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【Tears of Fate】part1: Lost in Memories

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【Tears of Fate】part1: Lost in Memories
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 その頃、土方 伊織(ひじかた・いおり)サー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)サティナ・ウインドリィ(さてぃな・ういんどりぃ)とおっかなびっくり探索をしていた。
「はわわ、校長せんせーが大変ですーって言うので急いできてみたら、機晶姫さんっぽいのが暴れてるのですけどー」
 うるうるした瞳で伊織はサティナを見上げた。三人は今、物陰に隠れて様子を窺っているのだ。
「ふむ、まあ落ち着くがよい。あれが『クランジ』らしいが、我からすればただの禿げ人形ではないか。見たところ、意思らしいものも知性もなさそうじゃ」
 凛々しい表情でサティナは断じた。
「禿げ人形……」
 サティナらしい表現に、思わずベディヴィエールも噴き出しそうになった。ベディヴィエールも緊張で肩が強張っていたのだが、少しほぐれた気がする。
「仕方ないところもありますが、情報が極端に少なく動きようがないですね。ですが、エリザベート様方の救助が目的との事ですから……まずは、このグランジとやらの排除が必要そうです」
「はうぅ、きんきゅーしゅつどーは良いですけど、ちゃんと説明してほしかったですぅ」
 弱音を吐いているような伊織だが、すでに覚悟はできている。魔砲ステッキをぎゅっと両手で、絞るように握った。
「なに、情報がないなら自分らで見つけるまでじゃ。あれを排除していけば真相にたどり着けるかもしれんて。なんとも残念な人形どもじゃが、我の雷撃で極楽に送ってやろうではないか」
 問答はここまで、というようにサティナは切れ長の目でうなずいた。
「参りましょう。幸運が訪れれば、エリザベート様方と遭遇することもありましょうから」
 ベディヴィエールにも促され、伊織は木製の床を蹴った。
「そ、それなら……」
 ベディヴィエールが前衛、その背を追うようにして伊織が、杖を力の限り振った。
「学校の備品壊すのはやめてーです」
 言いながら、味方勢と戦闘中のクランジ二体めがけ、サンダーブラストを解き放った。
 一瞬視界が白色に染まるような強い雷光。
 クランジの一人に直撃した。かくてバランスを崩した量産型めがけ、
「アシストありがとう!」
 相田なぶらが剣を凪いだ。
「ええい、禿げどもさらに湧いてきおった。伊織、警戒せい!」
 サティナが頭上を振り仰いで叫んだ。
 背の高い本棚の上から、サソリが這い出てくるようにして量産型クランジΧが出現したのだ。新手だ。
 クランジは身を躍らせた。伊織目がけ落下する。
「え? はわっ」
 急なことで伊織は対処が遅れた。杖で防ごうとするもその杖を、グルリと巻き付いた鞭が奪い取ってしまった。
 クランジのもう一方の鞭、これが空気を切り裂くヒュンという音が伊織の耳を刺した。
 だが鞭は空中で切断されていた。
「はう……あなたは誰ですか?」
 ぺたっ、と尻餅ついたまま伊織は問うた。
「クランジ」
 長い桃色の髪をなびかせて彼女は言った。
「えっ?」
「クランジΟΞ……べつ名、大黒美空です。いいえ、大黒美空だ」
 語尾にこだわりがあるのか、少女は丁寧語をわざわざ言い捨ての形に言い換えた。
 大黒美空を追うようにして、
「加勢するぜ」
「すぐ参ります」
 久、なぶらたちがやってくるのも見えた。
「……くらんじ?」
 でも、この人は『善いくらんじさん』に違いないと伊織は直感的に思った。
 だって彼女は、あんなに澄んだ眼をしているのだもの。