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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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七不思議 秘境、茨ドームの眠り姫(第3回/全3回)

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    ★    ★    ★
 
『さて、それじゃあ掃除を始めるか。伸宏、ついて来い』
『了解です、先輩』
 岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)飛燕とプラヴァー二機編隊のエレメントを組んだ湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)の{ICN0003883#紫電改高機動型}が先行する。
 前方に現れた二機のリーフェルハルニッシュに、紫電改高機動型が滑空砲を放った。
 直撃を受けた一機が爆散する。だが、片足に被弾したもう一機が、被弾箇所を切り離して突っ込んできた。
「タイミング合わせで、回避運動を」
 高嶋 梓(たかしま・あずさ)が、湊川亮一をうながした。
「任せておけ」
 高機動パックの機動性を生かして、紫電改高機動型がクンと進行方向を変える。その背後から現れた飛燕が、MVブレードを構えてリーフェルハルニッシュに突っ込んだ。
 袈裟斬りにされたリーフェルハルニッシュが、二つに分解して落下しながら爆散する。
「二機撃墜。すぐに接敵するよ。フォーメーションを戻して」
 敵機の消滅を確認した山口 順子(やまぐち・じゅんこ)が、岡島伸宏に告げた。
「了解。いつもの訓練通りに……」
 新たに見つけた敵にむかう紫電改高機動型を追って、岡島伸宏が飛燕を旋回させた。後方にスモークディスチャージャーから煙幕弾を発射して、追撃してくる敵の目をごまかす。
『先輩は前方に集中してください』
『ああ。背中は任せた』
 ターゲットに集中すると、紫電改高機動型が充分に敵を引きつけてから滑空砲を連射した。
「亮一さん、実弾の残弾六です!」
 武器管理をしている高嶋梓が、湊川亮一に報告した。
「よし。残弾四でいったん補給に戻るぞ。伸宏にも伝えろ」
「了解しました」
 ドッグファイトで、敵がまだいるのに全弾撃ち尽くすのは自殺行為だ。湊川亮一は、常に継戦能力を頭に入れて、MVソードの攻撃も混ぜつつ敵機を攻撃していった。
 
    ★    ★    ★
 
「飛べ、ジャイアント・ピヨ!」
『ピヨ゛』
 各イコンが遺跡周辺のリーフェルハルニッシュの排除に激闘を繰り広げる中を、アキラ・セイルーンとアリス・ドロワーズの乗るジャイアント・ピヨが、小さな翼をパタパタさせて飛んでいく。
「ジャイアント・ピヨ、ビームアイだ!」
『ピヨ゛(ビィィィィーム!)』
 不発。
 あまりに遺跡に接近しすぎているため、ビームは目から出てすぐに吸収消滅してしまった。
 逆に剣で斬りつけられそうになって、あわててパタパタと翼を動かして避ける。
「くそ、ならレーザーマシンガンだ!」
『ピョ゛(レェェェザァァァ!)』
 口からパルスレーザーを吐くが、当然、それもまた消滅する。
「ええい、行け、体当たりだ!!」
『ピョ゛』
 ジャイアント・ピヨが身体を丸めて、黄色いボールのようにリーフェルハルニッシュに体当たりする。衝撃で弾き飛ばされないように、アキラ・セイルーンとアリス・ドロワーズは必死に頭部の突き立った冠羽根にしがみついた。
『ピョ゛』
 ジャイアント・ピヨが、丸めていた身体を開いてばんざーいをした。突き出されたお腹が、リーフェルハルニッシュを弾き飛ばす。密集していた敵イコンの中へと弾き飛ばされたリーフェルハルニッシュが突っ込み、団子になって墜落していった。
「アキラ、ヨンが来たネ」
「よし、遺跡の上で合流だ」
 アリス・ドロワーズの言葉に、アキラ・セイルーンはジャイアント・ピヨを遺跡の上に着陸させた。
 巨大な遺跡の頂上は、さすがに湾曲してはいるものの歩けないほどの角度ではない。実際、待ち構えていたように、数体のリーフェルハルニッシュが走ってむかって来た。
『お待たせです』
 そこへ、ヨン・ナイフィードの乗った凄まじい枕が到着した。
「待ってたぜ」
「さあ、行くネ、ピヨ。枕投げ王者の力、とくと思い知るネぇぇぇぇ!!」
 アリス・ドロワーズがジャイアント・ピヨに指示した。ちっちゃな嘴で凄まじい枕の端を銜えると、ビュンビュンと勢いをつけて回転し、一気に敵にむかって投げつける。
 ぼふんと凄まじい枕にぶつかったリーフェルハルニッシュが、予想外の反動で後ろに吹っ飛んでいった。なぜか、凄まじい枕のフェイスが得意げにも見えたりする。
「さあ、ジャイアント・ピヨ、どんどんやれ!」
 凄まじい枕を拾いあげたジャイアント・ピヨに、アキラ・セイルーンは言った。
「もちろんネ」
 アリス・ドロワーズがジャイアント・ピヨに命じて、再び凄まじい枕を投げた。
「ひょおぉぉぉぉー。目が回りますー」
 中に乗っているヨン・ナイフィードとしてはたまったものではないが、ここは耐えるしかなかった。
 リーフェルハルニッシュに命中した凄まじい枕が、ボンと跳ね返ったとたん、何か見えない壁に当たったかのように変な方向にまた跳ね返った。なんだかガッシャンという音と共に、別のリーフェルハルニッシュに命中して薙ぎ倒す。
「凄い変化球だな。さすがは、枕投げ名人だ」
「ま、まあ、当然ネ」
 アキラ・セイルーンに褒められるものの、そんな投げ方をした覚えのないアリス・ドロワーズは、ちょっと戸惑ってみせた。
 
