛ばされるとか窒息するとかいうことはない。だが、この過酷な環境では、確かにこの島の上で暮らすというのは無茶な話であることがよく分かる。
 ビチビチビチ……。
「何か、変な音が聞こえないかぁ?」
「確かに。気をつける……うきゃあ!」
 突然、ハンニバル・バルカが、クド・ストレイフを捕まえて自分の盾にした。
 直後に、巨大な影が二人のそばを通りすぎる。
 巨大サンマだ。
 まだ生きていてビチビチと跳ねる巨大サンマは、周囲の木を薙ぎ倒して霧の津波と共に流されていった。
「俺を盾にしても、あんなのにぶつかったら二人ともペシャンコだよぉ」
 無駄なことはしないでほしいと、クド・ストレイフがハンニバル・バルカに言った。
「大丈夫、クドバリアーならなんとかしてくれるのだ」
 信頼しているんだか馬鹿にしているんだか分からない台詞をハンニバル・バルカが吐いた。
「とにかく、みんなを捜そうねぇ」
 また巨大サンマが飛んできたら大変だと周囲に注意しながら二人は進んでいった。
 
    ★    ★    ★
 
「お腹がすきましたの。早くみんなの所へ戻りたいですの」
「だから、今調べているんですぅ」
 お腹を押さえたエイム・ブラッドベリー(えいむ・ぶらっどべりー)に急かされて、神代 明日香(かみしろ・あすか)が言い返した。
 先ほどからトレジャーセンスで写真を捜しているのだが、いっこうに感触がない。確か、ベースキャンプに写真をおいて目印にしたはずなのだが……。いや、なぜか、自分自身からは反応があるのだが。
「もしかして、明日香さん、エリザベートちゃんの写真を探してません? ベースキャンプに貼られていたのは大ババ様の生写真ですよ、確か」
 ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)が冷静に突っ込んだ。きっと、神代明日香がいつも大事にしているエリザベートのひみつ写真にだけトレジャーセンスが反応しているのだろう。
「そうだったですぅ? じゃ、あらためて、大ババ様の写真は宝物。大ババ様の写真は宝物かも。大ババ様の写真は宝物なの? あーん、だめですぅ。価値が認められないですぅ。やっぱり、私にとっての宝物はエリザベートちゃんだけですぅ」
 頑張ってトレジャーセンスを働かそうとした神代明日香が、結局音をあげた。
「とにかく、今どこにいるのかを把握して、みんなと合流しないと。そばに誰かいればいいんですが」
 ノルニル『運命の書』が、一人真面目に考え込む。
「お腹すいたあですの〜」
 エイム・ブラッドベリーが、ジタバタして騒いだ。
「よし、いいことを考えたですぅ。二人とも私のそばに来て。いいですか? さーちあんどですとろーい!!」
 突然、神代明日香が周囲に炎を放った。
「いったい何をしたかったですの?」
 この行動をまったく理解できずに、エイム・ブラッドベリーが目を丸くして驚いた。
「周囲を軽く攻撃すれば、誰かいたら分かるですぅ」
 えへんと、自慢げに神代明日香が胸を張る。
「誰かいたらどうするのよ。今ごろ丸焦げ……」
 言ってしまってから、ノルニル『運命の書』は風に乗って流れてきた香ばしい匂いに顔を青ざめさせた。
「もしかして、すでに誰かが丸焼けの焼死体に……」
 きゃあと、女の子三人がだきあって震えあがる。
「でも、なんだか美味しそうな匂いですの」
 とにかく調べようと言うことになって、三人は恐る恐る匂いのする方へと進んでいった。
 神代明日香のさーちあんどですとろいでいったん霧が晴れたのだが、すぐにまた他から流れ込んできた霧で視界が悪くなってしまっている。
「このあたり……わあ!」
 予想もしなかった巨大な焼死体に遭遇して、三人が悲鳴をあげた。
「あれ、これって……」
 焼死体は焼死体であるが、それは巨大サンマであった。
「なんでこんな所に焼きサンマがあるんですの。でも……美味しそうですの」
 じゅるりと、エイム・ブラッドベリーがよだれを啜る。
「とりあえず御飯にするですぅ。できれば、お醤油と大根おろしがほしいですぅ」
 のほほんと神代明日香が言った。