リアクション
● ● ● 飛空艇格納庫では、小型飛空艇を操る部隊が次々と発進していた。 その出撃準備を取りまとめているのは、魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)という男だ。 おおまかなブリーフィングを終えた子敬は、格納庫の指揮という役目を任された。 小型飛空艇部隊が勝手に飛び立っていかないよう、渋滞整列のように少しずつ発進を指揮していく。 「よし! 出撃可能! 幸運を祈ります!」 ビシッと敬礼した子敬に、同じように乗組員が敬礼を返し、また一機、一機と、小型飛空艇が飛び立っていく。 それを見送って、子敬は戦いが無事に終わることを切実に祈った。 ● ● ● 一方、飛空艇の砲手室では―― 「おらおらおらっ! 敵を撃ち落とすだけの、簡単なお仕事です――ってかぁ?」 「テノーリオ。あまりはしゃいでいたら、打ち損じるわよ」 テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)とミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)の二人が、大型機銃を操って、近づくハーピィ部隊を撃ち落としていた。もっとも正確には、お互いの姿はモニター越しであるが。 飛空艇が戦艦モードに変形すれば、より強力な武器が使えるのだろうが、いまはその希望は薄い。 ベルネッサが帰還するまでは、こうして飛空艇モードでも備え付け程度に武装されている機銃を使って、迎撃するしか手はないのだった。 幸いにも、飛空艇の周りの空域は小型飛空艇部隊や、単独で飛行する契約者の姿もある。 せめてそれらの援護程度になれば……、というところだった。 とはいえ―― 「ああもうっ! どうしてそこで距離を取るのよ! もっと食らいつきなさいよ!」 ミカエラ自身は、自ら戦場に出たい気概の持ち主である。 味方の戦いに歯がゆい部分を見つけると、こうしてイライラしてしまうのも少なくなかった。 それをモニター越しに見て、テノーリオが一言。 「おぉ……こわ……」 いまのミカエラにはできるだけ逆らわないでおこう。 人知れず、テノーリオはそう誓ったのだった。 ● ● ● 「はぁっ……エンジンルームってなんでこんなあっちぃんだろ」 飛空艇後部にある機関室で、一人ごちる少年がいた。 その名も柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)である。 飛空艇のコントロールはアルマに任せ、彼はこの機関室で待機し、すぐに機関部の異常を修理出来るようスタンバイしているのだった。 時々、 ドォンッ……ドゴォ…… と音がして、機関室は揺れるが、今のところはこれといった心配はない。 他の修理工仲間と共に、パタパタと手うちわで身体をあおっているところだった。 (それにしても……アルマのほうは大丈夫かな?) 桂輔は、ブリッジでコントロールを一手に担うパートナーが多少心配になる。 ローザマリアやトマスといった仲間もついていることだし、余計な心配は無用かもしれないが。 そこはパートナーと契約者。どうしても頭の片隅には相手のことがちらついてしまうのだった。 「さて、そろそろ休憩も終わりにするかぁ……」 そうつぶやいて起き上がったそのときだった。 ドガアアアァァァァンッ! 「うぉっ!?」 機関室の修理工たちがフル稼働しなくてはならないような砲撃が起こった。 ● ● ● 戦いが混戦に入り始めた頃―― チュドオオオオオォォン! ドガアァアァァンッ! 「なんだなんだっ! 何が起こった!?」 飛空艇ブリッジが爆発で揺れ、ローザマリアや、その他の乗組員が声を荒げた。 するとそこに、さっそくモニターを調べたオペレーター・トマスの声が聞こえる。 その報告は予想だにしないことだった。 「新手の攻撃です! 新たな敵影を確認しました!」 「なんですってっ!? いったい、どこの部隊が……」 ローザマリアが逼迫した声をあげ、乗組員たちに確認を急がせた。 オペレーターたちがモニターに映った敵影を拡大していく。 やがて、それで明らかになった正体は―― 「こ、これは……!」 オペレーターが驚愕に満ちた声をあげた。 |
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