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水を掘りに行こうよ! ミミズと俺らのメモリィ

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決戦大ミミズ

 大ミミズだけに狙いを定めて身を潜めていた国頭 武尊(くにがみ・たける)は今を好機とばかりに立ち上がる。
「一気に叩くぞ!」
「はい!」
 武尊のパートナーシーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)は四体のゴーレムを使って大ミミズの注意を引きつけようとする。しかし、ミミズはベースキャンプで行われている戦闘に気を引かれているのか、近くにいるゴーレムたちには無関心だ。
「それならかえって好都合だぜ!」
 武尊は大ミミズに向かって氷術を放つ。しかし、ミミズが巨大すぎるためか、武尊の予想よりも効果を現さない。大きさを比較するもののない砂漠なので、大ミミズが体調がどの程度のものなのか正確なところはわからない。しかし、直接相対しているものたちの目には地表に出ているところだけで十五メートルはあるように思われる。
 誰かが光術で大ミミズの近くに光源を作り出す。
「フハハハハハハッ!」
 小型飛空艇に乗った坂下 小川麻呂(さかのしたの・おがわまろ)が颯爽と現れる。そのまま急接近し、紫電を纏ったグレートソードで大ミミズを斬り付ける。
「フハハハハ!!」
 何かスイッチが入ったのか、大ミミズの傷から吹き出す粘液質の体液を浴びながらも小川麻呂は高笑いを続ける。
 大ミミズがようやく自分の近くにいるものたちの存在に気付いたようだ。
 シャアアアアアアアアア
 どこからそんな音がするのか、とにかく大ミミズの身体から音が発せられた。
 次の瞬間、大ミミズの口から高圧で砂が吐き出される。
「フハ――」
 高笑いを続ける小川麻呂は、砂のブレスの吹き飛ばされ、小型飛空艇ごと空高くに打ち上げられた。
「あ……なんだ?」
 吹き飛ばされた小川麻呂の懐から数冊の保健体育の教科書が落ちてくる。それを地上でキャッチした八月朔日 刹那(ほづみ・せつな)が首を傾げる。
「保健の教科書ですね」
 刹那のパートナーで剣の花嫁のユーニス・アリマプティオ(ゆーにす・ありまぷてぃお)が首を傾げる。
「いや、それはわかるが」
 砂のブレスで吹き飛ばされた小川麻呂は一体何を思って砂漠に保健体育の教科書を持ち込んだのだろうか。
「えぇい! 行くぞユニ」
 頭の中で巻き上がる疑問とともに保健体育の教科書を放り投げる刹那。
「はい、刹那様!」
 刹那がユーニスの胸の中心に触れる。そこから光が広がり、刀の柄が現れる。刹那はそれを掴み、一気に引き抜く。
「所詮は人間側の身勝手……とはいえ、大人しく食われてやる義理も無い……恨むなら恨め」
 片手にユーニスを抱きしめ、もう一方の手に持った光条兵器を大ミミズに突きつけ刹那は一瞬だけ瞳をかげらせる。
「こんなに大きいとは思ってなかったよね」
 小型飛空艇から大ミミズを見下ろしながら白菊 珂慧(しらぎく・かけい)が呟く。
 シャアアアアアアアアア。大ミミズが吠える。
「――っ!」
 小型飛空艇の操縦を任されている珂慧のパートナークルト・ルーナ・リュング(くると・るーなりゅんぐ)が大ミミズの砂のブレスを辛うじてかわす。砂のブレスを吐き出す全長の音をクルトの聴覚が捕えたおかげだ。
「よっし!」
 一瞬の隙を突いて珂慧が大ミミズの口に向かって弾丸を撃ち込む。
「ま、なんでも計画通りに行くわけはないということですねぇ」
 蛮族用のトラップを作るはずが、突然の砂嵐で計画が狂ってしまったマシュ・ペトリファイア(ましゅ・ぺとりふぁいあ)が嘆息しながら小型飛空艇を見下ろす。
「多少大きいだけで所詮はミミズじゃ! まろたちの力を見せてやるのじゃ」
 パートナーのロミー・トラヴァーズ(ろみー・とらばーず)の強気な言葉にマシュは苦笑しつつも頷く。
「ですねぇ、俺たちの力を見せてやるとしましょうか」
 マシュによって放たれた酸の霧が、大ミミズの体表を灼く。
「こちらの攻撃は本当に効いているのか?」
 石田 三成(いしだ・みつなり)は唇をかみしめる。 大ミミズの身体には無数の傷ができ、体液が噴き出しているがその行動はダメージを負った生物とは思えない。三成は傷ついた学生を見かければヒールで傷を癒していく。
「っだぁ! なんでじりじりとベースキャンプに方に押し込まれていってるんだ!」
 卯月 鍾馗(うつき・しょうき)は額を流れる汗を拭いながら叫ぶ。鍾馗は大ミミズをベースキャンプから引き離そうと試みたのだが、うまくいかない。
 蛮族とキャンプを護衛する学生達の戦闘音だけが理由とは思えない。大ミミズと直接戦っているのだ。生物の本能としては身近にある危険に先に対処するのが自然なのではないだろうか。
「あそこにミミズを引きつける何かがあるのでしょうか」
 クルーア・メルティウス(くるーあ・めるてぃうす)が砂漠を駆けながら首を傾げる。
 午前四時十二分。夜明け前。大ミミズ、未だ健在