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【十二の星の華】変心のエメネア

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【十二の星の華】変心のエメネア

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(各校のパワーバランスを考えると、パラ実にも女王器が必要だろ)
 1つでも女王器を波羅蜜多実業高等学校のものとするために、その女王器に繋がる情報を求めて、国頭 武尊(くにがみ・たける)は遺跡を訪れていた。
 モンスターの巣窟になってしまっている遺跡内は埃っぽく、武尊はまず、広大な屋敷を掃除する技術で、探索しようと思う辺りを掃除をし始めた。
 棚の埃を払うなどするのだが、屋敷と違い、換気が悪い。払った埃が辺りに漂い、空気が悪くなるだけだ。
 ある程度埃を払うことが出来れば、文献探しに集中した。
 宝がありそうな感を用いて探してみれば、形の残る本は見つけることが出来る。けれど、中は虫が食っていたりして、すぐに読めるようなものにはなかなか出逢えないようだ。
 少しでも資料になりそうであれば、銃型HCの撮影機能で記録していった。



「図書館の遺跡というのもなんだか変わってるな。本なんてあっという間に読める状態じゃなくなりそうだし。本当に調べるべきは本なのかな」
 ぼやく鬼院 尋人(きいん・ひろと)は、本棚同士が倒れて、不自然な形になってしまっているところを不思議に思い、バスタードソードの先で叩いてみた。
 棚板の1枚の固定がもろくなっていたのか、ボロッと崩れ落ちていく。
「ギギャッ!?」
 本棚の奥から、そのような奇声が聞こえたかと思ったら、ネズミ型モンスターが十数体現れた。
「うわ、巣だったか!」
 バスタードソードを構え直すと尋人は素早く、刃を繰り出して、2体同時に攻撃する。
 傷つき、ふらふらしているモンスターへと尋人の後方から1発の銃弾が放たれ、仕留めた。
「加勢するぜ」
 言いながら、近付いてきたのは天城 一輝(あまぎ・いっき)だ。アーミーショットガンを構え、右腕に巻いたベルトから銃弾を取り出すと、今撃ち放った分を装填している。
「ありがとな」
 感謝の言葉を口にしながら、尋人は既に次のモンスターへと狙いを定めて、剣を繰り出す。一輝も撃ったらすぐに装填するという練習も兼ねて、装填数の少ないショットガンだというのに、機関銃のように銃弾をばら撒くような攻撃を仕掛けた。
 2人がかりで相手しただけあり、大した力もないネズミ型モンスターはあっという間に片付けられる。



 事前に『十二星華』の文字を古代文字で書いた場合、どう書かれるのか調べてきた立川 るる(たちかわ・るる)は、形の残る本を片っ端から回収していた。
(かに座さんに会ってみたいの。でもそもそも十二星華って何だろう?)
 そのようなことを思いながら、フロアの半分を回る頃には、5冊ほどの本が腕の中でその重みを主張している。
 一度中を確認してみようと、るるは本棚の並ぶスペースから少し外れたところで腰を下ろす。
 調べてきた文字と同じ文字がないだろうかとページを捲っていくけれど、見つけることは出来ない。
 5冊とも外れのようだ。
 その5冊を適当な本棚に戻すと、フロアの残り半分を回るために、また本棚の間へと歩き出した。



「やはり薄暗いねぇ」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)は呟くと、手にした指輪から人工精霊を呼び出した。電球のような灯りが周囲を照らし出すと、一気に明るくなり、本の背表紙の文字も読みやすくなる。
 周囲への警戒も怠らないために超感覚を発動させれば、獣の耳と尻尾が現れた。
 本棚の間を慎重に移動する北都は1冊の本を手にとって、開いてみる。
 読めそうなものであったため、目を通してみるけれど、女王器に関する情報は書かれていない。
 次に開いた中身が古代文字で書かれていたため、携帯電話のカメラ機能で写真を撮っておいた。



