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インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)

リアクション公開中!

インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)
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リアクション


【4】 GURDIAN【4】


「目標G1まで距離200、あと20秒で接敵するよー」
 仮契約書の力でマスコットになったミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)は言った。
 その姿はまんまるにデフォルメされたミーアキャット。その名も”ミーちゃん”だそうである。
「そろそろ変身したほうがいいんじゃないかなー。うん、それがいいんじゃないかなー」
 前部座席でメインパイロットを務めるシフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)を、ちらちら見ながら、彼女は熱いアピールを送っていた。
「わかってますよ……!」
 シフはため息を吐いた。
 あまり気は進まないが、生身の状態でのシャドウレイヤーは確かに疲労の度合いが桁違いだ。真っ直ぐ前にイコンを飛ばすだけでも、相当な集中力と体力を要求される。
「まぁ契約書も後で請求が来たりする類ではないようですし……仕方ありません!」
 青い光に包まれ、シフは魔法少女に変身した。
 フリフリの魔法少女コスチュームは、胸元のチラリズムとミニスカ絶対領域に拘った絶妙な仕上がり、シフは慌ててスカートを押さえた。
「霊亀! 衣装はもう少し何とかならなかったんですかーっ!」
「まぁまぁシフ、たまには女の子らしいかわいい格好するのもいいじゃない〜」
 シフの纏う魔鎧四瑞 霊亀(しずい・れいき)は言った。
 普段はロングコート形状の魔鎧なのだが、今回は特別と言うことで、契約書の効果に便乗して、シフに着せてみたかったコスチュームになってみた。
「は、恥ずかしい……」
 そうこうしてる間に、G1を攻撃射程に捉える位置まで来ていた。
「……わくわく☆」
 ミネシアが期待に満ちた眼差しを向けてくる。
「……わかってますってば!」
 意を決し、シフは魔法少女のルールに則り、名乗りを上げた。
「蒼翼の魔法少女・マジカル☆クロウ、推して参りますっ!」
「よーし、いっくぞぉ!」
 この時を待っていたミネシアは、ガラスカバーの施されたスイッチを、叩き割らんばかりの勢いで押した。
「マジカル☆アイオーンにマジカル☆トランスフォームだぁ!」
 すると、アイオーンの擬装用外装カバーがパージされた。
 中から現れたのは、風になびく薄青のフリルやら帯。そして、LEDライトによってキラキラ感を演出された特製装甲。魔法少女使用のカスタムアイオーンに換装された。
「い、いつの間にこんなものを……」
「整備科の人たちに手伝ってもらって作ったんだー! いいでしょー!」
「それはまぁ、楽しそうでなによりですね。はぁ……」
 悪ノリに呆れつつも、シフ……クロウはアサルトライフルを構え、G1との間合いをはかった。
「マジカル☆クロウ! まずはマジカル☆ライフルで様子見だよ!」
「ええ。ミーちゃん、予測は任せます」
 牽制とデータ収集を兼ねて、銃弾を撃ち込む。
 G1は両腕を硬質化させ、防御姿勢になると、こちらに間合いを詰めて来た。
「!?」
 前回よりパワーアップしたガーディアンには、ライフル弾程度では与えられるダメージは軽微。多少手傷を負わせたとしても、すぐに再生されてしまうし、よほどうまく急所を捉えなければ決定打に欠ける。
『祝福を受けし我等の肉体に、穢れた銃弾など通用せぬ』
 弾幕を突破したG1は、アイオーンに腕を伸ばした。
 咄嗟に回避運動。腕がかすったライフルはバラバラに吹き飛んだが、機体にダメージはなし。
「ああ! マジカル☆ライフルがマジカル☆ブレイクだよ! マジカル☆クロウ、今度はマジカル☆サーベルを使って!」
「何でもマジカルつけない!」
 ビームサーベルで、叩き付けられる腕を防御する。