    ★    ★    ★
 
「うーん、どこ狙ったらいいのかしら。わからないですぅ。えーい、転んじゃえーですぅー」
 Night−gauntsに乗って、ちょこまかとリーフェルハルニッシュをペチペチと無尽パンチで叩いていた魔装書アル・アジフだったが、なんとか敵のいない場所に移動できたので、今度は遺跡をミサイルで狙うことにした。
「発射ですぅ」
 魔装書アル・アジフが、Night−gauntsのコックピットの中で、むんと胸を張って、ちっぱいを前に突き出した。Night−gauntsはモーショントレースシステムを搭載しているので、こうしないとミサイルが発射できない。
 発射されたミサイル群がいったん上に上がって、遺跡に降り注ぐ。さすがに的が大きいので外れることもなく、ミサイルが全弾命中して遺跡の外壁の一部に穴を開けた。
「あの損傷部分にむかって突撃ですわ。ドリル戦闘用意。全員、衝撃に耐えなさい!」
 一部でも傷ついたのを見逃さず、ノート・シュヴェルトライテがすかさず指示を出した。
 シグルドリーヴァの船底艦首に装備されたアルキメディアン・スクリューが高速回転を始める。
そこ、邪魔です
 接近してくるリーフェルハルニッシュを風森望がバスター砲で粉砕排除し、シグルドリーヴァが遺跡に突っ込んだ。真正面からあたるのではなく、あげた艦首を叩きつけるようにして亀裂にドリルを載せ入れる。回転する螺旋が、装甲に噛みついてぐいぐいと斬り裂いていった。
 
    ★    ★    ★
 
「残弾、総定数を切りましたわ」
「よし、いったん補給に戻る。飛燕にサインを送れ」
 火器管制を行っていた高嶋梓の言葉に、湊川亮一が指示を出した。
 紫電改高機動型と飛燕が反転して拠点を捜す。
「10時方向に光が。大型飛空艇が多数着陸しているわ」
 地上にチラチラと瞬くような炎の光を見つけて、山口順子が報告した。
「イルミンスールからの補給船みたいだな。先輩、あそこにおりましょう」
「よし、そうしよう」
 岡島伸宏の提案に、湊川亮一が同意する。
 進路を変えると、二機のプラヴァーは大型飛空艇が不時着している位置にむかった。
 途中で、そちらへむかうリーフェルハルニッシュと白兵戦を繰り広げる。
『先輩、今です!』
 MVソードで敵の剣と組み合った岡島伸宏が叫んだ。
「最後の一発だ。食らえ!」
 リーフェルハルニッシュの真横に接近した湊川亮一が、0距離で滑空砲の銃弾を撃ち込む。貫通した徹甲弾の跡から炎を吹き出してリーフェルハルニッシュが墜落した。
「急ごう」
 ちらりとコンソールの残弾ゲージを一瞥してから、湊川亮一が補給船の近くに着地した。
 近くでは、ラグナ・レギンレイヴの周りでヘルわんこたちが火を吹いて遊んでいる。上空から見えたのは、この炎だったようだ。
「必要物資はなんですか?」
 大型飛空艇の方から飛んできたエクス・ネフィリムが、プラヴァーの前でホバリングしながら訊ねた。
『滑空砲用の徹甲弾を二パック頼む』
「滑空砲用の徹甲弾二パックですね。お姉ちゃん、お願いだよー」
 湊川亮一の要求を、エクス・ネフィリムがヘッドセットのマイクにむかって繰り返す。
「滑空砲用の徹甲弾二パックだそうですわあ。凶司ちゃん、お願いねえ」
 通信を受けて、セラフ・ネフィリムが湯上凶司に告げた。
「聞こえたな、ディミーア。早く持っていけ」
 大型虚空艇の船倉にいた湯上凶司が、ディミーア・ネフィリムに指示した。
「今持っていくわ」
 巨大な弾薬の詰まったカートリッジを両手に提げ持ったディミーア・ネフィリムが、紫電改高機動型にむかって急いだ。
「それで、飛空艇の方はどうなのぉ?」
「ああ、みんな頑張っているからな。思ったより早いぜ」
 セラフ・ネフィリムが訊ねられて、湯上凶司はそう答えた。