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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

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燃えよマナミン!(第2回/全3回)

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【2】覇王マリエル無双拳……5


 覇王のなんたるかを叩き込まれたマリエルは今や拳士として覇王として一皮剥けていた。
 非道な黒楼館に属しているとは言え、その懐の深さには一目置かざるをないものすら感じる。
 しかしそれでも悪に加担する以上、止めなくてはならない。
「覇道を止めるは王道と相場が決まってるのだ! 徳無き拳に強さは宿らぬ事をマリエル殿は知らぬのか!」
 万勇拳門下生木之本 瑠璃(きのもと・るり)はビシィと指を突き付けた。
「なんだ貴様は?」
「中国の孟子殿だって、徳を持たぬ覇道は賎しいものだと言っているのだ!」
 注・ウィキペディア調べ。
「徳……正しい行い……つまり正義! 正義を貫く我が拳がマリベル殿に負ける道理は無いのだ!」
「……マリエルさん止めるったって秘孔の場所もわからないのにどうするの?」
 相田 なぶら(あいだ・なぶら)は肩をすくめ言った。
「我輩にいい作戦があるのだ。秘孔と言っても体のどこかにある事に変わりは無いのだ」
「ふむふむ」
「ならば、体中くまなく攻撃を与えればどれか一つはその秘孔にヒットするに決まってるのだ!」
「………お前は馬鹿なの!? それは作戦じゃなくてただのごり押しって言うんだ!!」
 なぷらは頭を抱えた。
「というか、秘孔突くまでにボコボコにされるだろうし、危険な秘孔まで突きそうな気が……っていない!?」
 これと決めたら猪突猛進。瑠璃は既に走り出していた。
「……ったく、無茶して大怪我するなよー! あとマリエルさんに大怪我もさせるなよー!」
「心配しなくてもマリベル殿からは凄く強い気を感じるのだ! 多少無茶してもそんな大怪我しないのだー!」
「……うーん、ちゃんとわかってる気がしない」
「ああ、全然わかってねぇ」
「ん?」
 モヒカン野郎ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)は横で苦虫を潰した顔をしていた。
「女子が女子を……いや、おっぱいがおっぱいを突つくなんざ一体誰が得するってんだ! 不健康すぎるじゃねぇか!」
「そ、そこなの……!?」
「なんだ、てめぇの差し金か!? 女子が女子を突つくの見て興奮する変態なのか、てめぇは!」
「俺は関係ないってば!」
「まったくよぉ、アダムとイブの時代から突くのは男の仕事と決まってるのに! くそ、俺様が手本を見せてやる!」
 ピンと両の人差し指を立てると、ヒャッハーと駆けだしていった。
「万勇拳、ろくな人材がいない……!」
 なぷらは肩を落とした。
 それはさておき「とりゃああ!!」と瑠璃の百烈突きがマリエルに炸裂する。
 適当に秘孔っぽいところを突きまくり、見た目は様になっているが、無論のこと正しい秘孔を突くことはなかった。
「見たか、我輩の秘孔百烈突きの冴え! 目は覚めたか、マリエル殿!」
「ぬううう……むしろ闘気が漲ってきおったわ! むうううううん!!!!」
「め、目に見えて闘気が倍増したのだ!」
 どうやら突いたのは潜在能力を更に引き出す『活力孔』だったようだ。
「しかもそれだけじゃないのだ。なんだか胸がやたら大きくなったような……あ! 腰もしっかりくびれてるのだ!」
「ほう、肉体までも覇王となったか」
 これこそリナリエッタがおねだりしていたセクシーになる秘孔『熊田曜孔』である。
「なんという立派なおっぱい! 夢がいっぱい胸おっぱい! やるじゃねぇか、ヒャッハー!」
 さっきより生き生きと人差し指を突き立てた。
「全世界のおっぱいの味方にして恋人、このゲブー様がやぁ〜ってやるぜっ!!!」
 どんなおっぱいも喜びの叫びを上げて正気に戻る秘孔全999(ゲブー談)に高速の連続突きを繰り出す。
「がはは(突き突き)、がはは(突き突き)、がはは(突き突き)のはー!(突きー!)」
「ぐ、この技は……!?」
 するとどうだろう。
 先ほどまでセクシーダイナマイトだったマリエルの身体がみるみる元のつるぺったんに戻っていった。
「な、何故なんだぜ!?」
 ゲブーが突いてしまったのは『過去の栄孔』。直前の秘孔効果を無効化してしまう秘孔のようだ。
「くはあああ……!! 俺様としたことがとんでもねぇミスを! おい、もう一回さっきの秘孔突いてくれ!」
「そ、そんなもん覚えてないのだよ……」
「ちくしょう! なら俺様がもう一回突いてやる! 何度だって突いてやる!」
 と指を突き出した瞬間、マリエルの鉄拳が人差し指をメキャッと打ち砕いた。
「ほぎゃあああああああ!!」
「覇王の肉体を弄びおって! 下がれ雑魚ども!!」
 怒りの轟衝波が二人をおもくそ吹き飛ばす。
「せ、正義の拳はこんなことでは敗北しないの……のわあああああ!!」
「お、俺様のかわいい人差し指がががががが!! うぎゃあああああ!!!」

