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【裂空の弾丸】Recollection of past

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第2章 潜入! ジークロード! 2

 その一方で――

 チュドオオオオオォォォォン!!

 要塞内部で新たな爆発が起こっていた。
「ちょ、ちょっとやりすぎたでありますか!?」
 逃げるのは、要塞内に破壊工作を仕掛けた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だった。
 彼女の仕掛けたいくつもの機晶爆弾が、連鎖的に一斉に爆破を起こしたのである。
 それに気づいた機晶兵たちが、吹雪を追って集団で襲いかかってくる。

 シュバァァッ! ドゴオオオオオォォォ!

 それもまた爆破によって回避し、吹雪は幸運とも言えるような巧みな動きで逃げおおせていた。
 その吹雪に対し、隣でため息をこぼす者が一人いた。
「はぁ……まったく……いつものこととはいえ、詰めが甘いわね」
 吹雪のパートナーのコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)だった。
 彼女は、半ば吹雪の保護者的な立ち位置にいる。もしものときは、吹雪を救うことも厭わない覚悟だった。
 もちろん――現状は、吹雪一人でもなんとかなっているが。
「自分の役目は囮になることであります! 任務は達成したと言っても過言でないのでは!」
「任務だけで言えば、ね。ま、これだけの機晶兵を引きつけられてたら、十分だけど」

 チュドオオォォンッ! ドゴオオォォンッ!

 時々、別の通路からも爆発音が聞こえるのは、なぜか。
 コルセアたちの上にパラパラと塵が降ってくる。
(みんな……加減ってものを知らないわね……)
 吹雪に然り。
 ついつい、呆れ顔になってしまうコルセアなのだった。

● ● ●


 ドゴオオォォォ!

「いっけね……やりすぎたか?」
 通路の壁をぶち抜いた柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)は、さほど反省もしていない顔でぽりぽりと頭を掻いた。
 ただいま彼は要塞内部に単独潜入している。
 目的は様々な情報やアイテムを手に入れることだったが、そのために一つ一つの部屋を見て回るのは面倒だ。
 結果――至った結論は、とにかく真っ直ぐ進んでみることだった。
 そのため、部屋や通路の壁をいとわず、ぶち壊して進んでいるのであった。
 なんとも無茶苦茶な……。
「お?」
 壁をぶち抜いたトイボックスの銃器を収めて、恭也は部屋の中のあるものを見つけた。
 それは壁一面にびっしりと埋め込まれたコンピュータであった。
 よくよく見れば、その前の席に座っている数名の機晶兵が、瓦礫に潰されて火花を散らしている。
(あらら……)
 どうやら、壁をぶち抜いた際に、ついでに壊してしまったようだった。
 なんとも幸運である。
「…………ナンマンダブナンマンダブってな。なにか良いデータが残ってないかね。……ちょっと失礼するぜー」
 機晶兵に供養をしても仕方ないかもしれないが、これも気分である。
 恭也は機能を停止した機晶兵たちを拝む終えると、一体の機晶兵をどかし、その席に座ってコンソールを動かし始めた。
 それほど機械類に強いわけではないが、こんなものは運である(本当か?)。
 カチャカチャと適当に動かしているうちに――

 ピコッ……シュオンッ……――ヒュッ――

 いくつものデータがモニターに映し出され、そこが要塞内に数あるデータベースの一つだということが判明してきた。
「こりゃ、天空城とかいうところの機晶兵どもの強化データか? あとこっちは……四騎士の残りのプロフィールか……。疑似戦闘の実験用に取ってたんだな。なにかの役に立つか?」
 そのとき恭也の頭には、実際の利用方法などがあったわけではない。
 が、データというものはないよりはあったほうが良いのは確かだ。持ち帰れば、作戦会議にも使えることだろう。
「こいつとこいつとこいつを……と……へへへっ……いただき〜」
 今時珍しい古典的ディスクをさし込んで――

 ピピッピピッ――データ移送中――

「ふんふん〜♪ ふふふ〜♪」
 モニターに映ったデータ移動の画面を、恭也は鼻歌を歌いながらのんびりと眺めるのだった。

● ● ●


 ヒュッ――スガアアアァァンッ!

「これで……全部倒しただろうかな?」
 無数のコンピュータが並んでいる部屋の中で、男がつぶやく。
 その手には雷帝の王笏と呼ばれる杖が握られている。杖の先端が貫いているのは、目の前の席に座る機晶兵の胸だ。
 男の名はメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)
 そしてその横にいたのが――
「十分だね。それにしてもここは……資料庫で間違いないかな?」
 彼の契約者であるエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)だった。
 エースはコンピュータの一つに見当を付けると、その前の席に座ってコンソールを弄り始める。
 と、同時に――

 ドウゥ! ドッ! ドウッ!
 ザシュッ! ズバァァッ!

 入り口のほうから、連続した銃声と、剣の迅る音がした。
 その正体は、エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)のものであった。彼と彼女二人は、倒れている機晶兵を前にして、それぞれに二丁拳銃と細身の片手剣を携えている。
 どうやら、駆けつけた機晶兵を瞬時に倒したようであった。
「メシエ、こっちは私たちに任せて」
「近づく敵は排除させてもらいますよ」
 二人はそう言って、次なる敵が来ないかと警戒に努めた。
 ここは資料庫である。要塞内に数あるデータベースの一つと言って良いだろう。
 エースらの目的は、ここから要塞攻略に必要ないくつかのデータを入手することであった。

 ヒュンッ――ヒュッ――

 モニターに映るいくつもの情報。
 エースはコンソールを動かしながら、やがてその一つに目をつけた。
「これは……!」
「要塞内部の地図のようだね」
 驚くエースに、メシエが淡々と地図を見つめる。
 それらの情報をHCにダウンロードすると、エースはリリアにふり向いた。
「リリア! この情報をみんなに伝えてくれないか!」
「了解! 任せといて!」
 エースから放り投げられた銃型HCをキャッチして、リリアはそれをミャンルーと一緒にのぞき込んだ。
 ミャンルーというのは、猫のような姿をした獣人だ。ご主人と定めた者の傍につき、旅や戦いのサポートをしてくれる。
 ミャンルーのサポートを受けながら、地図データの変換に努めるリリア。
 その間に、エースとメシエは、その他のデータを入手していった。
「あまり大したものじゃないけど……ないよりはマシだね」
「アダムや浮遊大陸の歴史が知れれば、それでいいさ。リリア! 飼育施設の場所は最優先で仲間に伝えておけ!」
「わかってるってばぁ! ちょっと待ってよ!」
 メシエに怒鳴られて、リリアはHCを操る手を急がせる。
 そのときである。
「来ましたね……っ!」
 エオリアが警戒していた通路から、新手の機晶兵たちが現れた。

 ドゥッ! ドッ! ドゥッ!

 入り口に隠れながらエオリアが銃で応戦する。
 銃声と機晶兵が撃ち抜かれる音が重なって響き渡った。
「終わったぁっ!」

 タンッ――!

 HCの最後の入力を終えて、リリアが満面の笑みで顔をあげた。
「よし、急いで離脱するよ!」
 エースもメシエも、席を立ちあがる。

 一瞬後――

 ズガアアアアアアアァァァンッ!

 資料庫で爆発が起こった。
 もうもうとあがった煙の中から飛びだしてきたのは、四人の人影であったという。