「こちら柊。G1の背後を取った。これより援護を行う。多少荒っぽくなるが、そこはそっちで対処してくれ」
 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)の高起動イコン刃金はレーザーマシンガンの雨をG1に撃ち込んだ。
「歓迎するぜ、未来から来た宗教狂いさんよぉ!」
『グウウウウウ……!!』
 若干、アイオーンを巻き込み気味だったが、クロウも手練のパイロットである、G1を盾にしつつ後退し、体勢を立て直す。
『ありがとうございます』
 刃金のモニターにクロウの顔が現れた。
「なに、たまたま通りがかっただけだ」
 そう言って、恭也はクロウの格好をまじまじ見た。
「……へぇ、似合ってるじゃねぇか」
『え……え? ああっ!?』
 そこでクロウは通信が音声通信になっていない事に気付いた。
『ちょっと霊亀! 勝手に映像通信にしないでください!』
『だって皆に見せたかったんだもん〜♪』
『は、恥ずかしい……。な、何も見なかったことにしてくださいね、恭也さん!』
 通信が終わった。
「……そんなに恥ずかしがることでもないのになぁ」
「まったくだ」
 サブパイロットの柊 唯依(ひいらぎ・ゆい)は言った。
 シャドウレイヤー戦闘に適応するため、彼女は仮契約書で魔法少女になっている。
「こういう格好も悪くないだろうに」
 姉御肌な唯依のイメージとは違うものの、顔立ちの整った彼女はフリルやリボンの多い衣装でもよく着こなしていた。
(似合う、似合わないはともかく、年齢的な問題がなぁ……)
「おい、何か言ったか、恭也?」
 後ろの座席から放たれた凄まじい殺気に、恭也は包丁を喉元に突き付けられた気分になった。
「な、何も言ってねぇよ!」
「なら、いいが。命はひとつしかないからな、大事にしたほうがいいぞ」
「こえーよ!!」
 前から迫るガーディアン、後ろからプレッシャーをかける姉、二つの恐怖に板挟みにされる恭也だった。
「……って馬鹿やってる場合じゃねぇや」
 こちらを指向するG1に意識を向けた。
「しかし、前回より戦闘能力が上昇しているようだな」
「ああ、閃崎が転送してくれた前回のデータより、スペックは大分上がっているようだ。もっとも、追加の武装はなく、行動パターンもそう変化はない。前回のデータは活かせる」
「まぁ一対一なら通用するかもしれねぇな」
「……どういう事だ?」
「姉貴は前回戦闘に参加してないからわからねぇだろうが、今回のこいつらは明らかに前回と違う部分がある。この前見たこいつらは、集団で敵を襲う高度な連携なんざ取れなかったんだよ」
 それは第二段階に到達し、意識の混濁が解消されたため可能になった事だった。
「……なるほど。そう言えば、先ほど教団を調査していた奴らから報告があったんだが、あれはクルセイダーとか言う奴らを改造して作ったもんらしい」
 唯依の言葉に恭也は眉を潜めた。
「人間を材料に化け物を作るなんざ正気の沙汰じゃねぇ。えげつねぇ事しやがる」
 接近と同時に、刃金はビームサーベルでG1と斬り結んだ。
「ブースターの調整は頼んだぜ。このまま出力全開で高速戦闘を継続する。この化け物の前で止まったら、即座にバラバラにされちまうからな!」
「了解。……待て、後方からもう二機接近。G5とG6だ」
「随分と仲がよろしいこって」
 囲まれたら撃墜は必至。二体を引き離そうと、最大速力でその場を離れる。しかし。
「……振り切れねぇ!」
「前方に機体出現! 空間外からシャドウレイヤー内に侵入してきたようだ!」
「……ってことは味方か!」