 ・
 ・
 ・

「……こうなるといよいよ、解除の秘孔とやらを吐いてもらわにゃならんのぅ」
 見た目完全にその筋の人の清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)はカソを締め上げた。
「そ、そんな秘孔は知らんアル。聞いたこともないアル……」
「なぁにぃ?」
「それウソです。さっきこの人、平凡孔とか言うのを突けばいいって自慢げに言ってました」
 サクッと優斗がチクった。
「なんじゃい、ワレ! わしを舐めとるんかい! 舐めとったら、鳴門海峡に沈めたるぞ、ボケェ!!」
「く、苦しいアル……!」
「もう秘孔が突けんよう、その指詰めたってもええんじゃぞ!」
「うぐぐぐ……!」
「まぁまぁ……ちょっと冷静になりましょう、青白磁さん。そんな方法じゃこの人もおしえてくれないと思います」
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は荒ぶる青白磁をたしなめた。
 青白磁よりどう見ても圧倒的に善良そうな少年にカソもほっと胸を撫で下ろした。
「しかしのぅ。わしだってこんな乱暴な真似したかないが、こうでもせんと口を割らんぞ、こいつ」
「ええ、わかります。でもそれだとぬるいと思うんです」
「ぬるいって言われてもよぉ……え? ぬるい?
 コハクはワイヤーをカソに巻き付けた。きょとんとするカソを尻目に、コハクはそこに電流を流す。
「ほぎゃああああああああ!!!」
 カソからぷすぷす黒煙が立ち上る。
「どうでしょう、これで喋る気になってくれると嬉しいんですけど」
「あうあう、あぐぐぐ……」
「それは喋る気はないってことですね。残念です」
 もう一度電流を流す。
「ほぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」
 本来温和なコハクだが、友達のマリエルを元に戻すためなら手段を選ばない。
 心を鬼にして攻め立てる……がしかし、真面目な人が真面目に拷問するほど恐ろしいものはない。
「……喋る気になりました?」
「あうあう、あぐぐぐ……」
まだだめか
「ち、違うアル! 痺れてるアル! 喋りたくても喋れないアル! なんでも話すから電撃はやめるアル!」
 平凡孔とは覇王孔と対になる秘孔である。
 これをひとたび突けば覇王孔の効果はなくなり、元の凡百の一般市民に戻ると言う。
 その秘孔の場所とは、お尻に二カ所、胸に一カ所、これを同時に突くことで効果が発揮されるそうだ。
「ちょっと待てコラァ! それじゃ胸に手をかけながらケツに手ぇ回すことになるじゃろがぃ!!」
「ひえええっ!」
「そんなもん、わしみたいないい大人がいたいけな少女に出来るかぃ!!」
「うーん、サイコキネシスで押したらダメですかね?」
 優斗は言った。
「おおっ! その手があったんか!」
「む、無理アル……。念動力じゃ秘孔みたいな小さな箇所は狙えないアル。絶対に指でやらなくちゃだめアル……」