「ほぇ? 何やら騒々しい気がするのですけど……何かあったのです?」
 持ち出し禁止の貴重な本を保管しているような場所がないか探していた土方 伊織(ひじかた・いおり)は、聞こえてくる忙しない足音に顔を上げた。
「ねずみ以外にも何かが居るようです。十分ご注意してくださいね、お嬢様」
 周囲へと警戒を向けていたサー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)が、皆の騒ぎようから何かが現れたのだろうと思い、応える。
「はわわ、僕はお嬢様じゃないですぅ。男の子扱いしてくださいぃ」
「その見た目ですし無理です」
 何処から見ても女の子にしか見えない伊織の姿に、ベディヴィエールは微笑みながら告げる。
「はぅぅ……」
 伊織はそれ以上何も反論できなくて、仕方なく、目の前の本を手に取った。
 形は残っているけれど、少しでも力を加えれば、すぐにでもばらばらになってしまいそうな本だ。
「風化の魔の手から逃れている本があればいいんですけれど……」
 本を戻すと、保管庫探しに戻る。
 ベディヴィエールもそんな彼の後を追いながら、彼がモンスターに襲われないよう、周囲への警戒を怠らなかった。



「何かは文字が読めるものもあるでしょう」
 モンスター退治は他人任せで、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)はパートナーと共に情報を探す。
 手にすると崩れてしまうほど朽ちている本が続き、諦めたくなっても、根気よく、次の本こそはと手にとっていく。
 そうして見つけ出した崩れない本をゆっくりと開いた。
 書かれているのは女王器の情報ではない。けれど、何処かの遺跡の情報などが書かれているようだ。調べれば女王器に繋がるかもしれない、とメイベルは書き写した。図のようなものが残っていたため、銃型HCの撮影機能で写真に残す。
「少しでも有益な情報があるといいよね」
 パートナーの1人であるセシリア・ライト(せしりあ・らいと)は、メイベルの手伝いをすべく、手にしても崩れることのない本を見つけては、彼女のもとへと運んだ。
 資料探しに没頭する2人を守るのは、もう1人のパートナー、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)だ。
「2人の邪魔はさせませんわ」
 本棚の陰から現れた人影に、フィリッパは高周波ブレードの切っ先を向けた。
 場所が場所なだけに派手に戦闘をして貴重な本を失いたくない。そのためにも素早く仕留めようと、続けざまに攻撃を繰り出すが、人影が掻き消えた。
「何処に行きましたの!?」
 目を凝らしてみても見えない敵はなかなか見つけることは出来ない。
 後ろから腕を掴まれ、捻り上げられた。
「くぅ……っ」
 痛みに耐えながらも腕を掴まれたところに辺りをつけて、ブレードの先で貫く。
 その拍子に、掴まれていた腕が解放された。フィリッパは再度目を凝らして、相手を探す。
 宙を舞う埃の向こう側に、人影を見つけたような気がして、素早くブレードを振るった。
 今度は手ごたえがある。
 すぐに逃げられて、ブレードが空を切るようになってしまったが、また目を凝らして人影を探した。
 相手からの攻撃を受けながらも繰り返すと、数撃の後、埃の向こう側の人影は地へと伏した。



「玄武の女王器については色々嘘の情報も飛び交っているようだし……ここに少しでも役に立つ情報があると良いんだけどね」
「そうだな。それにしてもこれほどの規模となると、元は多くの蔵書があったのだろうな。朽ちてさえいなければこの図書館自体が宝の山だったのだろうが……残念だな」
 黒崎 天音(くろさき・あまね)とパートナーのブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)は、本棚の間を歩きながら、呟いた。
 天音が手にしようとした本は、朽ちていたようで、ページが崩れ落ちていく。
「これも朽ちているか」
「そうか……ところであの眼鏡のパートナー、十二星華の1人だったりはしないだろうな?」
 ブルーズがぽつりと呟いた。
「さて、どうだろう? もしそうだとして彼女はどちらにつくのかな? シリウス……いやミルザムとティセラの2人の」
 興味がないような返答をしながらも天音はそう口にした。
「パートナーが蒼空学園の校長に首根っこを抑えられた状態では、ミルザムに味方するしかないのではないか?」
 眼鏡――もとい、涼司の立場を考えて、苦笑を漏らしながらブルーズは答える。
「む……これも駄目か」
 漸く開いたと思えば、虫食いだらけのページを見て、ぼやく。
 女王器――特に、巷で噂の玄武甲の情報、その他にも黒いヴァルキリーの伝説、女王と騎士の物語、水晶に変えられた都などに関する断片情報でも手に入れたいと願いながら、2人は情報を探して回った。