「闇に生きる紫の月! 忍犬ゆいと! ここに見参!」
「同じく! 魔導巫女シュペルタ! 参上!」
 世界の境界線を跨ぎ、魂剛は灰色の世界に突入した。
 メインパイロットの紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は契約書によって、忍犬のマスコット姿に。
 サブパイロットを務めるエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)は和洋折衷な巫女風魔法少女に変身。
 高らかに名乗りを上げた。
「ふふふ、それにしても唯斗よ。もふもふだの。後で良いのでちともふらせるが良い。妾にこのような格好をさせる対価と思えば安かろうて」「う……。あとでな、あとで!」とその時、レーダーがこちらに接近する三機を捕捉した。「目標確認。G5、G6……ほう、追撃を受けているのは友軍か、よし助太刀に参るぞ、唯斗」
「ああ。前回は遅れをとったが、二度同じ轍を踏む、俺ではない!」
「それでは征こう。斬鬼天征! 剣帝武神! 魂剛参る!」
 建物を足場に素早く上空に飛翔すると、高速で飛来するG5に斬り掛かった。
 第2世代機以上のパワーを持つガーディアンだが、魂剛は格闘戦に特化したカスタム機。近接戦闘におけるパワーはジェファルコンを遥かに上回っている。
 鬼刀とアンチビームソードの二刀で斬り付け、G5をパワーで押しやりビルに叩き付けた。
『この力は……! 神よ、我にその加護を与え給え!』
 G5は全身を硬化させ、魂剛の斬撃を耐えた。
「……硬化か。その特性は前回見させてもらった」
 敵の首根っこを押さえ、魂剛は急降下、力任せに地面に叩き付けた。
 極度に硬化した身体は斬撃には強いかもしれないが、衝撃には脆弱だ。ある程度、柔らかい身体ならば衝撃を吸収して内部へのダメージを和らげることも出来るが、この状態では衝撃は素通りして内臓にダメージを与えてしまう。
『ググ、ア、ガ……』
 G5はしばらく身動き出来そうもない。
「唯斗、G6がこちらに向かっている。叩き斬ってやれ」
「ああ、言われるまでもない」
 上空を見上げると、G6の伸縮する腕がこちらに迫っていた。
「硬度には衝撃。ならば、軟化したものには斬撃だ」
 振り下ろされる一撃を躱し、魂剛は二刀を交差させ腕を挟み込んだ。
 けれども、弾力のある皮膚が刃を跳ね返すため、攻撃は通らなかった。
『神の威光の前に、貴様達の行動は無意味。脆弱な人間の力では傷付けることも叶うまい』
「偉そうな御託を並べるのは得意なようだな。けど、何も考え無しに動いているわけじゃない。分厚いゴムを斬ろうとしてもそう簡単にはいかないが、何事にもコツってもんがあるのさ」
 押し斬ろうとしても無駄。押して駄目なら引いてみろと昔の偉人は言った。
 素早く刀を引くと、刃が肉に通った。
『グガアアアッ!!』
 両断された腕から紫色の煙が噴き上がった。
『お、おのれぇぇ!!』
 G5はもう片方の腕を振り上げた……正にその時、刃金の雷皇剣がその胸に突き刺さった。
「おいおい、さっきまで俺の尻を熱烈に追いかけ回してた癖に、もう浮気か?」
『グ、ガ……ガガガガッ!!』
 剣からほとばしった電撃が黒こげになるまで、G6の身体を焼き尽くした。
「やるな……!」
 魂剛は鬼刀を回転させると、足元で悶絶するG5の喉に突き刺した。
 G6及びG5、完全に沈黙。
 しかし一難去ってまた一難。上空からメギドファイアが降り注いだ。
「な、なんだとぉ……!」
 機動性に優れる刃金は、間一髪、熱線の直撃を回避した。
 しかし魂剛の機動性では僅かに回避が間に合わない。
「……コイツで凌げるか!?」
 唯斗はエナジーバーストを展開した。掲げたアンチビームソードにフィールド収束させ、高圧縮エネルギーフィールドでコーティング。
 降り注ぐ熱線を斬る。
「うおおおおおおおおおおおおおーーッ!!」
 乾坤一擲の大博打。全エネルギーのこもった刃は熱線を拡散させた。
 だが、完全に相殺するにはエネルギーがあまりにも不足していた。熱線は剣を消滅させ、魂剛の片腕を飲み込んだ。
「くっ……!」
 閃光が消えた後、そこに残ったのは無惨な姿だった。熱線を斬った右腕部は蒸発。全身の装甲も高熱に当てられ、ほとんど融解してしまった。
「出力20%にまでダウン。機体冷却にシステムの80%を割り当てる。しばらくスラスターもまともに動かんから気を付けろ」
「気を付けろと言われても……」
 唯斗はコンソールパネルを叩き、攻撃者をズームアップ。上空でG7が旋回している。

 G7は再び顎部にエネルギーを収束させた。
 無論、再び地上に放つため。地上で身動きが出来なくなった魂剛にトドメを刺すためだ。
「げげっ! もう一発発射するつもりだよ!」
「させません!」
 上空でG1と交戦していたアイオーンは、目の前にいるG1の顔面をサーベルで斬り付けた。怯んだところで腹部を蹴り飛ばし、引き剥がした。
「ブースター出力全開!」
「了解! マジカル☆ブースター、オン!」
 G7までの距離を一気に詰めるとサーベルを振り上げた。
 G7もアイオーンの接近に気付き、こちらに身構えたが、アイオーンのほうが速かった。
 ファイナルイコンソードが閃き、G7を頭部から真下にかけて両断する。
『グガゴオオオオオオオオッッッ!!!』
 紫炎を撒き散らし爆発した。
「よし……!」
 その時、モニターの端が赤く点滅。警告音を鳴り響かせる。
「背後からG1急速接近! しかも熱量が上昇してる! メギドファイアが来るよ!」
「マジカル☆アイオーンは伊達じゃありません!」
 渾身の一撃を放って、煙を吹き上げる機体を旋回させ、振り向き様にバスターレールガンを発射した。直撃寸前に、G1の顎部から熱線が放たれた。高エネルギー同士が衝突し、せめぎ合う。
 その戦いを制したのは、先手を打ったバスターレールガンだった。発射直後で威力が上限まで達していないメギドファイアを貫き、光線がG1を直撃する。
『グゴオオオオオオオオーーーッッッ!!』
 G1は爆散した。
 その途端、糸が切れたようにアイオーンの出力が70%ほどカットされた。消耗の激しい攻撃を立て続けに行ったため、システムがオーバーヒートしてしまったのだろう。
 ミネシアは各機との情報連結を進め、出現したガーディアン7体の殲滅を確認する。
「任務達成ですね……!」
 シートに背中を深く預けて、クロウはふぅと安堵の息を吐いた。